戸建てリフォーム

防災対策と電気代の節約を可能にする「蓄電リフォーム」のススメ

昨今、改めて注目されているのが住宅用の太陽光発電と蓄電池です。電気を自給自足できる点から、大規模災害時の生活を守れるだけでなく、高騰する電気代の節約にもつながるとされています。そこで、住宅ジャーナリストの山下和之さんに、導入のメリットや設置にあたっての注意点を伺いました。併せて、実際にリフォームで導入したオーナー様のリアルな声もご紹介します。

目次

蓄電池を併用すれば長期の停電時も安心

太陽光発電に詳しい住宅評論家の山下和之さん。

2011年の東日本大震災では、各地で大規模な停電が発生し、約80%が復旧するまでに3日かかったとされています。中には、3カ月もの間電気が通じなかった地域もありました。また、大型台風や豪雨による停電も毎年のように起こっています。

こうした災害時の停電対策として注目されているのが、太陽光発電と蓄電池の導入です。それぞれ単体でも防災に役立ちますが、「セットで導入することで、より高い安心感が得られます」と山下さんは語ります。

「例えば、太陽光発電があれば、停電中でも家庭内で電気が使えますが、発電できるのは晴れている昼間だけ。夜間や雨天時は発電できないため、電気なしの生活になります。ですが、蓄電池を併用すれば、昼間に発電した電気を蓄えておけるので、災害時にも自宅で過ごせます。太陽さえ出ていれば随時充電できるため、長期の停電時でも安心です」

とくにご高齢の方や乳幼児をお連れのご家族にとっては、避難所に行かなくても自宅で過ごせる安心感は大きなメリットといえます。

今後も高騰が予想される電気代の節約に

非常時だけでなく、平常時にもこの組み合わせは効果を発揮します。蓄電池を併用することで、天候や時間に関係なく太陽光で発電した電気を使用でき、電力会社からの購入量を減らせるため、電気代の節約にもつながります。

「近年、電気代が上昇しているのはご存知の通りです。特に今年4月使用分からは、政府による補助金の終了や再エネ賦課金の加算により、家計への負担は一層重くなります。その負担を軽減できるのが、太陽光発電と蓄電池の導入です。設置費用はかかりますが、電気代の節約効果を考慮すれば、設置費用を上回る効果が期待できます」

さらに、太陽光発電は発電時に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの代表格です。クリーンエネルギーを活用することで、地球環境保護に貢献できるのも魅力のひとつです。

太陽光発電と蓄電池の導入費用は、実際に導入する容量や機器の種類によって異なります。まずは、屋根にどのくらいの容量のパネルが設置可能か、図面や調査にて確認する必要があります。他に、機器の取り付けや電気の配線工事、屋根の強度によっては補修が必要になる場合もあります(屋根の強度不足や、傷みがある場合)。

補助金は設置する前に申請すること

こうした費用を軽減するために、補助金の活用は有効です。補助金の金額は自治体ごとに異なりますが、例えば東京都では申請条件を満たせば太陽光発電設備に対して12~15万円/kW 、蓄電設備に対して12万円/kWhの補助金が支給されます(2025年4月時点)。さらに市区町村が独自に補助を行っているケースもあり、両方から受け取ることが可能です。加えて、蓄電池については国の補助金制度もありますので、ぜひ活用しましょう。

「注意すべきは、補助金は設置前に申請し認可を受ける必要があるという点です※。認可には一定の日数がかかるため、それも見越したスケジュール作成が重要です。また、申請期間は自治体によって異なり、予算上限に達すると期間内でも終了します。見積もりを複数社から取ることは大切ですが、費用面だけでなく、補助金申請まで丁寧に対応してくれるかも確認しましょう」

資金面で不安がある場合は、ローンの活用も選択肢です。最長20年の返済が可能なソーラーローンのほか、住宅ローンやリフォームローンに組み込むことも可能です。たとえば家の補修や増改築も同時に検討しているなら、まとめてリフォームローンに組み込む方法もあります。

※補助金の一部は、事後申請でも可能な場合があります。

※写真はイメージです。

年金生活で光熱費を抑えるための「老後の保険」

実際に導入した三菱地所ホームのオーナー様にお話を伺いました。都内にお住まいのM様は、現在お子さまが独立され、ご夫婦で築25年の一戸建てにお住まいです。

「もともと蓄電池だけ設置していました。導入したのは東日本大震災の翌年です。停電を目の当たりにし、3日分程度の電力をまかなえるようにしました。その設備が故障し、保証期間も過ぎていたので、修理費用がかかることがわかり、ちょうど太陽光パネルとの併用を紹介している冊子を見たのがきっかけです。今なら補助金も使えるということもあり、思い切ってセットで導入しました」

導入を決めた背景には、防災力の向上と電気代節約への期待がありました。

「電気料金の値上がりで、毎月の出費が1万円ほど増えてしまい、対策を考えていました。私は今64歳で、将来年金生活に入ることを見据えると、光熱費などのランニングコストはなるべく抑えたい。今のうちに備えておくべきだと思いました。ある意味、老後の保険ですね」

外壁のリフォームや補助金申請も任せられるハウスメーカーの対応力

設置にあたっては、新築時より住まいのメンテナンスも依頼している三菱地所ホームに依頼。相見積もりは取らなかったものの、大正解だったと実感されています。

「当時の図面があるため、屋根の強度確認などもスムーズでした。太陽光パネルの設置には足場が必要なので、外壁のリフォームも同時にお願いしました。こうした柔軟な対応は、ハウスメーカーの三菱地所ホームならではですね。補助金の申請についても担当者が丁寧に対応してくれたので、安心して任せられました」

設置を依頼したのは昨年秋で、年明けには補助金の認可が下り、2月下旬には工事が完了。現在は順調に稼働しています。

「電力の状況を確認するのが毎日の楽しみ」と語る三菱地所ホームのオーナーM様。
M様のご自宅の蓄電池。

家族のように親しみをもって接していく

「発電や蓄電の状況はスマートフォンで確認できるため、毎日確認しています。ちょうど桃の節句に稼働を開始したので、『モモちゃん』というニックネームを付けて、『モモちゃん、今日はどうかな』なんて(笑)。そうやって家族のように親しみをもって接していくことも大切だと思います。電気代の効果は請求書が来てみないとわかりませんが、おそらくかなり下がっていると思います。今後は非常用に残す電気の割合や、売電の活用方法も検討していきたいです」

新築時に太陽光発電や蓄電池を導入するケースは増えていますが、既存住宅でもM様のようにリフォームを兼ねての導入は賢明な選択肢です。また、すでに導入済みであっても、保証期間が切れている場合は見直しを検討する価値があります。

「技術の進歩によって、現在の機器は熱交換効率も大幅に向上しています。つまり、蓄放電による電力のロスが少ないのです。価格も以前より手ごろになってきていますし、補助金が充実している今こそ、再検討のタイミングだと思います」と山下さんはアドバイスします。

  • 本記事の内容は2025年5月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。