実家を相続する場合の対策を考える

いまや世界一の長寿国ニッポン‐超高齢化社会の到来で、親の財産を相続する時、どうすれば良いのか。いざという時に慌てないためにも、親が元気な(判断能力がある)うちに、実家の相続対策を具体化して、トラブルを未然に防止したいものです。
「売却」「保有し居住、または第三者に賃貸」「一定期間の放置」、それぞれのプランごとに資金計画なども大きく異なってきますので、早いうちからしっかりとライフプランを考えることが大切です。それぞれのプラン実現のためには、信頼できる専門家に相談できる体制を用意して、来るべき時に備えましょう。

プラン1 売却する場合は流れをしっかり把握する

相続した家を売却する場合、信頼のおける不動産業者や司法書士等の専門家を決めて、いざとなったときに困らないよう税金対策等を講じなければなりません。特に地方都市では、売却しようにも買手がなかなか見つからないケースが少なくないため、売却までの流れをしっかりと把握しておくことが大切です。
具体的なポイントは次の5つ。【1】親族間で実家相続人を決める→【2】司法書士など専門家に依頼→【3】信頼できる不動産会社を選定→【4】購入者を決定→【5】不動産の名義変更手続き
また、複数の法定相続人により売却して現金化する場合、名義変更手続きは、全員分が求められます。代表一人が名義変更して、後で山分けとはいきません。これですと贈与税がかかってきますので注意が必要です。
その他にも相続の時点で、相続税や固定資産税などの税金が発生します。相続税は、法定相続人が1人の場合、3,600万円まで(国税庁「相続税の計算〈2017年4月1日現在〉」より)の基礎控除がありますが、その額は預貯金などを含めたすべての資産額が対象のため、気を付けましょう。
さらに相続直後に実家の売却を選択した場合、以前は対象外となっていた空き家も、2016年の税制改正で売却益から3,000万円が控除されることになりました。しかし適用条件のひとつに「昭和56年(1981年)5月31日以前の建築家屋」という制限があるため、地方都市における売却の足枷となっています。

国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(2016年4月15日修正)」より ※本特例措置には別途、適用条件、適用期間が定められています

プラン2 賃貸など資産として有効利用する場合

国税庁「相続税の計算(2017年4月1日現在)」および「土地家屋の評価(2017年4月1日現在)」を基に算出

相続した家を売却せずに保有する場合、親族間で所有者を明確化しなければなりません。また、自身が居住しない場合、リノベーションなどにより改装して、第三者に賃貸に出すなどがあげられますが、近年では戸建賃貸としてシェアハウスに用途変更し、収益を上げるケースも出てきました。どのような有効利用策があるのかを事前に把握し、安定した収益確保を目指すことがポイントとなります。
では具体的に既存家屋をリノベーションして共同居住型シェアハウスやその他多目的施設等の改修して賃貸する場合の流れを見ていきましょう。まず周辺環境や立地条件などをしっかり確認し、できれば専門コンサルタントに依頼して、事前調査から綿密な事業計画を構築するのが望ましいでしょう。そうなると多額の費用がかかってきますので、同時にしっかりとした資金対策も必要になってきます。定期借地権を設定して賃貸することも選択肢に入れておきたいものです。
また、相続した家の資産運用を考えるとき、特に注意しなければならないのは、空き家のまま放置したくないため、家屋を解体して更地化のまま放置してしまうと、これまでの優遇措置特例が除外され、固定資産税が6倍に跳ね上がってしまう点です。実はこれが、空き家放置の最大の要因といわれています。

プラン3 しばらく放置も選択肢のひとつですが・・・

放置するというと、一見無責任のような言葉ですが、相続人間の分配や利用目的が決まらない場合は、しばらくそのままで放置することも選択肢のひとつです。ただし、放置によるデメリットも少なくないことを知っておいてください。
まず放置した場合、固定資産税の負担がすべての相続人にかかってきます。さらに空き家特措法の改正により、「特定空き家」指定されれば、固定資産税は6倍に上げられることになり、所有者にとって負担増が進むことになります。そうなると家の老朽化が進み、人が居住するに値しない状況のまま半永久的に放置される可能性が高まります。さらに、相続人全員が亡くなった場合、所有者不明資産となり、空き家問題を助長することになります。
そこで国では現在、こうした所有者不明の土地に対して「所有権の放棄」制度を構築することを計画(内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2017〈2017年6月9日〉」)しており、新しい制度の下、空き家も準公有化資産として対処されることが期待されています。

プラン4 親が生きているうちに、同居も含めた相続対策を具体化

相続で問題となるのは、両親が亡くなっている場合です。法定相続人が1人であれば良いのですが、複数人の場合ですと、誰が保有し、誰が居住するのか等の問題が発生してきます。例えば相続人が3人の場合、長男が保有し居住するとします。仮に売却査定価格が3000万円なら、1人当たりの相続取分は3分の1で1000万円ずつとなりますので、残り2名の弟に1000万円ずつ支払わなければなりません。すると長男は2000万円分の現金を用意しなければならないのです。もし用意できなければ、弟達は納得しないことになり、これが遺産相続紛争に発展するパターンとなります。3人で仲良く分割すれば問題ないのですが、こうしたケースは後を絶ちません。
また、超高齢化社会の到来で、親も長生きする時代になった反面、認知症などによる判断能力の低下により、資産相続もままならないというケースも増えています。こうした事態を回避するために、親が元気(判断能力がある)なうちに、実家の相続対策を具体化して、トラブルを未然に防止したいものです。

そこでポイントとなるのが資産管理。親が元気で判断能力のあるうちに、実家等の財産分与と管理を明確化しておくことが必要です。そのための手法として、最近注目を集めているのが家族に財産管理を委託する「家族信託」という制度です。この制度ならば、法定相続の概念にとらわれずに安心して利用できますので、検討してみてください。
さらに親が存命のうちにリフォームにより二世帯住宅として同居すれば、「小規模宅地等の評価額の特例(2017年4月1日現在)」により、相続税評価額が80%軽減されます。例えば2000万円の評価額でしたら、1600万円が減額となり400万円として計上されますので課税額が大幅に減るというメリットがあります。しかし老朽化した家屋の改修費や管理費などが発生してきますので、しっかりと資産計画を立てる必要があります。同時にいつまで居住し、その後どうするかなど、ライフプランをしっかり練って、将来に備えておくことが大切です。利用できますので、検討してみてください。