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いつまでも元気に若々しく! アンチエイジングは「お口メンテ」から!

抗老化・抗加齢を意味する「アンチエイジング」。肌や髪の毛のケア、食事に気を付けたり運動したりすることも大切だが、アンチエイジングのために真っ先にメンテナンスする必要があるのは、歯と口だ。歯科医師・歯学博士の生澤右子さんは、体の老化を遅らせ、健康の維持に結びつく「お口メンテ」をすすめている。

口は体の玄関!「お口メンテ」で病を防ぐ

アンチエイジングのためにまず歯や口の健康を整える必要があるのは、「口は体の玄関」だからです。体に必要な栄養も、害をなす細菌も、入ってくるのは口から。そして問題なのは、細菌は口の中で増えるということ。むし歯の原因となるむし歯菌や歯周病の原因となる歯周病菌が繁殖すれば、むし歯や歯周病になり、最悪の場合は歯が抜けることも。歯がないと、見た目に影響があるだけでなく、十分に食事ができず健康の維持もできなくなります。

さらに歯周病が怖いのは、歯周病菌がほかの病気とも関連していること。糖尿病の人は糖尿病でない人の3倍歯周病になりやすく、一方で歯周病のケアは血糖値のコントロールに繋がります。また歯周病がある人は動脈硬化も起こりやすく、歯周病がない人より狭心症や脳梗塞などを発症しやすいと言えます。加えて、歯周病菌はアルツハイマー型認知症のリスクを高めるというデータがあり、誤嚥性肺炎や口臭の一因にもなります。これらの病気は、歯と口のケアである「お口メンテ」をすることで、ある程度防ぐことができるのです。

海外の人に比べて、日本人は「お口メンテ」の意識が低いのが現状。これは、日本では歯のための健康教育があまり行われていないことが主な原因と考えられます。以下では、歯を駄目にしてしまう人、歯が弱いと思っている人にありがちな3つの生活習慣とその対策について解説していきます。

歯磨き、食事、メンテ・・・まずは習慣を見直そう! 

①【NG歯磨き習慣】歯ブラシしか使わず、「なんとなく」磨いている

最も問題のある生活習慣は、正しく歯磨きをしないことです。また歯ブラシだけの歯磨きでは、むし歯菌や歯周病菌が歯の表面に増殖し、病原性の高い「プラーク」になっていきます。そのまま放置していると、細菌の集合体が粘着性のある「バイオフィルム」になり、これが温床となってむし歯や歯周病を引き起こすのです。

バイオフィルムは歯磨きでは取れないので、プラークの段階で除去する必要があります。そのためにやってほしいのが、プラークの「見える化」。歯に塗るとプラークに色がつく染め出し液を使って鏡を見ながらプラークがある場所を確認し、ブラッシングします。

 
タフトブラシ。毛先の先端がドーム型のものは、ネット通販などで購入可能。

順序としては、歯間ブラシやフロスを使って歯と歯の間を掃除してからブラッシングするのがおすすめです。また歯は複雑な形状をしているため、通常の歯ブラシで磨いても磨き残しが多くなりがちです。そこで使ってほしいのが、タフトブラシ(右図参照)。ブラシのヘッド部分が極小の歯ブラシですが、一般のお店で見かける毛先の先端が尖ったものより先端がドーム型のものの方が、磨き残しやすい歯と歯ぐきの境目まで効果的に磨けます。

むし歯を防ぐために使いたいのがフッ素。フッ素は歯に塗るクスリと考えてください。うがいをすると歯についたフッ素が流れ落ちてしまうので、フッ素の後は、ゆすがず吐き出すだけにして、2時間ほどは飲食を我慢しましょう。

②【NG食事習慣】よく噛まず、柔らかいものを好む

2つ目は、食事をよく噛まずに食べたり、柔らかいものばかり食べたりすること。よく噛まないで食べていると、噛む力が弱まり、むせやすく、飲み込むことさえ難しいオーラルフレイル(口の衰え)につながります。表情筋を使わなくなるので、老けて見える原因になります。さらに、唾液が減り、ドライマウスになることも。ドライマウスは食べ物の味が分かりづらくなる味覚異常や口臭の原因になります。

対策は、「ながら食べ」をやめ、噛むことを意識して食べることに尽きます。飲み物や汁物で食べ物を流し込むこと、早食いは避けるようにしましょう。根菜類など噛み応えのあるものを食べるのがおすすめです。食材を大きく切ったり、硬めに茹でたりと調理方法を工夫することでも噛み応えを増すことができます。ただし、氷のような硬すぎるものを食べると歯が割れる恐れがあるので、注意してください。

③【NGメンテ習慣】定期的に歯科を受診しない

最後の正すべき習慣は、定期的に歯科を受診しないことです。いくら丁寧に歯磨きをしているつもりでも、プラークがつき、固まって歯石になっている可能性があります。痛みなどの自覚症状がなくても3カ月に1回は歯科で、チェックしてもらうべきです。

かかりつけにする歯科は、家から近いからなどの理由ではなく、自分が求める治療をしてくれるところを選ぶようにしましょう。ホームページを見れば、医師が所属している学会や所持している資格が確認できます。また、治療のメリットやデメリット、選択肢を示してくれたり、自分の専門外のことは専門の先生を紹介してくれる歯科は信用してよいでしょう。なお、歯のクリーニングは本来歯科医の業務ではないので、歯科衛生士が担当してくれる歯科の方が予防歯科に力を入れている場合が多く、安心です。

上に挙げた悪習慣をなくせば、自然にアンチエイジングへの道が開けるはずです。「歯ブラシ以外にもオーラルケアグッズも使う」、「噛むことを意識する」、「定期的に歯科に通う」。面倒なようですが、欧米などの海外では、ごく当たり前の習慣として行われていることです。歯に不安がある人は、できるだけ早く「お口メンテ」を始めましょう


(2023年10月24日掲載)

お話を聞いたのは●生澤右子さん

いくざわ・ゆうこ/歯科医師・歯学博士。株式会社Dental Defense代表取締役、明海大学歯学部歯科麻酔科客員講師も務める。東京医科歯科大学歯学部・同大学院博士課程卒業。日本のオーラルケアに世界との隔たりを感じ、株式会社Dental Defenseを設立。世界標準のオーラルケアを学ぶ講座、口臭によるハラスメント(スメハラ)を予防・撲滅するセミナーを開催。著書に『歯と口を整えるアンチエイジング』がある。
https://dentaldefense.co.jp