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なぜ、最近の「冷凍食品」はおいしいのか? 「栄養不足」「体に良くない」はホント!?

かつては「お弁当のおかず」という印象が強かった冷凍食品。しかしこの数年、より本格的な味わいの商品が続々と登場し、冷凍食品のバリエーションも増えている。40年以上にわたって冷凍食品の情報を発信してきた冷凍食品ジャーナリストの山本純子さんに、最近の冷凍食品事情や、ストックしておくと便利な冷凍食品を聞いた。

旬のおいしさを閉じ込めた冷凍食品は「時空間超越食品」

冷凍食品の技術が確立されたのは今から100年余り前。日本でも1920年に冷凍事業を行う企業が現れ、第二次世界大戦による分断はあったものの、1950年代には東京の百貨店に冷凍食品売り場(主に魚)が設置されている。

1960年代半ば以降は、スーパーの多店化と共に身近になり、手軽で便利な食品といわれる一方で、冷凍食品には「栄養が不足している」「体に良くない」といったマイナスイメージがつきまとっていた。これらに真っ向から反論してきたのが山本さんだ。

「まったくの誤解です。冷凍は鮮度を保つ手段。例えばほうれん草などの冷凍野菜は、一番おいしくて栄養価が高く価格が安定しているときに収穫し、洗浄・下茹で(ブランチングと言います)処理後にすぐ急速凍結、-18℃以下で保存・流通しているため、いつでも旬の状態。季節外れに買ったものより格段にビタミンCをはじめとする栄養価が高いんですよ」

左2品は2022年8月の生鮮品、右4品は冷凍商品。これらをすべて「おひたし」用に食べる条件で加熱した際のビタミンCの計測値を示している。
資料:東京海洋大学特任教授 鈴木徹さんによる実験計測結果

これは、東京海洋大学特任教授の鈴木徹さんによる実験計測結果からも明らかだ。また、食品を腐敗させる微生物が繁殖できない温度帯で保存・流通するため、保存料が不要になり、体にもやさしいという。

「昔は食品を長持ちさせるために塩漬けや砂糖漬けにしたり、乾燥させていました。でも冷凍食品の場合は、何も足さず、何も引かず、そのままを急速凍結という手段で食品の組織をなるべく壊さず、安定させます。体に悪い要素は何一つないんです」

そんな冷凍食品を山本さんは、出来立てのおいしさを閉じ込めた「時空間超越食品」と呼んでいる。

うどん、パスタ、ラーメン・・・日本が世界に誇る冷凍麺!

ほんの10年ほど前まで、冷凍食品といえばお弁当の一品やピザなどの軽食というイメージが強く、購入するのは主婦層がメインだった。それがガラリと変わったのが2015年頃のこと。炒飯売上No. 1のニチレイフーズ「本格炒め炒飯®」がリニューアル、味の素冷凍食品の「ザ★®チャーハン」が発売された年だ。

「若い男性を中心に『こんなにおいしいものがあるんだ』という認識が広がり、広い年齢層で冷凍食品が利用されるようになりました。コンビニ各社が冷凍食品のコーナーを充実させるようになったのもこの後、2017年頃からです」

フランスの冷凍食品専門店や大手生活雑貨店、外食企業も家庭用冷凍食品事業参入するなど冷凍食品への感心が高まる中で、コロナ禍でのステイホームが重なり、保存のきく冷凍食品への注目度が高まった。これらの理由から、冷凍食品の新規ユーザーは劇的に増加して定着したのだ。

「ごはんやパン、餅などのでんぷん類は冷凍に向いているので、冷凍・解凍という工程を挟んでも元の美味しさを再現しやすい」と言う山本さん。特に日本が世界に誇る分野が麺類だという。1974年に冷凍うどんが発売。それ以降各社が続き、現在はパスタやラーメンなども人気が高い。

「日本の冷凍うどんのコシやパスタのアルデンテなどの食感の再現度が高く、海外製品よりも圧倒的においしいです。海外のパスタはソースや具材に感心することもありますが、日本の製品の再現性の高さには及びません」

冷凍食品の味と品質を落とさないポイント

日本の冷凍食品はトレイの形状の工夫など、常に改良、改善が進んでいる。メーカーの努力で「お店の味」や「本場の味」が再現されるようになった一方で、解凍や調理段階で失敗することもある。そうならないために、山本さんが強調するのはメーカーが指定する「解凍方法」の確認だ。

「ほうれん草やブロッコリーはもちろん、冷凍野菜のほとんどは、あらかじめ下茹でしてから冷凍されています。生と同じように茹でると当然茹で過ぎで食感を損ないます。生からの加熱を10としたら、冷凍野菜は2ぐらいでOK。また、調理食品の表示で『ラップをかけて』とあるのにしないままレンチンしてしまったり、600Wとあるのに1000Wでしている場合もあります」と、実際のところ「おいしくなかった」原因は消費者側の調理方法に誤りのあるケースもある。レンジの機種により多少の誤差が生じるため、まずは表示通りに加熱し、もし温めが足りないと感じたら500Wで10秒ずつ温めを追加して様子見をするとよい。

また、生産・加工された食品を消費者が食べる直前まで低温で維持することを「コールド・チェーン」と呼ぶ。購入してから自宅で保存するまでの間にこの「コールド・チェーン」が切れてしまう人は多い、と山本さんは指摘する。

「カゴに冷凍食品を入れたまま店内をうろうろしているうちにも、解凍は進みます。レジに並ぶ直前にカゴに入れて、買った後は保冷バッグに入れて持ち帰ること。保冷バッグがなくても、冷凍食品同士をくっつけたり、保冷剤かドライアイスを上に乗せることで解凍しにくくなります。また、一般的に冷凍食品の賞味期限は1年ですが、おいしく食べようと思うのであれば、家庭の冷凍庫に入れてから長くても3カ月以内に消費することをおすすめします。冷凍庫を開けるたびに温度変化が起きていますし、空気や光にさらされると乾燥や酸化が進み品質は落ちてしまいます。必要な食品をすぐに見つけられるように、庫内の整理もしておきましょう」

食材を使いきれないことも少なくない中で、「冷凍食品は食材の無駄を減らすことにもつながります」と山本さん。ときには名店の味を取り入れたり、余った食材は冷凍保存するなどして冷凍を積極的に活用すれば、豊かな食卓を手軽に実現する力強い味方になってくれる。

山本純子さんが厳選!冷凍庫にストックしておきたい絶品3品

■誰でもおいしく焼ける!冷凍餃子の完成形 味の素冷凍食品「ギョーザ」

「誰でも簡単に『油なし・水なし』で調理可能でパリッパリの羽根とジューシーな中具がやみつきになる餃子です。これまで50回以上の改良を重ねるなど常に進化を続け、2022年で発売50周年を迎えました」


オープン価格
内容量 276g(12個入り)
調理方法 フライパン調理、ゆでる・煮る、油であげる

https://www.ffa.ajinomoto.com/gyoza

https://www.ffa.ajinomoto.com/products/detail/id/293

■業界を震撼させたパラパラ感! ニチレイフーズ「本格炒め炒飯®」

「家庭では難しいとされてきた本格炒飯のパラパラ感を再現した逸品。独自の炒め工程を開発し、米の一粒一粒に卵がコーティングされている状態を実現しています。それまでの“炊いたご飯に炒飯風の味付けをした冷凍炒飯”から脱却した味わいは、2001年、業界に衝撃が走ったほどです。発売20周年の2021年には、『世界で一番売れている炒飯』(※)としてギネス世界記録™に認定されました」

  • 記録名:最大の冷凍炒飯ブランド(最新年間売上)対象年度:2020年


オープン価格
内容量 450g
調理方法 レンジ調理、フライパン調理

https://www.nichireifoods.co.jp/brand/honkakuitame/

https://www.nichireifoods.co.jp/product/detail/sho_id183/

■フレッシュ感が広がるおいしさ! 井村屋「4コ入 きなこおはぎ(つぶあん)」

「数ある冷凍スイーツの中でも、私がぜひ味わってほしいと思うのがコレ。あずきバーをはじめ小豆関連製品で名高い井村屋の出来立ておはぎを急速冷凍しており、解凍後は香り高いきな粉の風味と国産もち米のもっちり感が楽しめます。保存のため過剰に甘くする必要がないため、むしろ冷凍の方が美味しいとさえ思えるほど。同シリーズの『4コ入 あん入黒糖わらび餅(こしあん)』や『4コ入 大福(つぶあん)』もおすすめです」


オープン価格
内容量 204g(4コ入り)
解凍方法 常温解凍、レンジ解凍

https://www.imuraya.co.jp/goods/icewagashi/c-icewagashi/kinakoo/

お話を聞いたのは●山本純子さん

やまもと・じゅんこ/冷凍食品ジャーナリスト。冷凍食品エフエフプレス編集長。1981年に冷凍食品新聞社入社。冷凍食品新聞の記者、編集長、主幹を経て2015年に独立。テレビや新聞、雑誌、WEB等幅広いメディアで、冷凍食品の魅力や業界動向などを紹介。夢は「冷凍食品ミュージアム」館長。“冷凍王子”こと西川剛史さんの著書『いますぐ食べたい!冷凍食品の本』(2022年12月発行)の歴史トリビア章の監修も務めた。
冷凍食品エフエフプレス:https://frozenfoodpress.com