ライフデザイン

物価高に負けない!共働き夫婦の「家計」の守り方

光熱費やガソリン代、食料品などの値上げが続き、これからマイホーム資金を貯めようというご夫婦には厳しい時代。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんに、物価高から家計を守るための知恵や、ライフプランの構築に関するアドバイスを聞いた。

消費行動を見直して、家計にメリハリを!

共働きの家庭は2人分の収入があるだけに、どうしてもお金の使い方が甘くなりがちなもの。貯金が苦手というご夫婦は、一度ご自分たちの日々の消費行動を見直してみてはいかがでしょうか。

毎日の買い物の中で、それが本当に必要な物か、本当に自分が欲しい物なのか、を見極めるのは大切なこと。ついつい不要な物を買ってしまう100円ショップの利用を控えたり、買い物の回数を減らしたりするのは効果的な節約方法です。

ただ、誰にでも「リミッターが効かない買い物」があるはず。「お酒だけはやめられない」という人もいれば、「スイーツを我慢するのはムリ!」という人もいるでしょう。私の場合はお酒をまとめ買いせず、あえて金額的に割高なコンビニで買うことによって、買いすぎ・飲みすぎを戒めるようにしています。

家計のすべてを一律カットして貯金に回すといった極端な方法は、長続きしないのでお勧めできません。お金の使い方というものは「どう生きたいか」という個人の信条に直結しています。生活の中で自分たちが大切にしている部分は無理にカットせず、節約する所はしっかり節約するというように、家計にメリハリをつけることが大切です。

お金が貯まりやすい、銀行口座の管理方法は?

共働きの家庭で問題となりがちなのが、銀行口座の管理方法です。家計を適切に管理して効率的な貯蓄や投資を行うためには、自分たちに合った方法を見つけることが大切です。

銀行口座の管理方法として多いのは、次の4つのパターンでしょう。

  1. 共通の口座を作り、お互いの給料から一定額を入金して生活費にあてる
  2. お互いの給料をすべて1つの口座にまとめ、一方が家計の管理を担当する
  3. 共通の口座を作らず、お互いの口座の情報を共有する
  4. 共通の口座を作らず、お互いの口座の情報を共有し、別途自由に使える口座を双方が作る

このうち、最もお金が貯まるのが2のパターンです。収入をすべて一元化し、一方が家計の管理者となって予算立てから支出の管理まですべてを担当する方法で、家計全体の流れを捉えやすいため効率の良い節約や貯蓄が可能です。ただし管理者の権限が強くなりがちで、管理される側から「こんなに稼いでいるのに、お小遣いが少ない!」といった不満が出やすいというデメリットも。管理者は家計の情報開示を心がけて、不平不満を貯め込まないようにするのがポイントです。

お金の“貯めどき”を見逃さない!

人生には何度か「お金の貯めどき」があります。まずは、結婚してから子どもが産まれるまでの期間。次に子どもが産まれてから就学するまでの期間。年齢的には30代前後に当たりますが、この時期に家計を引き締めてお金を貯めることで、50代、60代の人生がまったく変わってくるということを覚えておきましょう。

「配偶者控除が受けられなくなるので、夫の扶養の範囲内でパートをしている」という話を良く耳にしますが、働ける環境にあるのなら、税金の控除や社会保険料の負担を気にせず、できるだけ長時間しっかりと働いた方が得策です。

特に住宅ローンの返済をする一方で、子どもの教育費は削りたくないと考えるなら、その負担に備える必要があるでしょう。教育費で最も高額となるのが大学の入学金や授業料ですが、中学から私立を目指すような場合には、貯金の時期を前倒しにしなければ間に合いませんし、進学塾などの費用など負担も増加します。高額の住宅ローンと教育費で家計のキャッシュ・フローが回らなくなる、という事態だけは避けなければなりません。

家の“買い時”を見極める!

住宅の購入時期をいつにするのか、という問題に正解はありませんが、「家族構成が確定してから」というのも一つの考え方です。例えば、子ども部屋ひとつ取ってみても、子どもの人数や性別によって必要な部屋数は変わってきます。教育環境の整った郊外に家を買ったものの、子どもに恵まれず、夫婦2人で暮らすには立地も間取りも不便、というケースもあるでしょう。

金利の水準や住宅ローン減税の有無も購入時期を決める大切な要素ですが、家族構成やライフステージによって必要とされる住宅は変化します。経済状況ばかりを気にせずに、自分たちにとっての買いどきを見極めることが大切です。

不測の事態に備えたライフプランを!

長い人生の中では、病気をすることもあれば、働き方の変化によって収入が大きく減ることもあるでしょう。いつ訪れるかわからない不測の事態に備えて、状況の変化に強い家計を目指すことが大切です。

ポイントは、住宅ローンや保険料、教育費などの「固定支出」と、食費や光熱費など月ごとに変化する「変動支出」のバランスを取ること。変動支出は収入に合わせて調整することができますが、固定支出は簡単に見直すことができません。たとえ高収入であっても、固定支出の負担が大きい家庭は、不測の事態の発生によって家計が破綻する可能性が高くなります。

特に、月々の赤字をボーナスで補填しているご家庭は要注意。会社の業績悪化などによって賃下げが行われる場合、まずカットされるのはボーナスからなので、住宅ローンの返済もボーナスへの依存度が高い場合は見直すべきでしょう。

不測の事態に備えるためには、楽観主義を身につけることが大切です。現実を直視して正確に分析し、今できる備えをすべてした上で「不測の事態が起こったときは起こったときのこと」と腹を括れるのが楽観主義。「悪いことなど起こらない」と現実から目をそらす楽天主義ではなく、いたずらに将来を恐れる悲観主義でもない、前向きな姿勢でライフプランを立てることが必要ではないでしょうか。


(2023年1月17日掲載)

お話を聞いたのは●黒田尚子さん

くろだ・なおこ/ファイナンシャルプランナー、CFP(R) 1級ファイナンシャルプランニング技能士。立命館大学法学部修了後、日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得し、1998年に退社、独立系FPとして活動を始める。現在は、各種セミナーの講師やメディアでの執筆、個人相談を行っている。主な監修本・著書に『おひとりさまのはじめてのエンディングノート』(主婦の友社)、『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』(日経BP)など。
https://www.naoko-kuroda.com/