理想の住まいの選び方

将来性に期待!ヴィンテージマンションに成長する物件の見極め方!

居住しながら、将来の投資にもなる物件として注目されるヴィンテージマンション。将来性のあるマンションの見極め方と入手する際の心得を、不動産ジャーナリストの山下和之さんに聞いた。

ヴィンテージの価値は立地で決まる!

『ヴィンテージマンション』と呼ばれる物件に明確な定義はありません。一般的には竣工から数十年を経てもまったく資産価値が落ちない、むしろ年々評価が高まり、価格も上昇している高級マンションをヴィンテージマンションと呼んでいます。

ヴィンテージマンションの条件として最も重要な点は、何といっても「立地」です。もともとマンションは立地で資産価値が決まるとされていますが、ヴィンテージマンションの場合は超一等地であることが求められます。

東京でいえば、都心5区と呼ばれる千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区。中でも港区の「3A」と呼ばれる赤坂・青山・麻布や、千代田区の番町や麹町、渋谷区の広尾・松濤・南平台といった高級住宅地に位置していることが最低限の条件でしょう。

もちろん、単に都心の一等地にあるというだけではなく、誰もが住んでみたくなるようなデザイン性や、耐震性能・遮音性といった基本性能を満たしていることも重要です。なかでも管理体制の充実は重要な要素で、一般的なマンションにはない高品質なサービスを提供していることもヴィンテージマンションの条件といえるでしょう。

30年前の物件が今も大人気!

1980年代から90年代初頭のバブル期に大建ドムスという会社が分譲した「ドムスマンション」シリーズは、日本のヴィンテージマンションの先駆けとされています。いずれも20戸〜30戸程度の小規模マンションで、都内に20棟ほどが建てられましたが、築30年を過ぎた現在でもその人気は衰えていません。第1種低層住居専用地域に建てられた解放感のある作りであることや、戸数を抑えてきめ細かな管理を行っていることなどが何十年もの間、人気を維持し続けている理由でしょう。

1993年に竣工した戸数15戸の「ドムス南麻布」は、敷地内にプールやフィットネスクラブを備えるなど桁違いに贅沢な物件で、バブル経済を象徴するマンションと呼ばれました。

また「広尾ガーデンヒルズ」もヴィンテージマンションの代表格です。こちらは住友不動産、三井不動産、三菱地所、第一生命の4社が共同で開発した1,000戸を超える大規模マンションで、1993年の新築時における物件価格は8,000万円から5億円。それでも競走倍率が平均40倍、最高200倍という人気でした。

都心でありながら緑豊かな広い敷地の中に15棟のマンションがゆったりと建ち並び、駐車スペースは全て地下に設置。当時は珍しかった24時間有人管理を導入し、バイリンガルのコンシェルジュが常駐するという、きめ細かなサービスが特徴でした。大規模修繕など管理も行き届いていることから建物の状態は良好で、現在でも購入希望者が絶えることのない人気ぶり。数億円の売物件が、販売開始と同時に「瞬間蒸発する」とさえいわれています。

将来のヴィンテージを狙え!

すでにヴィンテージマンションとして高い評価を得ている物件は市場に出る事が稀であるうえ、金額的にも高額となるため入手は極めて困難です。そこで今後マンションの購入をお考えの方は、将来ヴィンテージマンションとしての評価を獲得しそうな物件を狙ってみてはいかがでしょうか。

近年のマンション購入者の傾向として「実需で買う(住むために買う)と同時に、投機的な意味合いも考慮する」という方が増えています。不動産専門データバンクの(株)東京カンテイが行っている中古マンションの首都圏のリセールバリュー調査では、10年前の分譲時価格に対して、2022年の仲介市場での取引価格は平均131%の上昇率を記録しています。中でも港区の六本木一丁目駅では上昇率250%を記録。山手線の内側でも平均150%という上昇率を示しており、中古マンションの価値が「立地」によって決まることを裏付けています。一方で、首都圏でも郊外になると100%を割る地域もあるため、やはり割高であっても山手線内、できれば都心5区の物件を購入すべきでしょう。

近年首都圏の中古マンション市場は毎年1割〜2割の上昇を続けていますが、そろそろピークアウトに備えておいても良い時期と思われます。しかしヴィンテージマンションに限っていえば、大幅な下落の可能性は低いと見て良いでしょう。

注意していただききたいのは、必ずその販売会社の最高級ブランドを購入する、という点です。三菱地所レジデンスならば「ザ・パークハウス グラン」、三井不動産レジデンシャルなら「パークマンション」といったハイグレードブランドのマンションを購入しておけば、将来にわたって資産価値を維持する可能性が高く、いずれは所有する物件が「ヴィンテージマンション」としての評価が得られるはずです。

ヴィンテージマンションを購入するメリットは、資産形成という面もさることながら、高価格な物件だけに〝住人のグレードが高い〟というメリットもあります。マンションによっては共用のラウンジで交流会を行うなど独自のコミュニティを形成している所もあり、人脈作りやビジネスに活かせる出会いが待っているかもしれません。

数億円のヴィンテージマンションには手が出なくとも、夫婦で働くパワーカップルであれば、将来ヴィンテージマンションに成長を遂げそうな物件、いわばプレ・ヴィンテージマンションに手が届く可能性があります。

本来住宅の価値は経年によって目減りして行くものですが、資産価値の低下を極力防ぐためにも、ヴィンテージマンション化の可能性を秘めた物件の購入を検討してみてはいかがでしょうか。

(2023年10月24日掲載)

お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。

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