理想の住まいの選び方

後悔しないために! 資産価値を保つためのマンションの選び方

不動産コンサルタントの後藤一仁さんによると、購入時は「いい点」ばかりに目が向きがちだが、見落とすとのちのち損をしてしまいかねない要素もあるという。そこで、購入前に確認しておきたい点を4つの側面から解説する。

「いい点」だけでなく、今後のリスクも踏まえる

マンションは高揚感を伴う大きな買い物であるため、「いい点」だけでなく、今後のリスクも考慮した冷静な判断力が必要だ。後藤さんは「必ず確認すべき点」として4つのチェックポイントを挙げる。

【ポイント① 立地・街力】用途地域から街の将来を推測する

資産価値に最も影響するのは「立地」。やはり都心で駅の近い場所は価値を保ちやすいが、まず購入前に確認したいのは「用途地域」だ。これは、「都市計画法」に基づいて住居系や商業系、工業系などで13のカテゴリーに分けたもの。

「買おうとしている物件があるエリアが、今後どう変わるかの指標になります。例えば工業系である場合は、臭気や振動、騒音などのリスクがゼロではないでしょう」

立地に加え、周辺環境も大切な要素だ。

「バルコニー前に隣接している土地が駐車場や築年数の経った住宅や社宅、空き地などの場合、それらが取り壊され、1つの大きな土地にまとめられて新たに高層の大きな建物ができる可能性があります。特に“眺望”を売りにしている物件では要注意。景色や日当たりが遮断された途端に資産価値はグッと下がるかもしれません」

以前にこの記事で説明したように、「立地適正化計画」に指定され「居住誘導区域外」とされているエリアは資産価値が今後保ちにくくなる可能性があるため、確認する必要がある。

【ポイント② 規模感・管理状況】大規模でも安心はできない

次に注意したいのは規模だ。小さすぎる物件は避けたほうがよく、具体的には「都心で20戸未満、郊外でも30戸未満」。小規模物件は駅近の好立地物件も多く、一見、魅力的なことも多いが「管理費・修繕積立金」という落とし穴がある。

「共有スペースの維持管理や、修繕のための管理費・修繕積立金は、小規模物件ほど1住戸にかかる負担が大きく、高額になりがちです。住宅ローンの返済に加えてそれらの負担が高額になれば、毎月の支払いは高くなる上、売ったり貸したりする際の足かせにもなりかねません。購入時は低く設定されていても後の見直しで何度か値上げされる例もあります。また、所有者が少ない分、管理に関して一部のみに決定権が委ねられるケースや、人数が少なすぎることによって、人間関係がうまくいかなくなったときに少人数であるがゆえに、どうすることもできずに売却に至るケースもときどきあります」

一方、大規模であれば絶対に安心ともいえないのがむずかしいところだ。「有利なことは多い」とした上で、売却する際に苦労することもあるという。

「駅から近いタワーマンションや、駅周辺とともに大手ディベロッパーが街ごと開発したような場合の大規模物件であればいいのですが、郊外でかつ駅から遠い場合には資産価値が下がることもあります。というのも、初めて持ち家を取得するような人たちが多く、価格が手ごろな郊外大規模ファミリーマンションの場合、同じような年代の家族構成が集まりやすい。数十年後、同じように住民たちの子育てが終わり、子どもが独立し、同時期に売り出そうと考える人が増え、価格の下落連鎖が起きる確率が高くなります。さらに戸数が多いため、他部屋の売り出し価格に左右されて希望価格を通しにくいこともあります」

小規模すぎる物件は「固定費がかかる覚悟」、郊外の大規模物件では「競争による価格下落」に注意。規模感に加え、立地などを総合的に判断する必要がある。

【ポイント③ 住戸の位置・間取りプラン・仕様】半地下物件やバルコニーの位置に注意

住戸に関しては、地階の住戸はもちろん、半地下を含めた地下と1階のメゾネットや、1階は避けたほうが無難かもしれない。地下の住戸は浸水リスクをはじめとした災害や湿気、匂いなどの問題があり、1階ではプライバシーが確保されにくく防犯面で不安があるからだ。しかし1階でも実際には中2階の高さがある場合や、道路と反対側に面するなど、プライバシーが確保されていれば問題がない場合もある。

バルコニーの位置も確認したい。幹線道路沿いのマンションは、騒音や排気ガスなどの理由から、洗濯物が干しにくい、健康上の影響がよくないと敬遠されがちだが「バルコニーが幹線道路に面しておらず、反対側の住宅地等を向いているのであれば」さほど問題はないと考えていい。

さらに「エリアのマーケット(需要)に対して適切な(面積と間取りが合っている)物件か」もポイントだ。

「60㎡であれば、2LDK以上の需要が多いエリアなのに、2LDKに変更ができない1LDKなどは売りにくく、貸しにくいため、資産価値が下がってしまう可能性があります。ある程度、レイアウト変更できる柔軟な物件が安心です」

【ポイント④ 安全性】災害に強いかどうかは「未来+過去」で判断

建物や近隣で何らかの問題が起こると資産価値を保てなくなる可能性があり、安全性は慎重に判断したい。大きく「防災」と「防犯(治安)」の観点から考えてみる必要がある。まずは近年さまざまなリスクのある災害面。地震に関しては「地震危険度マップ」「地震のゆれやすさ全国マップ」「液状化予測図」などで、洪水や土砂災害、冠水については「ハザードマップ」などを確認する。

「しかし、これらはあくまでも“未来予測”です。できれば“過去実績”も参考にしてください。自治体が出している過去の水害記録(浸水実績図)など、これまでにどんな災害がどの頻度で起こっているのかを見ること。古地図と照らし合わせてどんな土地だったかを知ることも大切です」

例えば地盤の緩いエリアにある物件購入を検討している場合は、過去の浸水実績や地形を確認したい。新しいマンションは防災対策をしているが、実際に首都圏で大きな地震が最後に起きたのは1923年の「関東大震災」と100年近くも前のこと。その規模の地震は東京周辺では誰も経験したことがなく、安全性が確保されるものではないからだ。

次に防犯面だが、これは自分の足で確かめることが第一。

「警視庁のホームページでもある程度わかりますが、実際に街を訪れて雰囲気を感じてください。古くから営業している地元の定食屋や駄菓子屋のご主人や駅前の交番の警察官などに、周囲の治安などについて話を聞くことも有効です」

少しの手間を惜しまず、この4点を確認すれば、納得して物件を購入できるはずだ。

お話を伺ったのは●後藤一仁さん

ごとう・かずひと/不動産コンサルタント、株式会社フェスタコーポレーション代表取締役社長。
1965年神奈川県生まれ。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、2002年に株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。「不動産を通じて、世の中の一人でも多くの人を幸せにすること」をミッションに掲げ、専門家として、テレビ、雑誌、書籍、ウェブなどあらゆるメディアで活躍中。主な著書に『マンションを買うなら60㎡にしなさい』(ダイヤモンド社)、『東京で家を買うなら』(自由国民社)。
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