中古マンションは新築より上昇率が高くなっている
マンション価格が上がり続けているが、新築マンションと中古マンションでは上昇ピッチが異なっている。
首都圏新築マンションの発売価格の平均は、図表1にあるように、10年前の2013年に平均4,929万円だったのが、2023年には8,101万円で、10年間の上昇率は62.5%になる。
それに対して、中古マンションの成約価格の平均は2013年には2589万円だったのが、2023年には4575万円に上がっている。その間の上昇率は76.7%に達し、新築マンションより上昇率が高くなっている。結果、2013年には新築マンションの52.5%で買えた中古マンションが、2022年には58.9%に上がっており、中古マンションの割安感が薄まりつつある。
国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、新築の分譲マンション購入者の世帯年収の平均は960万円に対して、中古マンション購入者は657万円と300万円以上の差があり、新築マンション購入者と中古マンション購入者では購買力が大きく異なっている。新築マンション購入を考える層は、価格が多少高くなってもある程度ついていける人たちが多いとみられるが、中古はそうはいかない可能性があり、あまり高くなりすぎるとついていけなくなる中古マンション購入希望者が増える。
首都圏の中古マンションは、1年前と比べて2.8%の下落
それだけに、まずは中古マンションから価格の下落が始まるのではないかとする見方が強い。事実、それを予感させるデータもある。
マンション情報の「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、70㎡換算の中古マンション価格や、1年前や3年前、5年前、10年前に比べての変動率を騰落率として調査している。その2023年11月分のデータでは、首都圏の中古マンション価格の騰落率は図表2のようになっている。
3年前に比べての騰落率は首都圏全体では20.6%で、2割以上上がっているものの、1年前との騰落率は-2.8%とマイナスに転じている。直近では首都圏平均で下落となっているのだ。やはり首都圏の中古マンション価格は高くなり過ぎて、中古マンション購入希望者の購買力がついていけず、価格の下落が始まっているのではないだろうか。
周辺三県でも1年前に比べて下落している!
ただ、エリアによって騰落率は異なる。1年前との騰落率をみると、価格も人気も高い都心5区では6.7%のプラスとなっていて、依然として価格の高騰が続いている。都心の高額の中古マンション購入を希望する人たちは、その他のエリアの中古マンション購入希望者とは異なり、年収などの条件に恵まれていて、価格高騰についていける人たちが多いのだろう。
しかし、東京都でも都心以外のエリアではマイナスとなっているエリアが多い。たとえば、城南エリアは-2.4%で、都下は-1.9%だ。
東京都以外の周辺三県も同様で、図表3にあるように3年前との騰落率は軒並みプラスだったものの、1年前との騰落率はマイナスに転じている。特に、千葉県の主要エリアでは1年前に比べて7.0%も下落しており、埼玉県全体、千葉県全体、川崎市でもマイナス幅が2%台となっている。
都心に次いで高い「城南エリア」の下落幅が大きい!
東京都の70㎡換算の中古マンション価格をエリア別にみると、図表4のように推移している。都心5区は1年前の8,760万円から9,349万円に6.7%の上昇だが、城南エリアは6,357万円から6,203万円へ、2.4%の下落となっている。東京都のなかでは、他のエリアに比べても下落率が最も大きい。
都心以外のエリアとしては、城南エリアは価格水準が他のエリアに比べて最も高く、2023年の価格は6,203万円となっている。東京23区のその他のエリアの価格水準は5,000万円台だから、1,000万円ほど高い。価格高騰によって中古マンション購入希望者の購買力が最初についていけなくなるエリアという見方ができるかもしれない。
そう考えると、最も価格水準が高い都心エリアにおいても、いずれは購入希望者の購買力がついていけなくなり、上昇ペースに歯止めがかかり、場合によっては下落に転じる可能性もあるのではないだろうか。
2024年はマンション市場のターニングポイントの年に!?
中古マンション購入希望者の購買力がついていけるかどうかは、経済情勢にかかわってくる。2023年までのように物価の高騰が続けば、生活は厳しくなる一方だが、賃金が上がれば、生活に余裕ができ、購買力が維持され、むしろ高まるかもしれない。
ただ、中長期的には改善が進むにしても、2024年はまだまだ厳しい環境が続きそうなだけに、購買力が高まる可能性は低く、中古マンション価格の下落が本格化する可能性がある。2023年には唯一上昇が続いた都心エリアでも下落に転じるかもしれず、そうなると、2024年はマンション市場のターニングポイントとして長く記憶される年になるかもしれない。
そうであれば、中古マンションの購入については、タイミングを見極める必要がある。実際のところどうなるのか、市場の価格動向をシッカリとチェックしておきたいところだ。
(2024年3月19日掲載)
お話を聞いたのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)
やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/