ガーデニング

ビジネスパーソンにもおすすめ!ミニ盆栽の奥深い世界

歴史をたどれば、はるか2千年以上前の中国までさかのぼるという盆栽。最近は、楽しみ方も広がり、室内インテリアとして、ミニ盆栽を飾る人も増えている。その魅力、初心者が知っておきたいポイント、おすすめの品種などについて日比谷花壇の塩見亮一さんに伺った。

小さな樹木からあふれる生命力

ミニ盆栽は、高さ10~20cm程度の樹木を植えたものを指します。ダイニングテーブルや、部屋の小さなスペースに飾れるとあって、庭のないマンションに住む方からも人気を集めています。自然の景色をそのまま切り取ったような盆栽は、生命力にあふれ、部屋の雰囲気を明るくする力があるようです。

室内に飾る植物としては、切り花や鉢植え、観葉植物が一般的です。これらは主に洋花など外国の品種であるのに対して、ミニ盆栽には日本ならではの樹木や山野草が多く用いられています。桜、藤、楓といった、日本の四季の変化を伝えてきた植物の豊かな表情を鑑賞できることは、盆栽を育てる醍醐味の一つです。

盆栽に、古めかしいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、最近は盆栽の世界で自由に遊ぶ人が増えてきました。メタリックな鉢に植えたり、プラスチックの茶碗に穴をあけて、オリジナリティある作品にしてしまったりする人も。自由に絵を描くおもしろさと似ているかもしれません。SNSなどを見ると驚くようなアイデアが次々と生まれています。

楽しみの幅が広いのは、柔軟に対応できる懐の深さがあるから。皆さんも、まずミニ盆栽一鉢をご自宅に飾り、興味が広がったら、器や一緒に飾る小物を吟味してみたり、針金を巻いて枝の向きやかたちを整える樹形づくりにチャレンジしてみてください。もしかすると一生の趣味との出会いとなるかもしれません。

自然との距離が近くなると、人の気持ちもくみ取れるように

盆栽は、大地で大きく育つ樹木を、観賞用に小さくしたもの。風や太陽のもとで健やかに育ちます。初心者の方に多い失敗は、室内に飾ったままにしたり、ガラス越しの日光のみで育てようとしたりして、枯らしてしまうケース。基本的には、屋外に置き、食事のときや帰宅後のリラックスタイムなどに、部屋に入れるようにしましょう。

難しく考えすぎず「盆栽にとって、心地よい環境はどのようなものか」と、気持ちを添わせるうちに、よい付き合いができるようになります。真夏の日中に水をやれば、小さい鉢の中で水分の温度が上がり根が蒸れる。冬の日に冷たい水をやっても、根は弱ってしまう。育てるうちに、樹木が望むことが分かるようになります。こうして、話すことができない植物の声に耳を傾けることは、人の気持ちに敏感になることにつながります。そんな思いから、部下を持つビジネスパーソンの皆さんに、盆栽の栽培をおすすめすることもあります。

盆栽を育てるとき、お手本になるのは、街で見かける同じ種類の樹木です。たとえば公園の桜の木を見て、木肌に触れたり、葉の色を確かめたりすれば、自分が育てている桜が元気かどうかが分かります。なにせサイズも大きく、見やすいですから。

「街を歩いていると、自分が育てている樹木がぱっと目に入るようになりました。都会にも緑がたくさんあるんですね」という感想もよく聞きます。ミニ盆栽をきっかけに、自分の暮らしが自然と地続きになっていることを実感するのかもしれません。

ずっと眺めていたい!最初の一鉢ならこちら!

最近は、ネットショップ、ホームセンターでもミニ盆栽を購入できます。値段はさまざまですが、数千円程度からありますので、手軽に始められます。

最初に選ぶなら、花や実をつけたり、紅葉するなど、季節によって表情を変える樹木がよいでしょう。ご紹介するのは、初心者でも育てやすい樹木です。知識はあとからつけていくことができますから、目に飛び込んできたもの、家に飾ったときの様子が想像できるようなミニ盆栽を選んでください。

【かわいらしい実を鑑賞する】

■ツルウメモドキ
秋頃は黄色の種皮に包まれているが、寒さとともに、皮がはじけて赤い実に。黄色と赤のコントラストが美しい。

■老爺柿
秋になると、愛らしい実をつける老爺柿。緑の固い実が徐々にだいだい色に変わっていくことで、季節の移り変わりを実感できる。

■ピラサンカ
白い小花がたくさん咲いたあと、秋から初冬あたりにかけて、鈴なりの鮮やかな実をつける。

【花を愛でる】

■一才藤
若木のうちから花や実をつけやすいものを「一才物」という。一才藤は育てやすく、花が終わった後の、葉姿もみずみずしい。

■桜
日本の春を象徴する桜は小さくても華やかな存在感がある。自宅にいながら桜を鑑賞する贅沢を味わいたい。

■サザンカ
晩秋から初冬、花の少ない時期に開花するとあって、人気も高い。

【葉が作り出す風景を眺める】

■楓
新緑、紅葉、落葉と四季を通じて豊かに表情を変える。葉を落とした冬の寒樹にも風情があり、見どころの多い樹木といえる。

■シノブシダ
厳しい環境でも、耐え忍んで育つところから、その名がついたという説も。レースのような細かい葉が特徴。

お話を聞いたのは●塩見亮一さん

しおみ・りょういち●株式会社日比谷花壇。1997年入社。花卉(かき)商品の販売や商品企画、花生産地の仕入れを担当。花の生産者の想いを消費者に伝えるパイプ役を心がけている。

日比谷花壇公式サイト
https://www.hibiyakadan.com/