整理収納のコツ

忙しい家族に役立つ!収納の達人が編み出した「浮かせる」収納術

限られたスペースで効率的にモノを収納するにはどうすればいいのか。子ども2人を育てながら整理収納アドバイザーとして活躍する赤工友里さんが編み出した秘策が「浮かせる収納」だ。よく使う掃除アイテムや液体の入ったボトル、ティッシュや鍵など、あらゆる物を使う場所に浮かせておくことで、片づけの手間が減り、家族も協力的になると、赤工さんは語る。

正しい方法を知れば、誰でも簡単に「片づけ」ができる

今でこそ自身のブログやInstagramなどで「家族が幸せになる」収納法を紹介している赤工友里さんだが、もとから収納に明るかったわけではない。大学を卒業後、演劇やアパレル企業の仕事をしていたが、11年前、子どもが生まれてから家の中が片づかなくなり、収納法について考えるようになったのがきっかけだ。

「あの頃は会社員として働きながら、ほぼワンオペで育児をしていたので忙しく、平日は家の中がぐちゃぐちゃ。週末に片づけても平日になると、またリバウンドするという負のループに陥ってしまいました。片づけは得意だったはずなのにどうしてだろうと落ち込んで、笑顔も少なくなっていましたね」(赤工さん、以下同)

そんなとき整理収納アドバイザーという資格があることを知り、家の中を整えようと一念発起。

「学んだことを活かして収納の仕組みを作ったら、家の中がガラリと変わってきれいになっていきました」

その過程をブログで発信したところ、1日18万アクセスを記録するほど人気に。読者からアドバイスを求められるようになり、整理収納アドバイザーの中でも講座を開くことができる認定講師の資格を取った。

「収納を工夫すると快適な暮らしになり、幼い子どもたちも含め、家族が自立して片づけてくれるようになったことに感動したので、そのメソッドをたくさんの人にお伝えしたかった。かつての私のように家が散らかって落ち込んでいるお母さんも、自分を責める必要なんてないんです。学んだことがないだけで、正しい方法を知れば、片づけは誰にでもできるんですから」

モノが散らからず、掃除も楽になる「浮かせる収納」

赤工さんの収納メソッドのひとつが「浮かせる収納」だ。赤工さんファミリーは3LDKのマンション住まいで4人暮らし。限られたスペースの活用法を考えた結果、床や棚に置いていたモノを「吊るす」「ぶら下げる」「引っ掛ける」などして徹底的に浮かせていった。

「子どもがいるのでモノが多いのに、収納場所はそこまで多くない。新しくモノの置き場所が作れるといいなと思い、いろんなモノを壁や扉の裏に吊り下げていきました。そうすると、パッと手に取れるし、場所が決まっているのですぐ戻せる。掃除も床に置いてあるものをどかしながらだと、すごく時間がかかってしまうけれど、モノが浮いていればノーストレスでできます」

時間の縮に役立つ浮かせる収納は、忙しい人にうってつけだ。

「扉裏にモノを浮かせておけば、扉を開けた後にケースを出してその中からモノを取り出すというアクションの数が減らせるので、いわば『究極の時短』なんです。モノの収納は家の中で動線を考えて配置するものですが、さらに取り出すという動線も意識すると使った後もパッと戻せます」

扉裏にアイテムを吊るすことで、棚の中もスッキリ。その時必要なアイテムが、パッと目に入る。

まずは、バスルームと玄関で徹底的に浮かせてみる!

「浮かせる収納」を手始めに実践しやすいのはバスルームだ。ラックなどに置いていたシャンプーやリンス、ボディソープのボトル、石鹸などはもちろん、掃除用のブラシ、洗面器なども壁にフックを着けて浮かせてみよう。「そうすると、ボトルの底が汚れなくなり、お風呂掃除もしやすい。掃除用のブラシもワンアクションで取ることができます」と赤工さん。ヌメリやカビが発生しやすい水回りを清潔に保つためにも、「浮かせる収納」は有効だ。

玄関もこまごまとした物が多い場所。宅急便が届いたときに必要な印鑑はドア裏にマグネットで付ければ、すぐに出せる。外出時に必要な鍵やマスクもドアに吊り下げておけば、忘れることもない。梅雨どきは濡れた傘やレインコートを吊るしておくこともできる。

水回りは「浮かせる」収納の本領が発揮される。ボトルや掃除用具の水気が自然と落ちるので、清潔な状態を保ちやすい。シェーバーやクリームも浮かせることで取り出しやすさがアップ。
出かける際に必要なマスクや家の鍵、宅配便の対応に使う小物などを最短距離で取って戻せるよう玄関扉に浮かせている。

材料費は数百円だけ!

写真一番上のものが透明のフィルムフック。マグネットタイプなどもある。100円ショップやホームセンターで入手できる。

「浮かせる収納」に役立つアイテムは100円ショップでそろう。定番の突っ張り棒やワイヤーネットのほか、赤工さんがおすすめするのは「フィルムフック」という最近、人気のアイテム。壁に貼り付ける面が透明で数ミリの厚さなので目立たない。

「取り付けられるのは、鏡や洗面台などのツルツルとした面のみですが、バスルームやキッチンなど水周りなら付けやすいので、おすすめ。コップや洗顔フォームのボトルなど、たいていのものは引っ掛けておくことができますよ。マンションだと跡が残ることが気になりますが、はがすときはペロンと取れるのでトライしやすくていいですね」

仕組みをつくれば、家族が自発的に片づける家に!

モノを散らかす子どもに苛立ち、つい強い言葉を発してしまうことに悩む人もいるかもしれない。赤工さんは「浮かせる収納」を始め、家のあらゆるところでモノの置き場所をクリアにしていった結果、家族も自然と家事に参加してくれるようになったという。

「人を責めるのではなく、仕組みを責めるという考え方をしたいですね。大切なのは『ここにこれがある』とみんなが分かっていること。以前は、私だけが片づけをしていたので、うちの夫はしょっちゅう『あれはどこ?』と聞いてきましたが、整理整頓ができてからは、収納場所が共有できたので、質問してこなくなりました。まったく家事をやらなかったのに、今は使うモノのある場所が分かるからか、進んでやってくれるようになりましたね。子どもたちも、保育園の収納を見習って子どもたちの目線で分かりやすく収納したら、自分で小学校へ行く準備をし、片づけをできるようになりました」

100円ショップ『Seria(セリア)』の「壁ピタティッシュ」を逆さまに貼り付けて。マスキングテープでテーブル板を保護した上に貼ってもOK。

アイデア次第で、片づけの仕組みをつくることができる。赤工さんの自信作は、テーブル裏に設置したテッシュ箱だ。

「ティッシュの箱を天地逆さまに付けただけです。家族で食卓を囲むとき、よく子どもに『ティッシュ取って』と頼まれますよね。そのたびに持ってくるのを面倒くさく感じ、それぞれが座る場所に設置してみたら、自分で取ってくれるようになったので、とても楽になりました。今ではウチの子たちはノールックでピッピッと取っています(笑)」

浮かせる収納は、家庭円満にも役立ちそうだ。


写真提供/赤工友里

お話を聞いたのは●赤工友里さん

あかく・ゆり/整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師。愛知県名古屋市出身。夫と12歳、8歳の子との4人家族。ワーキングマザーとして奮闘する中で整理収納アドバイザー1級を取得。家が片づいて家庭・仕事・子育てが上手く回り出したのをきっかけに2017年、株式会社Y-Styleを設立。収納法や暮らしについて発信している。著書に「『新しい収納の教科書』浮かせる・立たせる・寝かせるでどんな家も片づく!」(KADOKAWA)がある
http://kazokushuno.jp/