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イベントアフターレポート

開催日
2025年1月13日(月)

【イベントレポート】レジクラ新春寄席2025 落語&太神楽 アフターレポート

今、最も勢いのある落語家の一人、桂宮治師匠をお迎えして開催された「レジクラ新春寄席2025」。落語に加え、お正月らしい獅子舞や曲芸が賑やかに新春を盛り上げました。その模様をレポートいたします。

伝統芸能「太神楽」に会場が釘付けに

新春の晴れやかな空気に包まれたこの日、会場となった丸ビルホールで、お客様をお迎えしたのは、寄席の幕開けを知らせる一番太鼓。勇壮な響きに次いで三味線や太鼓による賑やかな寄席囃子が会場に鳴り響き、これから始まる楽しいひとときへの期待が高まっていきます。

まずは、林家たたみさんによる開口一番から。シャレをテーマにした軽妙な小噺「洒落番頭」が披露され、客席は笑いに包まれます。

続いて登場したのが、太神楽社中による長い歴史を持つ獅子舞と曲芸を中心とした大衆芸能「太神楽(だいかぐら)」。和傘の上で縁起のいい鞠(まり)や枡(ます)などをまわす「傘回し」など、次々と繰り出される伝統芸の数々に会場が釘付けに。

中でもお客様を惹きつけたのが、あごの上に撥(ばち)や鞠(まり)、茶碗、化粧房などを次々と積み上げていく「五階茶碗」。1本の撥にさらにもう1本追加され高さが増し、誰もが固唾を飲んで見守る中、両手を離しバランスをとることに見事成功。客席から大きな拍手がわきおこりました。

古典落語の名作「時そば」を宮地師匠のアレンジで魅せる

ここで仲入り(休憩)を挟み、いよいよ真打、桂宮治師匠の登場です。出囃子とともに宮治師匠が高座に上がると、お客様の期待は最高潮に高まります。

本題に入る前の「まくら」(小噺)も落語の大きな楽しみです。定期的に行っている学校公演のエピソードなど、爆笑トークが次々と繰り出され、割れんばかりの拍手と笑いで客席と高座が一体となったところで、お待ちかねの本題へ。

この日の演目は、古典落語の代表的な名作「時そば」。落語は、同じ演目でも噺家によって演出が変わるのが魅力で、「時そば」も宮治師匠の手にかかると新たな笑いどころが満載。身振り手振りを交えながら披露される登場人物たちのテンポのいいやりとりに、ぐいぐいと引き込まれていきます。

中でも「時そば」の見せ場のひとつでもある、蕎麦をすするシーンは圧巻のひとこと。扇子を箸に見立て蕎麦を口に運ぶまでの所作がとても自然なうえに、麺を吸い込む音、つゆをすする音、ごくりと飲み込む音などどれもリアルで、本当にお蕎麦を食べているような錯覚に陥りそうです。

今年は世界中の人に幸せになってほしい

この日最後となるアフタートークでは、高座とは違う子煩悩な一面もチラリ。

「子どもは3人いますが、妻は『うちには子どもが4人いる』と言っています(笑)。僕は挨拶や箸の上げ下げなどの礼儀は教えますが、それ以外は小言を言わず、子どもたちと一緒にゲームで盛り上がったりしています」

その一方で、芸に対する真摯さも覗かせます。

「落語は10人いれば10通りのやり方があります。古典落語にしても忠実に演じる人もいれば、自分のようにいろいろアレンジする人もいる。どちらがいいというものではありませんが、ひとつだけ言えるのは、稽古は必ず人前でやるべきだということ。『高座百遍(※1)』といわれるように、場数は何より大切です。例えば、(春風亭)一之輔師匠は天才だと思っていますが、最初から天才はいません。稽古の数が天才をつくるのです」

宮治師匠にとっての「一番のご褒美は」と尋ねられると、即座に「お客様の笑顔」という答えが返ってきました。

「僕は31歳で弟子入りし、この世界に入りましたが、お客様に『ありがとう』と感謝していただける、そういう仕事につけて本当に幸せなんです。昨年は元旦から大変なことが続いたので、今年は世界中の人に幸せになってほしい。甚大な被害を受けた能登地方はまだまだ復興が追いついていないと聞きます。僕は落語しかできませんが、自分にできることで力になれれば。今後とも、宮治と三菱地所をよろしくお願いします!」

宮治師匠と300人のお客様の笑顔で、今年の新春寄席は大盛況のうちに幕を閉じました。

 
  1. 百回の稽古よりも一回の高座の方が得るものが大きいという意味
 
  • 本記事の内容は2025年2月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。