ライフデザイン

女性もカンタンにできる!DIYで叶える、自分好みの住まい

自宅で不便だと感じるとき、インテリアをアレンジしたいとき、DIYができたなら……。きっと今までの住まいが、さらに心地よくなるはず!DIYは工具を使ったりとハードルを高く感じがちだが、DIYアドバイザーの石井麻紀子さんは「便利なキットがある時代。“お父さんの日曜大工”を当てにしなくても、どんな方だって住まいを快適に変えられます」とアドバイスする。

DIYのハードルは、思っているほど高くない

「DIYとは『Do It Yourself』。自分で手を加えるなら、住宅のリフォームから、ガーデニングや縫い物まで、その全てが含まれます。つまり、DIYの本質は日々の暮らしを自分好みに工夫することにあります」

そう話すのは、DIYアドバイザーの石井麻紀子さん。築古の住宅、飲食店のリノベーションや、女性と年配者も楽しめるDIY教室の主宰など、自分の手で暮らしを快適にする喜びを広く伝えている。

「たとえば、なんの変哲もない壁でも、収納棚をつけようと思えば5分で完了します。可愛らしい植物を飾れば気分がワクワクするし、よく使う道具を置いておけば暮らしの動線がすっきりする。DIYは、自分の手で普段の暮らしをより良くすることができるんです」(石井さん、以下同)

DIYとリフォームを仕事にしようと、29歳でIT企業からホームセンターへ転職した石井麻紀子さん。学生時代から、部屋のプチリフォームや近所の囲いを直したりと、独学のDIYを実践していた。

いざDIYを実践しようとすると脳裏をよぎるのは、重い材料を買い集める、壊れたところを工具で修理するなど、力仕事のイメージ。ところが、「最近では耐久性にすぐれた軽量のDIYキッドや、小型の電動ドライバーなど便利なツールがたくさんあり、ホームセンターやインターネットで、購入、カット、宅配も頼めるのでハードルは低くなっている」と石井さんは話す。定期的に開催している石井さんのDIY講座に通う生徒は、力仕事とは縁のない女性が半数だという。

「多くのご家庭で、自宅にいる時間が長いのは女性だと思います。家具や家電の配置を工夫したり、インテリアをお洒落にデコレーションしたりするアイデアは、女性の方が浮かびやすい。私のDIY教室でも、壁紙に飾り切りを入れたり、棚にタイルを張ったりと、女性の生徒さんが大胆なアイデアを考案してくれています」

キッチンの収納棚に石井さんが取り付けたスライド式のハンガーラック。もともとデッドスペースだった空間に手拭きやまな板を吊るすことで、作業の効率がグンと良くなった。

物の配置や適材適所を考えるDIYのプランを、石井さんは「脳内テトリス」と呼んでいる。間取り全体を見て、修繕すべきところはないか、機能していないデッドスペースはないか、マルチにシミュレーションするのも、女性が得意な作業だと感じている。

「もし住まいに改善したいところがあるなら、ずっと我慢しながら暮らす必要はないし、“お父さんの日曜大工”を当てにせず、自分で手を動かせば意外と良いものが作れてしまうんですよ。むしろ、ひとつのことに集中して完璧主義になりがちな男性より、住まい全体を俯瞰して見られる女性のほうがDIYは向いていると思います」

シンク上に作った洗剤収納はフォトフレームを活用。気分によって収納スペースの柄を変えることができるため、使い勝手だけでなく空間としての見栄えも良くしている。

5分でできるDIY!壁面が収納スペースに変身!

「今暮らしている環境を大切に使い続けたいと思う人こそ、DIYにトライすべき」と石井さんは力強く話す。

「同じ家に住み続けていると、子どもが生まれて家族構成が変わるなどライフスタイルの変化に伴って、快適なレイアウトも変わっていきますよね。これはプロに頼むほどではない、またはお金をかけられないと思うときが、DIYの始めどきです」

手始めに「5分でできるDIY」として石井さんがおすすめするのは、レールを活用した壁面収納ユニット。まず、耐久性が高いアルミ製のレールを壁に取り付け、オプションで販売されている収納パーツをレールから吊り下げる。玄関の傘立てやシューズラックなども簡単に作ることができる。

もともと収納がなかった玄関に、ピクチャーレールを活用した傘立てとシューズラックを設置。石井さんがおすすめするのは「日中製作所」のbHレール。

「基盤となるレールは、石膏の壁用にピンと専用パーツ、木壁用には木ネジ(※釘ではありません)が付属しているので、取り付けたい壁の素材に合わせて使い分けます。ピンや画鋲サイズの穴は、基本的には賃貸でも原状回復義務がありません。お住まいの物件の条件を確認してから使ってみてください」

石膏ボード専用パーツをはめ、1箇所を3本のピンで固定する“石膏ピン止め”。取り外しした際も自分で修復可能な穴で済むので、賃貸住宅でも取り入れやすい。
レールに設置できるのは、“ミニボックス”以外にも、“ラック”や“ハンガーフック”など多彩なバリエーションがある。

すべて既製品のキットなので、レールさえ設置できたら、あとはほとんど手間がかからない。今回は、キッチンの壁でディスプレイが楽しめる“ミニボックス”を設置。さらに“ハンガーフック”も取り付け、エプロンなどが掛けておけるように工夫した。

約5分ほどで、なにもなかった壁が便利な収納スペースに変身した。家の中を見渡すと、活用できそうなスペースが見つかるかもしれない。

スキルが上達すれば、リノベーションに近いアレンジも!

「まずは手軽な既製品を活用しながら、自分の手で暮らしを良くしていく楽しさを体感してみてください。DIYに慣れてきたら、ホームセンターで手に入る突っ張りポールを使ってクローゼットの中の収納を作るなど。さらに工具を使ってみるなら、アルミの薄い棚柱を壁の下地のあるところに取り付けて便利な可動棚を作る、玄関の下駄箱の上のスペースに飾り棚を作るなど、少しずつステップアップするといいと思います」

他にも、リビングの壁の一面に貼ってはがせる、好きなテイストの壁紙を付けて思いきったアクセントウォールにするなど、リノベーションに近いインテリアのアレンジもできる。

壁の構造や耐久性がわかるようになれば、アイアンの棚受けをつけた飾り棚や、大型の本棚、可動棚といったDIYもできるようになる。

「DIYをはじめたばかりの時は、『壁紙を貼っていいの?』と恐る恐るですが、ひとつ完成すれば『こんなことができるんだ』『自分の手で作れた』と気持ちが開放されていく感じですね。すると、どんどん挑戦してスキルが上がっていく。そうして好みのインテリアにしたり、趣味に熱中できるスペースを作ったり、自分の理想を形にしていけばその場で過ごす毎日が幸せじゃないですか。ぜひ“住まいのオートクチュール”であるDIYの魅力を知ってください」


(2023年6月6日掲載)



お話を聞いたのは●石井麻紀子さん

いしい・まきこ/DIYプロデューサー、DIYアドバイザー。兵庫県尼崎市出身。IT企業やホームセンター勤務を経て、DIYアドバイザー認定試験に合格し独立。DIYのサポートやリフォームを仕事にする。素材を活かしたアイデアや暮らしに寄り添った提案で評判を呼び、2013年、UR賃貸住宅のリノベーション・モデルルームを手掛ける。合同会社クラディを立ち上げ、賃貸の大家やリフォームスキルを身に付けたい人向けに「DIYの学校」を開いている。著書に『デッドスペースDIY』がある。
https://kladiy.com/