北海道・倶知安町のレストランでしか食べられない、「倶知安じゃが 五四〇」
北海道の新千歳空港から車で約2時間。支笏湖をなぞるようにしてニセコ町方面へと車を進める。羊蹄山を超えてすぐにたどり着くのが、倶知安町(くっちゃんちょう)である。この倶知安町には、この場所でしか食べられない〝奇跡のじゃがいも〟があるという。
生み出したのは、じゃがいもの卸業を営む本間松蔵商店の4代目・本間浩規(ほんま・ひろみ)さん。熟成させたじゃがいもが「これまでにない甘み」と偶然発見したという。そして、これを「五四〇」というブランドとして販売することを強く勧めたのが、本間さんの知人であり、料理人の村井弘治(むらい・こうじ)さん。お二人に、「五四〇」に込めた想いと、おいしさの理由を聞いた――。
「今まで感じたことのない甘さ……」
―― さっそくですが、「倶知安じゃが 五四〇(ごよんまる)」とはどのようなじゃがいもなのでしょうか?
本間さん 収穫したじゃがいもをすぐに出荷せず、約540日間あえて熟成させることから、「五四〇」という名称をつけました。味わいは、じゃがいもとは思えないほど甘く、食感もホクホクというよりもしっとり感が強いです。サツマイモの甘み近いところもありますが、しっかりとじゃがいもの味わいもあり……初めて食べた人は、「こんなじゃがいも食べたことがない!」と驚きます。
―― ほぼ2年間熟成させるということですが、なぜそれで甘みが増すのでしょうか?
本間さん うちでは収穫したじゃがいもを冷たくて暗い環境において約540日間寝かせるのですが、簡単にいうと土の中でじゃがいもが「冬眠」しているような状態を作っています。冬眠中は光合成によって生成されたデンプンを、どんどん糖に変えて蓄えていくんです。だから寝かせる期間が2年近くなれば、それだけ甘みがじゃがいもの中で増しているのです。その代わり、冷たくて暗い環境から出した瞬間にじゃがいもが目覚めてしまう。すると、一気に質感が変わってしまう。とてもボソボソしていて、美味しくないものになりますね。だから管理が難しく、信頼しているレストランにしか「五四〇」は販売しないことにしています。
―― だから、スーパーや通販などでは販売されていないのですね。


「五四〇を食べる」という〝体験〟を提供したい
本間さん スーパーや通販はじめ、倶知安町以外では基本的に販売していないのには、品質管理以外にもう一つ理由があります。それは、食べた人にとって「忘れられない味」となってほしいからです。「五四〇」の味自体も非常に印象深いものですが、それよりも体験として「忘れられない」ものになってほしいんです。例えば、東京から倶知安町にくるためには飛行機を手配し、車を2時間ほど運転する必要があります。「やっとの想い」でたどり着き、そこで食べた味って忘れないと思うのです。そんな強烈な感動を覚えたら、きっとまた倶知安町に来たいと思ってもらえますよね。「五四〇」がそんなじゃがいもになったら、倶知安町の人たちにとっても誇らしいものになると思うし、それを願ってあえて一般流通させていないんです。
―― 「味」だけでなく「体験」も合わせて楽しめる食材なのですね。
本間さん 味だけだと、どうしてもその場だけの感動になってしまいます。「五四〇」という体験を売りたくて、あえてホームページでもレストランなどに卸している販売価格なども載せていません。たとえば「1万円のじゃがいも」といえば、すごく高級そうなじゃがいもの味を想像すると思いますが、「五四〇」はそういうものではありません。どんな味なのか楽しみながらイメージを膨らませられるじゃがいもですね。一つ言えるのは、想像を超えた味わいであることは必至ということです。
偶然から生まれた、「五四〇」のブランド
―― そもそもどのような経緯で、この「五四〇」は生まれたのでしょうか?
本間さん 実は、もともと本間松蔵商店は普通に倶知安町で採れた新じゃがいもなどを卸し販売していました。あるとき、札幌の料亭で料理人をしている(現在は倶知安町の料理店で料理長を務める)村井弘治さんに会いに行くときに手土産として、じゃがいもを持っていくことになったのです。そのときに持って行ったのが、たまたまうちの倉庫で1年以上眠っていたじゃがいもで、少しおっかなびっくり食べてもらったのですが……村井さんが「これは売れる!」と食べた瞬間に言ってくれて。正直それまで私も眠らせていたじゃがいもを食べたことがなかったのですが、収穫したばかりのものと食べ比べてみると確かに甘い。村井さんの後押しもあり、すぐにブランド化させました。
―― まさに奇跡的な流れで「五四〇」が生まれたのですね。村井さんにも、当時のお話しを聞いてもいいでしょうか?
村井さん あのときは本当に目が覚めるようなおいしさで、食べた瞬間に「これは売り物にしたほうがいい!」と本間さんに伝えました。料理人としても、これは味の幅が広がるな、と可能性を感じました。
―― 実際に現在も、村井さんのお店で「五四〇」を使った料理は提供されているのですか?
村井さん はい。いくつか「五四〇」を使用しているお料理はあるのですが、やはり一番素材の味がわかるのが、「五四〇」で作る天ぷらだと思います。あたたかいと口いっぱいに風味が広がるのですが、冷めたあとでも甘さがしっかりと残っていておいしい。しかもしっとりしている食感なので、とても上品な舌触りです。ほかにも、肉じゃがやポテトサラダにも使用していますが、「五四〇」自体が甘いから、特に砂糖を多く使用しなくても甘みが演出され、じゃがいもが主役で華やかな味わいの一品になります。ぜひ食べていただきたいですね。
―― これは、本当にこの場所だけでしか食べられない味わいですね。わざわざ、「五四〇」の料理を食べるためだけにこの地に来たくなりますね。
本間さん ぜひ、「五四〇」が食べられるお店にきたら、そのお店の店員さんにオススメの「五四〇」料理を聞いてみてください。そのコミュニケーションを通して、またひとつ想い出が生まれ、一層忘れられない味になるはずです。


レジクラマガジン編集部オススメ! 北海道旅のモデルルート
新千歳空港から車で2時間。ニセコ方面へ向かい、倶知安町の「炉ばたにせこ浪花亭」で「五四〇」料理を堪能する。その後ニセコ町内に宿泊し、翌日は函館空港を目指す。
(撮影=本田匡、文=編集部)
本間松蔵商店
北海道虻田郡倶知安町南3条西1丁目23
TEL/0152-77-2121
HP/http://www.kutchanjaga.com/540/
アクセス/新千歳空港から車で約2時間
炉ばた にせこ 浪花亭
北海道虻田郡倶知安町字樺山259
TEL/0136-22-3388
営業時間/18:00~22:00
定休日/不定休
HP/http://robata-naniwatei.com/ja/
アクセス/新千歳空港から車で約2時間
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。
詳しくは店舗にご確認ください。