理想の住まいの選び方

理想の住まいの選び方

生活全般において「衣食住」という言葉をよく耳にします。ところが、それらを購入する場面を考えると、住宅は衣食とは決定的に異なる部分があります。それは、価格が高額で何度も買うことができないため、洋服や食品などの買い物と違って「自分に合う商品を選ぶコツ」を経験から体得しにくいということです。ここで、経験がなくとも、納得のいく住まいを選ぶための手順をしっかり押さえておきましょう。

どんな家がいいかではなく、どんな暮らしをしたいかを考えましょう

見た目がいい住まいが自分に合うとは限りません

モデルルームなどを見学し、プロがコーディネートした空間を見て「こういうのが素敵、かっこいい」など、見た目の好みの傾向が見えてきます。そうした経験を重ね、多くの人は見た目から住まいを探し求めるようになります。ただ、住まいは生活を営む箱であり、見た目が好みでも、いざ生活が始まると箱の機能が自分のライフスタイルにフィットしないことも。真に満足度の高い住まいを選ぶには、好みの前に、どんな暮らしをしたいのか考えておくことが大切です。
「したい暮らし」を明確にするためには、自分や家族の平日や休日の過ごし方、普段のライフスタイルをできるだけ具体的に振り返ることからはじめましょう。

家族の未来に起こる変化を想定してみましょう

年月を経ても、満足度の高い住まいかどうか?

一般的に住まいを購入すれば、そこに何年、何十年と住み続けることになり、その間に家族構成やライフスタイルが変化することが十分に考えられます。

◎まずは、直近の10年程度の変化を想定
たとえば、今3歳の幼児の10年後は?中学に入り勉強部屋も必要になっていますよね。子どもが2人に増えていれば、2LDKでは不足に感じ、3LDKの間取りに変える必要もでてくるでしょう。あるいは、10年以内に転職を考えているならば、現在の通勤先への近さよりも多方面への交通利便性を重視したほうがよいかもしれません。

このように年月を経ても、満足度高く暮らせるためには、将来、高い可能性で起こりうる家族や生活の変化を想定することが、後悔のない住まい選びにつながります。

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大切にしたいこと、譲れないものを明確に。理想の暮らしをイメージしましょう

「できたらいいな」をイメージして、無制限に条件を書き出してみる

新たな住まい選びへのきっかけは、多くの場合、現在の暮らしへのちょっとした不満や不安がはじまりです。しかし、どう改善できれば良いのか、マンションか?戸建てか?など、希望条件をまとめたりするのは難しいものです。そんなときは、まずは自分が考える「したい暮らし」をイメージして書き出してみましょう。
「できたらいいな」という住まいで実現したいことをできるだけ具体的に、思いつくままに。考えるときの制限は無用です。

◎書き出し例

  • 通勤は、ドアツードアで1時間以内が希望
  • 週末は、ショッピングや映画に気軽にでかけたい
  • 白くて明るい広々リビングで、家族仲良く過ごしたい
  • 日当たりのよいバルコニーに、洗濯ものを干したい
  • 子どもたちが、元気に走り回れる子育てにいい自然環境はほしい
  • 対面キッチンで、子どもの様子を見ながら家事をしたい
  • 趣味を楽しんだり仕事をするスペースが欲しい
  • お風呂は、ゆったりと広くてサウナ付がいい

etc…

迷った時の基準づくりと、ポイント制の採点

「したい暮らし」から導き出した理想の条件をすべて満たす住まいを選べればベストですが、予算に限りがある場合、それが難しいこともあります。そんなときに重要になるのが、条件の重要度を考えた優先順位づけです。

●迷ったときに立ち返る基準をもつ
条件に優先順位をつけるときは、まずは「絶対に必要なもの」「できればほしいもの」「あったらうれしいもの(なくてもどうにかなる)」くらいの線引きで分類してみましょう。なかでも「絶対に必要なもの」はひとつでも欠けたら見送る前提で考えます。そうすることによって、迷ったときに立ち返ることができる判断基準ができます。

●重要度に応じて比重を変えたポイント制で採点する
また、条件の重要度に応じたポイントをつける方法もあります。たとえば、重要度の高い条件Aを満たした場合には10ポイント、重要度が中程度の条件Bは満たしても5ポイントというように条件によって比重を変えて、全希望条件について候補物件を採点します。「絶対に必要なもの」はすべて満たしたうえで、それ以外の複数の条件について優劣が数値化されるため判断がしやすくなります。

予算と立地や広さという前提。家族構成の未来を想定した間数。リビングの形状やキッチンのタイプ。インテリアをイメージして、床や扉のカラータイプ。設備関係など、考え始めると条件はより具体的になり、膨らんでいきます。選んで絞り込んだ住まいを決める時、最後に納得のいく決断のために資金計画を再考してみましょう。

資金計画をするときも、自分たちのライフスタイルに合わせましょう

ちょっと頑張ることで、高まる満足度を重視する

住まいの購入では、希望物件が見つかった時に少し予算よりオーバーするということにも出会います。少し妥協して予算内の物件にするか、少し予算を頑張って、仕事のやりがいや住まいへの満足度を高めていくか。この「少しの加減」が迷いどころです。子どもが生まれた後も、共働きを続けていくことを決めていれば、多少予算より高くとも、より多くの条件を整えていきたいところです。

家選びは、ライフスタイルを考える機会です。住まいで過ごす時間は大きなもので、予算で妥協し後々後悔するよりも、少しやりくりをして納得して買うことが、人生における誇りや仕事への活力にもなり得ます。

住まいの選択を変えることも考え方のひとつ

住まいの購入で無理をせず、子どもを優先しゆるやかに働くということを大事にするならば、家計にゆとりを持たせ譲れる条件を相談し合うのがいいでしょう。子どもの学費や趣味の充足などより多くのゆとりを考えたい場合は、支払額を固定し現在の生活に近づければ予算は考えやすく、経年で貯蓄に回せるゆとりの幅も広がるでしょう。

将来的な収入の増加を見込んだとしても、予算の考え方に整理がつかず、不安を感じるなら「賃貸で、住み替えを考える」「中古を検討する」「持ち家なら、住み替えずにリフォームをする」「現状を維持する」など、住まいという選択の幅を広げてみることも判断のひとつだといえます。

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希望条件が明確になるほど、理想の家に近づけるでしょう

「したい暮らし」を叶えるための条件とは?

「理想の家」とは、見た目の好みだけでなく、自身や家族の「したい暮らし」が実現でき、将来的な暮らしの変化にも対応できる住まいのことです。したい暮らしを具体的にイメージして、それを実現するために必要な条件を明確にすることが、理想の家に近づく第一歩となります。好み先行で選んだ生活の箱に暮らしを合わせるのでなく、自分たちの暮らしに合った箱を選ぶという思考手順が大切です。
はじめに触れたように、住まい選びは、少ない経験から大きな判断を求められる買い物です。親や、近しい友人の経験者などと話すことも「思考」の整理を助けてくれます。また、住まいのプロに相談することもひとつの手段です。客観的なアドバイスと視野を広げる機会が与えられるので、したい暮らしも整理され、最適な判断をしやすくなるでしょう。