理想の住まいの選び方

マンションの“掘り出し物件”を見つける4つのポイント

不動産コンサルタント・後藤一仁さんが提唱する「60㎡最強説」。あらゆる層に最適な条件であるといえるが、希望にかなう物件を探し出すのは容易ではない。しかし、期待以上の“掘り出し物件”を見つけるために自分の努力でできることはある。そこで今回は、資産価値の落ちにくいエリアを中心に、見極め方や選ぶ際のコツを改めて伺った。

資産価値が落ちにくいエリアとは?

新型コロナウイルス流行以降、不動産はさらなる売り手市場となり価格が高騰したまま物件不足が続く昨今。希望通りの物件をすぐに見つけることはむずかしいともいえる。しかし、正しくエリアを選べば、想像もしなかった物件に出会える可能性もある。選ぶべきは、今後も資産価値が落ちにくい「利便性の高いエリアの物件」だ。

「人口減少や少子高齢化によって街がコンパクトになりつつある現代で、利便性は必須条件です。エリアのイメージや物件の設備だけにとらわれず、本当に価値のある物件を見極めることが重要。利便性とは主に都心までのアクセスの良さや、その街の生活利便性の良さを指しますが、その際に確認すべきポイントがあります。大きく分けて4つ、これを念頭に検討してください」

ポイント① 都心へのアクセス

後藤さんがまず挙げるのは「都心や準都心へのアクセス」だ。

「よく最寄駅から都心にある駅までの“乗車時間”だけで判断する方がいますが、これはおすすめしません。東京駅から◯分など表記ではなく、何キロメートル離れているかという“実際の距離”を確認することも大切です」

というのも、乗車時間だけでは見えない部分に利便性があるからだ。例えば、特急や急行、準急などを利用でき乗車時間が短いとしても、終電がなくなった場合のタクシー代は距離によって大幅に変わってくるだろう。また、万が一大雪や地震などの災害で電車が完全に動かなくなった場合、帰宅難民になってしまうこともある。もし職場までの移動時間を考えて同心円状で範囲を広げていくのであれば、遠方に住んでいる人や外国人でも知っているようなエリアが、資産価値という視点からは有利でおすすめだ。単純に円状に見たところで、東西南北と方向によって「災害リスクや治安、住環境、文化圏などが大きく異なる」点には気をつけてほしい。

ポイント② エリアの持つ魅力(駅力・街力)

ある程度候補エリアを絞ったら、次に確認したいのはその土地が持つ魅力。さまざまなメディアが発表する「住みたい」「住みやすい」駅などを参考にするのは良いが、必ず自身で「駅力」と「街力」を確認すること。特に事前に調べておきたいのは駅周辺の生活利便性だ。

・商業施設やスーパー、商店街

スーパーは2店舗以上、仕事帰りにも寄れるか営業時間もチェック。コンビニも2つ以上あるとよりよい。また生花店やケーキ店などがあるかどうかをチェックすると、その街の「余裕度」がわかり、スーパーの生鮮食品売場のの品ぞろえを見ることで、そのエリアに住む人の生活感・所得層がわかることも。カフェやレストランなどの飲食店があることも必須条件。

・医療機関

風邪など日常的な不調を相談できる1次医療だけでなく、より高い専門性を持つ2次医療、さらには脳卒中や心筋梗塞など緊急時の対応が可能な3次医療まで対応できる病院があるといい。

・教育・文化機関

大学があるエリアは、入れ替わりながらも若い人が常にいるため、街そのものが老化しにくいといえる。図書館、美術館、劇場など文化施設などの充実度も加味したい。

・その他

複数の銀行や郵便局などの金融機関、保育施設、フィットネスジムやスポーツ施設、市区役所に加え、ほどよく自然を感じられる公園などがあるとさらにポイントは高い。

ポイント③ 駅からの距離と住環境

駅から自宅までの距離は5~7分以内が理想的だが、目安は「駅力によって異なる」。目を向けるべきは「同一需給圏」だ。目的の不動産と代替関係が成立するような別の不動産が存在する圏域のことを指す。「同一需給圏が異なれば、住人の所得や文化が変わってきます。家単体で考えるのではなく、環境そのものを選ぶ視点も大切にしてほしい」と後藤さん。

実際、出口によって街の雰囲気が異なる駅は少なくない。同じ駅で同じ距離でも、住みやすさを重視すると細かい分数にこだわり過ぎる必要はないという。

「例えば『準工業地域』内で騒音が懸念されるエリアにある物件までの徒歩3分と、住環境が守られている閑静な『第一種低層住居専用地域』にある物件までの徒歩8分で比べると、必ずしも近さだけが重要ではありません。できれば事前に現地に足を運んで確認していただきたいポイントです」

現地まで行けない場合には、市区町村が公表している「用途地域マップ」を活用するのも手だ。

「住居地域、商業地域、工業地域など、土地をどのように活用するのかを細かく分けているものです。各市区町村のホームページなどで確認できます。例えば、商業地域や工業地域であれば、騒音や危険物の取り扱い、臭気などの可能性があります。住居地域にはパチンコやカラオケ、ホテルなどは建てられない地域もあるなど、ある程度の目安にはなると思います」

リサーチ段階であればGoogleストリートビューで現地の雰囲気を見るのもいいが、実際に購入を検討する段階では内見に行く前に必ず自身の目で現地を確かめてほしい。

ポイント④ マストで確認!「立地適正化計画」

最後にマストで確認すべきポイントとして後藤さんが挙げるのが「立地適正化計画」。高度経済成長期に拡大した街も、現在は高齢化やインフラの老朽化によって経済負担はひっ迫していることがある。このような背景から、郊外にあり、街の中心部に比べて世帯数の少ない(人口密度の低い)地域を、立地適正化計画区域に指定し、住宅や公共施設、医療機関などを街の中心部である「居住誘導区域」として集約する立地適正化計画が進んでいる。

「立地適正化計画に指定された中で『居住誘導区外』とされているエリアは、生活の上で必要な施設が減り、資産価値が下がるのは明らかです。国土交通省のホームページで見ることができますので、必ず確認してください。ネットで『立地適正化計画作成の取組状況』と検索すると見つけやすいと思います」

迷ったらどれを妥協する? 優先すべき緩和ポイント

好条件であればそれなりに価格も上昇する。実際、希望を100パーセントかなえる完璧な物件を見つけ出すのは難しい。マンション選びにおいては「何かを選び、何かを捨てる」ことが重要と後藤さん。その際に妥協するのは、まず「築年数」と「駅からの距離」からだ。

前回の記事でも紹介したように、築年数は住宅の品質を保証する品確法が施行された「2001年以降の物件」から選ぶことをすすめる。

「しかし、なかなか理想の物件が見つからない場合、まずは築年数を1年ずつ下げてみてください。他の条件がおおよそかなっているのであれば、2~3年は許容範囲と考えていいでしょう」

加えて「駅からの距離」。都心の駅力が強い駅と、あまり知られておらず駅力が弱い駅からの分数では意味合いが異なる点を加味した上で、7分までが理想だが、10分までは緩和ポイントと考えて1分ずつ増やして探してみよう。

仲介業者との付き合いも大切

最高の物件を見つけるためには、探し方や見極め方はもちろんだが、紹介してもらう仲介業者との付き合い方も大きなポイントとなるという。その際「物件から入るのはNG」。

「よほど自身で勉強していない限り、物件情報に記載されている不動産会社に連絡して出向くのは避けたほうが無難です。必ずエージェントから入ること。マイナス点も含めて本当のことを話してくれる担当者を1人見つけることが大切です」

相性の合う有能なエージェントに出会うためには、大手不動産会社に加え、地場に強い不動産会社などを複数当たり、直接担当者と会うことが重要だ。チェックしたいのは、売買をメインにしている会社か、宅建を持っている担当者か、経験・知識はあるか。

「いい物件を紹介してもらえるかどうかは、本人の行動次第です。業者も必死でいい物件を探しています。その大切な情報を“一番に教えたい”と思わせる関係性作りこそが、いい物件にたどり着く近道かもしれません。住宅ローンを組めるか、現金を持っているかの根拠をきちんと伝えて、“買えるお客様”として認識してもらうことが大切です。その上で、いい物件が見つかったらすぐに買いたい意志を態度で明確に伝え、感謝の気持ちを表すことも、いい物件を優先的に紹介してもらうコツです」

(2022年8月9日掲載)



お話を伺ったのは●後藤一仁さん

ごとう・かずひと/不動産コンサルタント、株式会社フェスタコーポレーション代表取締役社長。1965年神奈川県生まれ。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、2002年に株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。「不動産を通じて、世の中の一人でも多くの人を幸せにすること」をミッションに掲げ、専門家として、テレビ、雑誌、書籍、ウェブなどあらゆるメディアで活躍中。主な著書に『マンションを買うなら60㎡にしなさい』(ダイヤモンド社)、『東京で家を買うなら』(自由国民社)。
https://mbp-japan.com/tokyo/goto/