マンション選びの「地盤」問題。どこまで気にするべき?

地震大国の日本。特に、2011年の東日本大震災以降は、住まい選びに地震の影響を考える人も多いのではないだろうか。そこで気になるのが「地盤」の問題だ。マンションを選ぶときに、はたして地盤をどこまで気にするべきなのか、住宅評論家の櫻井幸雄さんに伺った。

“強い地盤”とは“硬い地盤”

「地盤の強い場所に住みたい」という声を聞くが、そもそも、強い地盤、弱い(軟弱)地盤とは、どういうものなのだろうか。

「“強い地盤”とは“硬い地盤”ということです。日本の代表的な硬い地盤は2つあります。一つは山地・丘陵地。これは文字どおり山や丘のことで、岩盤も含んでいるので強いのですが、傾斜がきついため住宅地にはあまり向いていません。もう一つは洪積層(こうせきそう)です。これは低地や海底だった場所が隆起した、いわゆる台地です。代表例としては、関東では武蔵野台地、関西では上町台地などがあります。一方で、おもな軟弱地盤が沖積層(ちゅうせきそう)です。これは、川や海沿いなどに広がる低地になります」

大きな地震が起きた場合、硬い地盤と柔らかい地盤では、どのような違いがあるのか。

「主な違いは、地震発生時の揺れ方になります。硬い地盤は柔らかい地盤よりも揺れが穏やかになる。つまり、被害が少なくなります。だからといって、弱い地盤の上に立つマンションが倒壊しやすいわけではありません。地盤の強度に合わせて、地盤改良や杭打ち工事を行っているので、心配はいりません」

軟弱地盤で発生した、トラブルの事例

それでは、軟弱地盤の上に立つマンションで、これまでトラブルが起きたことはないのだろうか。

「賃貸物件では聞いたことがあります。たとえば、不同沈下して廊下にビー玉を置くと、勝手に転がり出すような事例です。しかし、分譲マンション(建物)では、ほぼありません。その理由は、しっかりコストをかけて対策をしているから。ただし、軟弱地盤ゆえに敷地内の駐車場が沈下したり、埋設された水道管が破裂した事例はあります。また、地震による液状化でマンション周辺に深さ1mほどの水が溜まり、1~2週間ボートを利用しないと外出できない例もありました。それでも、マンション自体が傾くことはなく、建物内では普段どおりの生活ができていました」

安心を見分けるカギは、杭を打つ深さ

軟弱地盤への対策にしっかりコストをかけているマンションと、かけていないマンション。消費者がその違いを見分けるカギは、杭を打つ深さにある、と櫻井さんは語る。ここでいう杭とは、建物を支えるために支持地盤まで打ち込む鉄筋コンクリート製の構造材のことだ。

「山地・丘陵地や洪積層といった硬い地盤にあるマンションならば、短い杭打ちで支持層まで届くので、問題はありません。地盤の強度によっては、杭を打たない直接基礎にする場合もあります。一方で、沖積層など軟弱地盤にあるマンションならば、基本的に杭打ちが必要になります。たとえば、軟弱地盤(埋立地)である湾岸地域に立つマンションの杭は50~70mになることが多くなります。この杭の深さは、営業担当者に聞けばすぐにわかります。それでも地盤に対する不安が拭えないなら、最後の安心材料として、デベロッパーの信頼度に頼るべきでしょう。いわゆる財閥系、鉄道会社系、大手商社系など誰もが知る企業が手掛けるマンションは、そもそも施工品質が高いですし、万一欠陥が見つかったとしても、手厚い対応が期待できるからです」

軟弱地盤の物件にもメリットあり

軟弱地盤の上に立つマンションの販売価格には、杭打ち工事など対策費用が上乗せされている。さらに、地震が発生すると、建物に影響はないかもしれないが、周辺が液状化して日常生活が一時的に不便になる可能性もある。やはり、強い地盤の上に立つマンションを選んだほうがいいように思えるが、「一概にはいえない」と櫻井さんは言う。

「たしかに、軟弱地盤のマンションは対策費用が発生しますが、そもそも、強い地盤よりも土地代が安価です。そのため、販売価格はむしろ安いことが多い。それに、このようなマンションの立地は、ほとんどが埋め立て地や川・海沿いといったことで最寄駅まで平坦な地形となるものです。つまり、通勤・通学がしやすい。これに対して、地盤の強いマンションの多くは高台にあるため、最寄り駅を利用するために坂を上り下りしなければなりません。以前は、このような高台にあるマンションは、高級とされていました。しかし最近は、生活のしにくさから敬遠されることも珍しくなくなっています」

地盤が強くて坂が少ないのは、世田谷区と杉並区

たしかに、土地の価格や生活のしやすさを重視するなら、あえて軟弱地盤を選択するという手もある。災害リスクも考慮しつつ、様々な観点から住む土地を検討するのがよさそうだ。ちなみに、都内近郊で強い地盤の地域は、どのあたりになるのか。

「個々の災害リスクについては専門サイトで調べてもらえればと思いますが、地盤の強い代表的な場所としては、多摩ニュータウン(稲城市・多摩市・八王子市・町田市)、港北ニュータウン(横浜市)、城南五山(品川区等)などがあります。ただし、これらは先述のように坂が多い地形です。地盤が強くて、なおかつ坂が少ないとなると、世田谷区や杉並区が挙げられるでしょう」

地盤が強くて坂も少ないとなれば、理想的だ。櫻井さんによると、この2つの地域の物件は、価格高騰の反動などから最近は値が下がりつつあるというから、今が狙い目かもしれない。



■災害リスクについて調べる
「ハザードマップポータルサイト」国土交通省(https://disaportal.gsi.go.jp/)


(2022年10月11日掲載)



お話を伺ったのは●櫻井幸雄さん

さくらい・ゆきお/住宅評論家。人生相談家。1954年生まれ。2000年から住宅評論家としての活動をスタート。年間200物件以上の取材を行う現場主義で、首都圏だけでなく、近畿圏、中部圏、福岡、札幌など全国主要都市部の住宅事情に精通する。住宅評論の第一人者として、新聞、テレビ、雑誌など幅広いメディアで活躍しており、Yahoo!ニュース「個人」オーサー。
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