理想の住まいの選び方

見落としがちな「間取り」のポイント!将来、売却しやすい間取りとは

「理想の間取り」を見つけるには、どうしたらいいのか。60㎡台からファミリー向けに多い70㎡台の物件を対象に、図面にある情報の読み解き方から、見落としがちなポイント、将来売却しやすい間取りまで、不動産コンサルタントの後藤一仁さんが解説します。

おススメの間取りは、この2つ!

立地だけでなく、実は間取りも将来の売却にしやすさにつながる。「理想的な物件」として後藤さんが挙げるのは「センターイン」型と「ワイドスパン」型だ。

●「センターイン」型

玄関から入ると左右にエリアが分かれている間取り。廊下面積が比較的少なく、その分居室が広く設計され、収納が多く設けられていることが多い。

「玄関から入った時に居住スペースが見えず、ゆったりした空間を保てます。図面の上下両サイドにバルコニーを設置することもできるため、開放感がありプライバシー面でも安心できるといえるでしょう」

●「ワイドスパン」型

建物の正面の幅(間口)が約8.3m以上あり、横に広いタイプ。センターイン型より、廊下面積を少なくすることができ、その分居住スペースを広く取れることが特徴だ。家の中心にリビングを設置することで、家族のコミュニケーションにも有効。一部の居室が廊下から直接入れる仕様で独立しているパターンは、その遮音性の高さを活かして仕事部屋にすることもできる。

おススメとはいえ、いずれにしても気をつけなければいけない点がある。

「特に採光面では注意が必要です。まずは窓を確認してください。柱型が窓を塞いでいたり、大きな梁が居室の天井を分けるように下がっていたりすると、光や照明を遮り、必要な場所に十分な明るさを保てないこともあります。また、窓がない居室の場合は、引き戸を開けた状態で、隣接するリビングダイニングを通じての間接採光によって外光を取り入れることになりますので、引き戸を閉めた時に照明をつけないと真っ暗になります」

日本に多い「田の字」型。選ぶときはココをチェック

●「田の字」型

一方で、実際日本のマンションで最も多いのは「田の字」型。その名の通り、田の字でエリアが大きく4つに分かれているパターンだ。各部屋が独立しており、音が気になりにくいのがメリット。物件数が多い分、選択肢も広がるが注意も必要だ。

「このパターンの場合、田の時の上の部分にあたる共用廊下に面する2つの部屋に注目してください。窓のすぐ前の共用廊下は人が通るため、窓があっても開けづらい、常にカーテンを閉めたままにせざるを得ない、と閉塞感が出る可能性があります。足音や話し声が気になる人もいるでしょう。選べるのであればおススメは角部屋。多少価格は上がるかもしれませんが、物件によっては周囲にバルコニーが設置されているものもあり、採光面や風通しの面でも快適です」

●アルコーブ

玄関部分を後退させて、くぼみのような空間を確保。部屋の外を人が通ることに変わりはないが、玄関を開けた際のプライバシーを守る点では有用。

●ポーチ

玄関前に門扉があるパターン。人が通らないため安全で音も気になりづらい。角部屋の場合は、よりその恩恵を受けられることが多い。

●吹き抜け

共用廊下と共用廊下に接する居室との間が吹き抜け状になっているため、廊下に面する部屋のプライバシーが守られやすい。

見落としがちな、4つのポイント

将来も売りやすい物件を選ぶには、図面を見る目が必要だ。広さや間取りの理想に捉われすぎず、実際に住んだ際の住みやすさを想像してほしい。特に見落としがちな、4つのポイントがある。

【ポイント1】間取りプランと住戸の位置

まずはライフスタイルなどから、どのタイプの間取りを選ぶかを決めよう。60~70㎡台であれば2LDKから3LDKあたりが選択肢に入るだろうが、エリアにおける需要の高さなど(エリアの「最有効使用(※)」)を考慮すると、後々売る時にも都合がいい。

(※)その場所で最も人気があり、需要の多い(その場所で最も売りやすく、貸しやすい)使用方法。

また、物件を決める際には、間取図だけでなく、各階平面図で「自分の検討している住戸がマンション内のどこにあるか」を確認することも重要。例えば、エレベーターホールの前は人が集まりやすく、音が気になる人やプライバシーを重視する人は避けた方が無難だろう。

【ポイント2】柱と梁の出っ張りの有無

柱や梁の出っ張りは、できれば詳細な数値が記された新築分譲時の平面図で確認してほしい。柱型が窓を塞いでいたり、梁が居室の天井を分断するように下がっていたりすると、光が入りづらく、記載された面積よりも狭く、暗く感じることがある。梁型は平面図のCH(Ceiling Hight:床から天井までの高さ)で確認。例えば、部屋全体のCHが2400mmだとすると「CH-1900」と記載されている部分は他よりも低く、梁などがあり、天井高が低くなっている可能性が高い。家具を設置しにくく、人によっては圧迫感じる。将来の売却時にそこがネックになることも起こりえる。

「平面図を見る時は、奥行きや幅など広さに目が向きがちですが、高さを記す数値も見落とさないようにしてください」

【ポイント3】収納がそれぞれの場所にあるか

「収納は居室だけではなく、広くなくてもいいのでリビングダイニング、サニタリー、廊下、キッチンと、それぞれに収納があることが理想」と後藤さん。玄関にシューズインクローゼットがある場合も、できればもう1つ、日常的に使う靴入れなどの収納場所を確保したい。前者は、例えばスーツケースやキャンプ用品など部屋に持ち込みたくない大きな荷物を、後者には、帰宅してすぐに履き替えられる靴や傘置きとして活用するといいだろう。また、キッチンにパントリー(食品庫みたいなもの)があると便利で、将来売ったり、貸したりする時も喜ばれることが多い。逆に、寝室のクローゼットは必ずしも「ウォークイン」である必要はない。

【ポイント4】動線と住みやすさ

最近の物件は、動線まで考えられて設計されているものが多く、過剰に気にする必要はないが、家族のライフスタイルを基準に考えるといい。一点注意すべき例を挙げると「洗面台の高さ」。

「家族全員が毎日使うものなので、合わないと腰痛を発症するなど、健康に影響を及ぼしかねません。できれば、背の高い人に合わせることをおすすめします」

また、自分が購入しようとしている住戸の間取りだけを見るのではなく、不動産会社に依頼して、マンション全体の各階平面図と、検討している住戸の上下左右住戸の間取図を確認しておくことも重要だ。

「例えば、自室のメインベッドルームの隣が隣接住戸のリビングであると、テレビの音や人の声が気になることがあるかもしれません。加えて、東南・南西の角など、日照時間が長い方位の住戸を検討したり、共用廊下に面する居室がなく、すべての居室が外部に面している住戸も人気です。また、図面で“FIX”と記載されている窓は開け閉めができないものなので、注意が必要です」

ポイントは可変性!「資産性を保ちやすい間取り」とは

価値の落ちにくい物件の特徴は「自分だけでなく、誰もがほしいと思える間取り」と後藤さんは言う。

「例えば、3LDKとしても2LDKとしても使える可変性のある間取りです。3LDKであっても必ず正形の6帖以上の居室が1つ以上はあること。サイドテーブルや窓からの距離、クローゼットのドアの開閉などを考慮した際に、シングルベッドを2つ置ける最低の広さです。ただし、柱型が大きく出ていたり、変形した6帖だったりすると置けない場合もありますので、注意が必要です。ご自身はもちろんですが、その後住む人にとっても使いやすい間取りを心がけてください。また、最近は和室の需要は、あまり高くありません。3LDKまでであれば、すべて洋室でいいと思います」

また、不動産系のサイトなどで条件検索を試してみるのも一手だ。ある程度そのエリアで需要の高い条件項目を推しはかることができるため、参考にすることができる。現状のライフスタイル、家族構成を加味しながらも、ある程度普遍的にレイアウト可能なものを見つけることがよさそうだ。



お話を伺ったのは●後藤一仁さん

ごとう・かずひと/不動産コンサルタント、株式会社フェスタコーポレーション代表取締役社長。
1965年神奈川県生まれ。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、2002年に株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。「不動産を通じて、世の中の一人でも多くの人を幸せにすること」をミッションに掲げ、専門家として、テレビ、雑誌、書籍、ウェブなどあらゆるメディアで活躍中。主な著書に『マンションを買うなら60㎡にしなさい』(ダイヤモンド社)、『東京で家を買うなら』(自由国民社)。
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