貯める・増やす

人気FPが教える「共働き夫婦の賢い貯蓄術」

パートナーともに働いているのになかなか家計にゆとりがない、余裕を感じられない…そんな悩みを抱える家庭は少なくない。DINKSや子どもを持つ家庭と、最近は家族の形もそれぞれで、お財布事情もさまざまだ。まずは「貯蓄できない問題点を見つけ、状況に合った仕組みを作ることが大切」と言うのはファイナンシャル・プランナーの丸山晴美さん。幾多の相談を受けた経験をもとに、貯蓄にあたって考えるべきポイントを教えていただいた。

なぜ、家計の収入は増えても、貯まりにくいのか?

働き方が多様化し、パートナーとともに仕事をする家庭も一般的になってきた現代。収入源はひとつでなく、財布事情も昔とは大きく変わっている。その背景には、年代だけでなく結婚の年齢があり、貯蓄できない原因の一つにもなっていると丸山さんは言う。

「性別を問わず社会で活躍する時代となり、結婚の平均年齢が高くなっています。長い間、稼いだお金は“自分のお金”という生活を送っている方が多いため、結婚してから急に“世帯のお金”をベースにした考え方に繋がりづらいのかもしれません」

本来であれば2つの家計が合算され、貯蓄はしやすいとも考えられる。しかし、新たに生まれた金銭的余裕は、自由を謳歌してきた人たちにとっては「より好きなことに使える」と別のベクトルになりがちだ。お金を使いたい気持ちをグッとこらえ、家族としてのライフイベントを視野に入れて、貯蓄を考えることが重要になってくる。

出産で変わる家計の流れ。収入減に対応するには?

家族が増えると、車や住宅の購入、教育費など「高額なライフイベント」が増える。産休から育休の数年間は、家計の収入減もあるだろう。収入は減りながらも、家計の負担は増える一方だが、焦って収入を増やすことばかりにとらわれないでほしいと丸山さんは言う。

「家計を保つには、お金を稼ぐ以外の方法もあります。節約をするだけでも十分に意義はあります」

例えば、リボ払いにしていたものを一括にしたり、通信費や保険、サブスクなどを見直したりするだけでも、十分に収入減に対処できる。

共通財布?別財布? お金が貯まりやすい家計管理法は

「貯蓄できない」と感じているのであれば、まずはこの財布事情から見直したい。丸山さんによると、現在の家計管理方法は、大きく4タイプに分類できる。

■A「共通財布」
お互いの収入をすべて1つの口座で管理

「貯蓄に対して意識の高いカップルに多く見られます。最もお金は貯まりやすいですが、双方の理解が必要。自分で管理したい人には向かず、抵抗感を持つ人はいるでしょう。共通の目的を持つと非常に効率的に貯蓄ができるパターンです」

■B「一部共通財布」
生活費の「一部」を共通口座に

「同棲を経て結婚する夫婦をはじめ、DINKSではよくあるケース。定期的に共通財布に15万円など定額を入れれば残りは自分で使えるため、自由度は高いのですが、一方の収入に変動があった際に、もめる原因になることも。妊娠・出産時などを含め、収入が下がった場合の分担割合などを事前に2人で決めておくといいでしょう」

■C「別財布」
お互いの収入はそれぞれで管理

「自立している人が増えているため、各自で管理する感覚が強くなっていることも事実です。新しい形ではありますが“貯蓄”の観点から見ると、残念ながらあまり効率的ではありません。いざお金が必要となったときに、お互いの資産を探ったり、あてにするようなケースもあります。もし今後、家族で成し遂げたい夢や目標があれば、一度収入と支出を洗い出して、家計と貯蓄を見直すといいでしょう」

■D「1財布&1貯蓄」
「支払い」と「貯蓄」を別にする

「例えば、家賃や食費など生活費の支払いは、主となる人の収入から支払い、貯蓄のみを一方が担うものです。契約状態が異なるなど、比較的収入差のある夫婦に見られます。出産を考えるDINKSなど、長いスパンでライフスタイルを考える2人には効率的な手法だと思います」(注1)

貯まりやすい順は、A「共通財布」→D「1財布&1貯蓄」→B「一部共通財布」→C「別財布」。どれがよくて、どれが悪いというものではないが、「貯蓄」を考えるのであれば、これを機会に一度見直してみるのもいいだろう。

(注1)貯蓄用の口座をどちらか一方にする際には注意が必要だ。二人で貯蓄しても、税税上は一方のお金になるため、離婚や相続の際に思わぬトラブルになることもある。

先取り運用が明暗をわける

気になるのは、毎月の貯蓄額。世帯収入は人によるため一概には言えないが「DINKSなら家計の3割。子どもを持つ家庭であれば1〜2割を目安に」とのこと。もちろん余裕があるときは、より貯蓄できるに越したことはない。

その際、家族の形態に関わらず念頭に置いてほしいのは「先取りの運用」だ。

「お金が増えやすい仕組みを作ることが重要です。銀行の預金や学資保険は、利回りが低く、“財産を増やす”といった点に関しては、さほどメリットがないかもしれません。安心できる定期的な財形に加えて、iDeCo(イデコ)やつみたてNISA(ニーサ)など長期に運用でき、節税にもなる制度を組み合わせるといいでしょう」

例えば、iDeCoは運用手数料を考慮すると、月1万5000円〜2万円がおすすめ。手堅く貯蓄するのであれば、貯蓄金額の半分程度を財形に。よりアクティブに資産を増やす状況であれば投資の比率を増やすのが賢いだろう。現在の収入や今後のライフプランに合わせて、バランスを調整してほしい。今後、困らないことはもちろん、何か目標ができたときのため、いま考えられる範囲で見直し、少しでも資産を増やせる仕組みを取り入れることが重要だ。

「暮らしのお金」コラム一覧はこちら

「マネー・暮らし」の優待はこちら

お話を聞いたのは●丸山 晴美さん(ファイナンシャル・プランナー/節約アドバイザー)

新潟県出身。22歳で節約に目覚め4年間で600万円以上を貯金し話題に。その後、26歳で節約アドバイザーとして独立。同年、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。メディアや講演で節約術やお金の管理・運用のアドバイスを展開。主な著書に『節約家計ノート』(東京新聞)、『シングルママの「お金に困らない本」』(徳間書店)など。
https://www.maruyama-harumi.com/