どんどん増えていく器を上手に使う工夫を!
もともと器好きな上、仕事柄、調理したものを自分で盛り付け、撮影することも多いため、2人暮らしにしては器が多いという白央さん。作家ものにひとめ惚れしたり、旅先で小皿を見つけたりして、次第に増えていった。
白央さんの家では、日常使いの器はシンク下の引き出しに収納、来客用、撮影用はリビングの戸棚へ入れている。
「ひとつの食器棚に全部入れるというのも考えられると思うんですが、ぎゅうぎゅう入れるのもどうかと。使う頻度が多い日常使いはキッチンに、そうじゃないものは分散させてもいいと思うんです」
実は寝室にも棚があるという。
「夏になるとガラスものだとか、冬は土鍋なんかを、衣替えのようにリビングの戸棚へと移し替えます。そのときに戸棚の奥で半年使わないままだったものを手前に出したりもします。手前にあれば、手に取りやすくなりますから」
そうしてローテーションしながら、まんべんなく器を使う工夫をしている。


“書類入れ”だった小さなタンスをカトラリー入れに
電子レンジや炊飯器が置かれたキッチンの棚には、アンティークショップで買ったかわいいタンスが置かれている。
「もともとは書類などを入れていたんです。でも、ここに置いてカトラリーとかを入れるのにちょうどいいんじゃないかって、連れ合いがアイデアを出してくれて」
一段目に箸、二段目にフォークやナイフ、三段目に木製のさじや陶器製の小さじなど、四段目には趣味で買い集めている箸置きや豆皿、一番下には小湯吞が。こんな小さなタンスがキッチンにあるだけで、料理好き、器好きはワクワクしてしまう。
「積み重ねが楽なスタッキング皿やお手入れが楽な皿がいい人もいるでしょうが、僕は器で遊びたい。器はどんどん増えてしまいますね」
とはいえ、買ったはいいけど結局使いこなせない、ピンとこないものもあるという。
「収納スペースも限られていますし、そういうのは、うちに飲みに来る友達に譲ったり、若い料理家さんにあげたりすることも多いですね」



試したい食材は、目につくところに出しておく

いただき物のスパイスや調味料、缶詰、ちょっと珍しいアジア食材などが集まりがちだという白央さん。
「しまい込むって、ストレスになるんですよね。食に関わる仕事をしているのに、使い切っていないっていう罪悪感もあって」
そういうものが残っていないか、月に一度ぐらいチェックする。そして、試したいものを小さなザルにまとめて目につくところに置いておき、献立が浮かばないときには、ここから使うようにしているという。
でも、ちょっと使っておいしいと思っても、結局使い切れないことってないのだろうか?
「うちは食いしん坊のお客さんが多いから、そういうときに出してみるんです。食に興味がある人に、これ、どうしたらいいかな? と聞くと、ありがたいことに、こうやって使ったら、というアイデアをどんどんくれるんです」
重たい鍋は、下にしまう

大きな鍋や重たい鍋は、ダイニングの棚に置かれている。
白央さんは1994年、青森で三陸はるか沖地震に遭遇したとき、テレビが宙を飛ぶのを目の当たりにした。
「あれ以来、重たいものは絶対に下に置くし、割れて困るものは扉のある棚にしまうようになりました」
若い頃はスペアリブや肉の塊をじっくり煮込むことも多かったが、最近ではほとんど作らなくなったし、豆を煮ることもめったにない。次第に鋳物の鍋を使う頻度が低くなって、キッチンの動線の中になくてもいい、と割り切った。
「今後は軽いものにシフトチェンジしようと思っています」
男性であっても、年齢とともに筋力、握力が低下する。重い鍋を落として怪我するリスクは避けたいという。
「鍋が重たいっていうだけで、料理から離れてしまう人もいますからね」
無理をせず、負担のかからないことを模索するのも、キッチンとの上手な付き合い方だ。

はくおう・あつし/フードライター、コラムニスト。暮らしと食、郷土料理やローカルフードなどをライフワークとする。著書に『はじめての胃もたれ 食とココロの更新記』(太田出版)、『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)ほか。
X(旧Twitter) @hakuo416
取材・文●戸羽 昭子 撮影●米谷 享(2024年11月掲載)
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