インパクトある香りが、すっきりした目覚めを運ぶ
日本茶のなかで、もっともポピュラーな品種といえば“やぶきた”。全国の茶畑の約8割を占めるという一大品種である。けれども日本茶の世界は幅広く、現在、品種の数は100以上にのぼる。多彩な品種のなかから、酔い覚ましに向くお茶を選ぶとしたら、どんなお茶がよいのだろう。
『青鶴茶舗』のフローランさんが選んだのは、「印雑(いんざつ)131」という変わった名前の品種だ。「独特な香りで、頭がシャキッとしますよ」とのとおり、ジャスミンやすずらんなど、花のような香りが立ち、かなり個性的。口のなかには心地よい渋みがすっと広がり、確かに頭が冴えわたる。紅茶のようなニュアンスも感じられ、インパクトが強いのも特徴だ。
そもそも印雑とは、“インド雑種”の略。1920年代にインドから導入されたアッサム種と日本の茶樹を交配して誕生した品種である。つまり、インド紅茶の血を引くお茶というわけだ。
「誕生したのは1940年代。有馬利治という先生が、西洋料理が浸透しつつあった日本の食生活の未来に、風味の強いお茶が必要になるだろうと、強い信念をもって開発したお茶です。けれども当時は、日本茶らしからぬ個性的な香りが好まれなかったそうで、今となっては希少品種です」
露地栽培で茶葉の香りを生かしたオリジナル商品


ところでこのお茶は、何煎くらいまでおいしく味わえるのだろう。
「たいがいのお茶はきちんと淹れれば3煎くらいまで楽しめますが、印雑131は5煎目くらいまでおいしく飲めますよ」とフローランさん。
前提は、“きちんと”煎れること。いい茶葉を買ったのに家で淹れてもおいしくない……という場合は、たいてい使う茶葉の量が少ないことが原因とか。印雑131の場合は、70mlのお湯に対して茶葉は4gが目安。お湯の温度も大事で、高すぎると渋みが強く出てしまうので注意が必要だ。一煎目は約70℃のお湯を注ぎ、待つこと1分弱。パッケージには淹れ方の目安が記載されているので、そのとおりに淹れれば、自画自賛したくなるほどおいしいお茶を自宅で堪能できる。
印雑131のおもしろいところは、煎を重ねるごとに香りがいっそう強くなること。飲むほどに頭が冴えわたるので、酔い覚ましのほか、資格試験の勉強中にもぴったりと合うだろう。

お話を聞いたのは●フローラン・ヴェーグさん
フランス出身。2005年、25歳で来日。日本茶に興味を持ち、2009年、フランス人初となる日本茶インストラクターの資格を取得。4年間、老舗日本茶専門店『丸山園本店』にて販売に従事。2011年にオンラインで『青鶴茶舗』をスタートさせ、2018年に実店舗をオープンする。全国から厳選したシングルオリジンの茶葉、作家ものの茶器を販売する。

取材・文●安井洋子 撮影●森本真哉(2024年7月掲載)
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