涼感を誘う、色ガラスの饒舌
ガラス工芸作家の柿﨑均さんは1989年にスウェーデンへ渡り、その後、アメリカ、フランス、イタリアなどで活動を展開。2004年に帰国後、北海道江別市の歴史ある建物にアトリエを構えた。数々の土地を訪れてきた経歴の持ち主だからだろうか。5色のグラスは抜けるような明るさと深みを湛え、どこか優しさに満ちている。長く使い続けたいと思わせる、飽きのこないフォルムは、量産品には決してないものだ。
「飲み物に使うだけでなく、冷たい料理を盛ってもいい。たっぷり注いだお水がご馳走になるような、口あたりのいいグラスです。こんなカラフルなグラスで、夏の暑さを乗り切っていただきたいですね」とは、『銀座日々』の根本美恵子さん。
好きな色を選んでマイグラスとして日常で楽しむのもいいし、その日の気分で色を替えるのもいい。水やジュースだけでなく、氷を浮かべた冷酒やスパークリングワイン、素麺のつゆ入れや冷製スープにも活躍しそうだ。


光で変化する美しいグラデーションを楽しむ
光を敏感に受け止めるカラー・グラスの美しさは、シンプルでスタイリッシュな空間によく映える。また、風が心地よいテラスなどでのひと時にも、その魅力はいっそう増すことだろう。陽光にきらめく透明から不透明への美しいグラデーション、色の濃淡。プラスチック製では味わえない温もりのある触り心地は、手づくりのガラス特有のものだ。
柿﨑さんの師匠であるというアメリカのガラス作家、ダン・デイリー氏の言葉が、氏のブログにあった。曰く、「玄人うけを狙ってはいけない。わかる人だけわかってくれればいいなんて考えて、モノを作ってはいけない。小さな子どもやお年寄り、ふだん美術品に特別興味を持たない人にも、そばへ近寄って来てもらえるようなものを作りたい」
丁寧な手仕事によって作られた、シンプルなカラー・グラスを眺めていると、その言葉の意味が自然と腑に落ちる。何年も使い飽きない器の本質は、案外そんなところにあるのかもしれない。

お話を聞いたのは●根本美恵子さん
ねもと・みえこ/東京出身。ギャラリー勤務を経て、2004年エポカザショップ銀座『日々』のスタートともにコーディネーターを勤める。2017年同店閉店後、2018年に今岡美樹さんと場所を新たに『銀座日々』として再スタートした。

『銀座日々』
東京都中央区銀座3-8-15 APA銀座中央ビル3階
TEL:03-3564-1221
営業時間:11時~18時
休:木曜
https://ginza-nichinichi.co.jp/
取材・文●瀬川 慧 撮影●宮濱祐美子(2024年7月掲載)
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