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【整える日本茶】すっきりとした朝の目覚めを促す「蒼風(そうふう)」

ふだん、何気なく飲んでいる日本茶には、150を超える品種があることをご存じだろうか。品種の違いにひとたび目を向けてみると、好みやシーンによって選ぶ楽しみが一気に広がるのもお茶の魅力。日本茶に魅かれ、東京・谷中に専門店『青鶴茶舗』を開いたフランス人、フローラン・ヴェーグさんに、朝の目覚めにぴったりなお茶を選んでもらった。

爽快な目覚めを呼ぶ“蒼風”の清々しい一杯

「日本の飲食店ではよく、水と同じようにお茶が無料で提供されますよね。でも本来、日本茶は嗜好品。とても奥深く、興味深い世界です。品種だけでも優に150を超え、それぞれ味わいや香りに違いがあるのですから」

そう語るフローラン・ヴェーグさんが自店の『青鶴茶舗』で扱うのは、シングルオリジン(ひとつの農園でつくられた、単一品種の茶葉)のみ。今、一般的に流通して、よく目にする茶葉の多くは、複数の農園の茶葉をブレンドしたものだ。それは、品質の均一化や安定供給という点では理にかなっているが、生産者や品種の個性は見えなくなってしまう一面がある。その点、素性のはっきりしたシングルオリジンならば、品種の持ち味を明確に楽しめるというわけだ。品種にスポットを当ててお茶を選ぶことによって、それまで何気なく飲んでいた日本茶の世界が劇的に変わるというから実に興味深い。

「飲みたいシーンに合わせて品種を選ぶのも楽しいですよ」とフローランさん。たとえば、朝。すっきりとした目覚めを促すために飲むなら、と選んでくれたのは「蒼風」という品種。名前からしてなんとも清々しい。

「蒼風」は、さわやかな香りが特徴。渋みは少なく、余韻にほどよい旨味と甘みがある。
静岡市のはずれにある内牧という地区で栽培された「蒼風」40g 990円。防湿性に優れたアルミの袋に詰められている。

「蒼風」は、日本茶の品種のなかで最もポピュラーな“やぶきた”とマイナーな“印雑131”という品種の交配種で、香りに特徴がある。

「青々しく爽快感があるので、目覚めの一杯にぴったりです。口に含むと、ジャスミンやマスカットのような華やかな香りが広がり、朝から気分が和らぎますよ」

フローランさんが店に並べるのは、自ら産地へ赴いて仕入れてきた上質な茶葉で、時期によって扱う生産者や産地は変わるそう。ワインと同様、同じ品種でも産地によって味わいが異なるのもまた、日本茶の魅力のひとつ。今回、紹介している「蒼風」は、お茶処静岡県の内牧という産地のものだ。

「ここの「蒼風」はほどよい旨味があり、柔らかな味わいを持ち併せています」とのとおり、ほんのりとだしのような淡い旨味と甘みも感じられ、口にした時の満足度が高い。朝食を軽めに済ませて、お茶をじっくりと味わいたくなる。朝にふさわしい一杯のお茶でスタートを切れば、きっと気分のいい1日が送れるだろう。

お話を聞いたのは●フローラン・ヴェーグさん

フランス出身。2005年、25歳で来日。日本茶に興味を持ち、2009年、フランス人初となる日本茶インストラクターの資格を取得。4年間、老舗日本茶専門店『丸山園本店』にて販売に従事。2018年に『青鶴茶舗』をオープンする。全国から厳選したシングルオリジンの茶葉、作家ものの急須を販売する。

『青鶴茶舗』

東京都台東区谷中3-14-6
TEL:03-5842-1315
営業時間:11時~17時30分
休:水曜
https://www.thes-du-japon.com

取材・文●安井洋子 撮影●森本真哉(2024年6月掲載)
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