週末のランチにジューシーなペット・ナットでテラス飲み
世界中でムーブメントを巻き起こしているナチュラルワイン。その中でも、もっとも注目を集めているのが、スパークリングワインの一種“ペット・ナット”だ。フランス語の“ペティアン・ナチュレル”を略した言葉で、直訳すると“自然な微発泡ワイン”。ナチュラルワインの生産者が田舎方式といわれる製法で造る、発泡性の弱いスパークリングワインのことである。
「同じスパークリングワインでも、たとえばシャンパーニュは背筋を伸ばして飲みたくなるような気品の高さが魅力です。それに比べてペット・ナットは口当たりが柔らかく、飲み口が軽やか。気取らずに飲める、最高に楽しいワインです」
そう語るのは、ナチュラルワイン専門店『トロワザムール』の下村空さん。公園でペット・ナットを飲んで過ごす休日が好きだという下村さんが薦めてくれたのは、爽やかな風に吹かれながらテラス飲みしたくなるこの一本。スペインはカタルーニャ地方の蔵元、アモール・ペル・ラ・テラが造る「エル・トレンタ・デル・ブルイチャ」だ。


自分たちのためではなく、農家のためにワインを醸している
「とてもフレッシュな味わいで、今日は天気もいいしテラスで飲んじゃおうかな、と思い立ったときにうってつけ。白桃やトロピカルフルーツのような果実味があり、心地よい酸味も。ほろ苦い余韻とともに、旨味がじゅわっと広がります」
味わいもさることながら、造り手のコンセプトにも惹かれるものがある。下村さんによると、蔵元名のアモール・ペル・ラ・テラとは、“地球のために愛を”という意味。造り手のサルバドールさんを筆頭に、カタルーニャのワインに携わる3人組で立ち上げたワイナリーで、真っ当なぶどう農家たちのためにワインを造っているのだとか。
「どんなに環境へ配慮してぶどうを栽培しても、農家が大手メーカーに売る道しかなかったら、大量生産のワインに混ぜられて名も無きものになってしまいます。そこで、サルバドールさんたちが責任を持って農家からぶどうを預かり、自分たちのためではなく、農家のためにワインを醸しているんです」
エチケットには、ぶどう農家から、ぶどうを運ぶ人、造る人まで、ワインになるまでの道筋が文字と絵で描かれている。造り手たちの想いがたっぷりつまったワインは、最上の話の種。爽やかな風が心地いいテラスで、ワイン談義に花を咲かなせながら飲むのも楽しいだろう。

お話を聞いたのは●下村 空さん
しもむら・そら/大学時代にフランスへ語学留学した際、ワインのある暮らしや深遠なる味わいに魅了される。大学卒業後、ナチュラルワインの黎明期から輸入を開始したインポーターBMOに入社。直営のワインショップ『トロワザムール』にて販売に従事し、ナチュラルワインの魅力を広めている。

取材・文●安井洋子 撮影●平松唯加子(2024年6月掲載)
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