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孫が笑顔に! 進化が止まらない「流しそうめん機」で夏の思い出を!

一説によると、昭和30年の夏に宮崎県高千穂町で始まったとされる「流しそうめん」。最近は子どもでも調理が楽しめるクッキングトイのひとつとして、年々進化を遂げているのをご存じだろうか。独創的な流しそうめん機を開発し続けているタカラトミーアーツに最新情報を聞いた。

全長約4mにも! ウォータースライダーのようなスピード感と迫力 !

暑い夏、半分に割った青竹で水路を作り、冷たい水とともにそうめんを流して楽しむ「流しそうめん」。お箸で見事キャッチできたり、取りそこねたりしながら大勢でワイワイ囲んで楽しめる、まさに夏の風物詩だ。

子どもはもちろん、大人も夢中にしてしまう不思議な魅力の流しそうめんだが、楽しむための場所と条件が限られるのが悩みの種だ。そうめんが流れる水路は、上流から常に水が流れ続け、下流では水が溢れないように水が排出され続けなければいけない。これを実現するには、川や大きな庭など、新鮮な水を供給し続けられる広いスペースが必要だ。

そんな中、憧れの流しそうめんをマンションや公園など、場所を選ばずに実現したのがクッキングトイ(調理の過程を楽しむ玩具)だ。タカラトミーアーツが発売する「そうめんスライダー」は、まるでミニチュアのウォータースライダーのような佇まいで、最上部からそうめんを投入すると、勢いよく流れる水とともに、そうめんがカーブや直線を軽快に滑走する。うっかりしていると、取りそこねてしまうスピード感は、まさに本格的な流しそうめん。最下部にある水受けからは、最上部まで水がモーターで吸い上げられ、見事に水が循環するというシステムだ。

「ベーシックタイプ」の横幅は約70cmほどで、ダイニングテーブルの上でも十分に楽しめ、複数人で囲みながらそうめんをすくえる大きさだ。「ビッグストリーム そうめんスライダー カスタムベーシック」は別売りのレールセットを追加することで全長4m程度までコースレイアウトをカスタマイズすることもでき、人数やスペースに合わせて、迫力のある巨大流しそうめんが楽しめる。

タカラトミーアーツが発売するウォータースライダー式流しそうめん「ビッグストリーム そうめんスライダー カスタムベーシック」。写真のように別売りのレールセットを追加すれば超巨大コースもカスタムできる。
「ビッグストリーム そうめんスライダー カスタムベーシック」は、単1型アルカリ乾電池3個で約3時間の稼働が可能。電源が不要なため、マンションの室内や庭、ベランダなどどこでもできる。
パーツを組み立て、水を供給し電源を入れるだけで「流しそうめん」が楽しめる。親族や友人の集まりを盛り上げること、請け合いだ。

孫が自宅に遊びに来るようになった!

タカラトミーアーツの開発担当者、平林千明さんは「年齢に関係なくそうめんを一緒に楽しめることが『そうめんスライダー』の醍醐味」と話す。

「小学校低学年のお子さまがいるご家庭で多くご購入いただいています。『そうめんスライダー』を買ってから、お孫さんが自宅へ遊びに来てくれるようになったという方もいらっしゃいます。ご家族や仲間同士で、ああでもないこうでもないと言いながら一緒にコースを組み立てることで自然なコミュニケーションが生まれますし、完成して麺が流れたときの喜びや達成感は格別だと思います」

さらに、「そうめんスライダー」のリアルなホビーとしての魅力にも注目してほしいと続ける平林さん。「ビッグストリーム そうめんスライダー カスタムベーシック」の最上部に鎮座する家形のオブジェは、「東京サマーランド」の人気アトラクション「バッシャハウス」をイメージしたもので、水を噴射しながら勢いよく回転し水の循環をサポート。ウォータースライダーのようなアトラクション感を盛り上げくれる。他にも、10種類以上発売されている「そうめんスライダー」シリーズには、4色LEDで幻想的にライトアップされる噴水がある「メガラスベガス」や、南国ムード満載のギミックが特徴の「ビッグハワイ」など、モデルごとに個性が光るギミックが満載だ。

水と麺が流れることで、くるくると廻る滑車など目でも楽しめるギミックが盛り込まれている(写真はそうめんスライダー ビッグハワイ)。
噴射された水の勢いでハイビスカスの花びらがパタパタと蝶の羽のように動く(写真はそうめんスライダー ビッグハワイ)。

楽しく、おいしく、世代を超えたコミュニケーションができる!

タカラトミーアーツが初めて流しそうめんのクッキングトイを発売したのは2013年のこと。当初は、卓上サイズの円形プールの中で水とともに麺が回転するという仕組みのものだった。

「予想以上に好評をいただいたのですが、せっかくならクッキングトイらしい大胆なアイデアを盛り込みたくて考えたのが、ウォータースライダー型の流しそうめんでした」と、平林さん。ウォータースライダー型の流しそうめんを作りたい、そんな平林さんの熱意に動かされたのが、タカラトミーアーツのパートナー会社で長年クッキングトイの制作に関わってきた玩具開発者の大江繁夫さんだった。まずは大江さんが方眼紙で試作品を制作するところからスタートし、商品の実現化に向けて試作を繰り返した。「一番苦労したのは、水を高く汲み上げる技術開発」と大江さんは語る。

「スライダーの長いコースを確保するためには、ある程度高いところから水を流すことが必要ですが、そこまで水を汲み上げるモーターを開発するのが大変でした。モーターの力、ファンの位置や構造などを工夫しながら何度も実験を繰り返し、少しずつ高さを上げていき、満足のいく仕上がりになったのは制作開始から半年後のことです。工業用のモーターを使えば比較的容易にパワーを確保できたのでしょうが、『そうめんスライダー』はあくまでもクッキングトイであるということを心に留め、子どもたちが安全に使えることを一番に考え制作しました」と大江さん。平林さんと大江さんは、膝を突き合わせるように相談と試作を重ね、2016年に「ビッグストリーム そうめんスライダー」が誕生した。

約10年に渡り、流しそうめんに注目してクッキングトイを作り続けてきた理由について平林さんは、こう話す。

「流しそうめんには、食事を中心に世代を超えたコミュニケーションができる魅力があります。クッキングトイのエンタメ性と一緒に、ワイワイしながら美味しいものを楽しんでもらいたい。その経験を通して、食卓を囲む時間や食事の大切さを知ることができれば、食育にも繋がるのではないかと思うのです」

今年の夏も、太陽が煌めき暑い季節となりそうだ。「そうめんスライダー」で、ワイワイ楽しくひんやり体験を満喫してみてはいかがだろう。

40年近く玩具作り一筋、ジーピー代表取締役の大江繁夫さん(左)。若い感性で様々なクッキングトイを企画してきたタカラトミーアーツの平林千明さん(右)。

(2023年7月11日掲載) 取材・文/阿部えり 撮影/オカダタカオ



お話を聞いたのは●平林千明さん

ひらばやし・ちあき/タカラトミーアーツで、クッキングトイの企画開発を担当している。小さな頃からプロダクト好きで、モノづくりに関わることを志してホビーの世界へ進む。自身も「そうめんスライダー」を愛用しており、友人たちとともに公園で流しそうめん体験を楽しんでいる。