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お金に強い子どもに! 家庭でできるマネー教育

昨今、キャッシュレス化や資産形成への意識の高まりなど、お金にまつわる事情が大きく変化したことで、子どもとお金との付き合い方について悩んでいる家庭は多いのではないだろうか。今回は、家庭で実践できるマネー教育について、ファインナンシャルプランナーの八木陽子さんに伺った。

子どものうちからお金の知識が必須の時代に

2022年から高校で金融教育が必修化され、家庭科の授業に家計管理や保険、資産形成といった内容が取り入れられ始めました。小・中学校でも、各教科の中でお金の仕組みや使い方に関する学習が行われるようになっています。

なぜ、子どもの金融教育が重視されるようになったのか。その理由の一つが、キャッシュレス化です。日本はキャッシュレス化に関して、世界から遅れていると言われていますが、東京オリンピックやコロナ禍の後押しもあり、ここ数年でようやく普及が進んできました。お金のやり取りがデータに移り変わったことで、子どもに対してお金の価値や、管理方法などを改めて教育する必要性が認識されたというわけです。

また、これまでは年金や退職金に頼っていた老後資金を、NISAやiDeCoといった制度を活用しながら、自分たちで準備していく風潮に変わってきたことも、金融教育が本格化するきっかけとなりました。長期にわたってお金を増やしていくには、資産形成の必要性を理解し、さまざまな金融商品の特徴を知っておかなければなりません。2022年度から成年年齢が18歳に引き下げられたことや、昨今のライフプランの多様化も影響し、学校教育に資産形成に関する内容が盛り込まれたのです。

親子でお金について学べる3つの方法

キャッシュレス決済が普及したことで、子どもは現金に触れる機会が少なくなり、「お金は使えば減るもの」ということが理解しづらくなりました。それに伴って、子どもの金銭トラブルも増えています。たとえば、親のクレジットカードでアプリゲームの課金をしていた、ICカードを使って友達におごっていた、などはよく聞く事例。こうしたトラブルを防ぐためにも、家庭でも早いうちからお金について教えておくことが大切です。ここからは、親子で楽しくお金について学べる方法を紹介していきます。

①日常会話にお金の話題を取り入れる

家族の会話の中にお金の話を取り入れることで、子どものお金に対する理解を深めることができます。大げさに考える必要はなく、家族で買い物をしているときに「これはお父さんとお母さんが働いたお金で買っているんだよ」と話したり、インターネットで注文するときに「返品はできるのか、送料はかかるのか見てみよう」と一緒に確認するなど、お金を使う場面でのちょっとした声かけで十分です。

②現金でお小遣いを渡す

最近ではICカードなどでお小遣いを渡す人も増えていますが、お金が増減する感覚をつかむためにも、最初は現金で渡すことをおすすめしています。おつりの計算をしたり、衝動買いでお小遣いが足りなくなったりと、さまざまな経験を積むことでお金に対する感覚や、お金の使い方を学ぶことができます。

③お金がテーマの本を読む

お金に関する児童向けの本はたくさん出版されているので、「お金についてうまく伝える自信がない」という人は、ぜひ活用してみてください。絵本であれば、幼稚園児でも親子で楽しく読めるでしょう。私がおすすめの絵本を何冊か紹介したいと思います。

『おさいふのかみさま』(フレーベル館)
初めてお小遣いをもらって買い物に行くおばけのばけばけが主人公。「おつりを多くもらってしまったときはどうする?」など、お金との付き合い方が学べる1冊です。

『はじめてのおつかい』(福音館書店)
一人でおつかいに行く小さな女の子のお話。おつかいのシミュレーションにもってこいの絵本です。

『ともだちや』(偕成社)
1時間100円で友達になってあげる「ともだちや」を始めたキツネと、声をかけてきたオオカミのお話。お金でつながる人間関係について考えさせられます。

投資信託に挑戦するときの、2つの注意点

お金の価値や使い方を理解できたら、親子で投資信託にチャレンジしてみてもよいでしょう。少額から株式投資できる証券会社もあるので、上手に活用すれば金融リテラシーの向上につながります。

ただ、その際に気をつけてほしいことが2つあります。

1つは、金銭感覚が養われていないうちに投資を教えないこと。お金の大切さや管理の仕方を身につけた上で、お金を増やす方法の1つとして学んでいってほしいと思います。もう1つは、「投資=儲ける」というイメージを持たせないこと。普段、私たちはお金を払ってサービスを受けたり、ほしいものを買うといった形で企業と関わっています。投資とは、その中で特に応援したい会社を成長させる方法の1つ。つまり、日本で生き残ってほしい会社に一票を投じ、世の中に良い会社を残す社会貢献につながるものだと言えるでしょう。親も投資信託についてよく知らないという場合は、子どもと一緒に一から勉強してみてください。 



お話を聞いたのは●八木陽子さん

やぎ・ようこ/株式会社イー・カンパニー代表/ファイナンシャルプランナー/キャリアカウンセラー。キッズ・マネー・ステーション主宰。出版社勤務を経て独立。2001年にファイナンシャルプランナーの資格を取得し、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事を行う。2008年、株式会社イー・カンパニーを設立。2017年より文部科学省検定の高等学校の家庭科の教科書に、ファイナンシャルプランナーとして初めて掲載される。監修に『今から身につける「投資の心得」~10歳から知っておきたいお金の育て方』(えほんの杜)など。