クラフトコーラ元年は2018年。種類は数百にも
今や、飲み物のひとつのジャンルとして確立するまでになったクラフトコーラ。その誕生は、2018年夏のこと。しかも日本で生まれたものである。
東京で「伊良(いよし)コーラ」「ともコーラ」という2つのコーラが誕生すると、それは大きなうねりを生み、その土地ならではのボタニカル(植物)を使ったり、生産者のオリジナル性を活かしたりと全国的に大きな広がりを見せていく。現在その数は、週百種類にも上る。まさに百花繚乱の状況で、とくに柑橘や砂糖が生産される九州や四国で生産されるものが多い。

そもそもクラフトコーラとはどういうものなのか。鯉淵さんは、その定義をこう捉える。
「一般的に親しまれているコーラは、1885年にアメリカで誕生した飲み物ですが、クラフトコーラは日本発祥のコーラです。コーラの原点に回帰して、コーラナッツをはじめとするスパイスや柑橘、砂糖類を使って、コーラらしい甘味などわかりやすいおいしさを楽しめる飲料。味わい・ストーリー性を追求しながら、清涼飲料水製造免許を有する場所で製造されたコーラです」
そのタイプは大まかに2つに分けられ、漢方や酒造りの技法を踏襲するような製造のテクニックを重視する“職人技タイプ”と、その土地で穫れた素材を重視する“ローカルタイプ”があるという。
ここまで広がった理由は「メーカー側の視点では、アルコールに比べて参入障壁が低い、競合が少ない、メディア露出が増加傾向にあったことなどが挙げられます。飲み手側の視点では、キャッチーで、食の感度の高い人を中心に話題性があったことや、スパイス感や甘味など、好まれやすいフレーバーだったことも挙げられます」と鯉淵さんは語る。


魅力は自然なスパイスの香りと甘味。ミルク割り、かき氷でも楽しめる
クラフトコーラの大きな魅力は、素材に使われるスパイスの風味やボタニカルの香り、材料を吟味した甘味料が使われるなど、その銘柄ごとの味わいが如実に異なる点にある。鯉淵さん自身がはまった理由も、まさにそこがポイントだった。
「お酒が弱く、飲み会では僕はもっぱらコーラ。お酒の飲み比べをできる人たちをうらやましくも思っていましたね。ある時、発売されたばかりの伊良コーラを飲んだら衝撃を受けて。次に、ともコーラを飲んで、こんなにも違う味わいでどちらもおいしくて。次々に登場する新銘柄を飲んでいくうちに、コーラにもこんなに深い世界がつくれるんだ!と、はまっていきました」
そのため、クラフトコーラには飲み比べの楽しみがある。多くはシロップ状で販売されているため、好きな濃度で希釈でき、炭酸水のみならず多彩なお茶や焼酎やラムやウイスキーといった蒸留酒など好きな飲料に合わせることも可能だ。
ここで、何百杯とクラフトコーラを味わってきた鯉淵さんに楽しみ方を聞いた。
●炭酸水割り
グラスに氷を入れ、炭酸水を注ぎ、最後にクラフトコーラシロップを加える。シロップは水より重いため、ステアせずとも自然に混ざりやすい。もっともオーソドックスでいて、銘柄ごとの味わいを感じ取れる飲み方。さらにフルーツやフルーツ果汁を加えて、いっそうフレッシュな味わいを堪能するのもいい。

●牛乳割り
クラフトコーラのスパイス感と甘味、柑橘感が、牛乳のコクと融合!爽やかな酸味が感じられるのが、同様に牛乳を使うチャイやミルクチョコレートと大きく異なる点。おやつ時のリフレッシュドリンクとしても最適。

●かき氷
過剰な甘ったるさがなく、後味はさっぱりとした上品な甘味が広がる。一般的なかき氷用のシロップのように甘さ一辺倒の単調な味わいにならず、スパイスのフレーバーや酸味がフックになる。唐辛子を加えたシロップなどもある。

クラフトコーラマイスター・鯉淵さんが選ぶ、注目の銘柄3選
■伊良コーラ
コーラナッツを含む10種類以上のスパイスと柑橘類を秘伝の割合で調合し、漢方の製法からインスピレーションを受けた方法で火入れをしている。
「初めて飲むなら、まずこちらを!世界初のクラフトコーラ専門メーカーが手掛ける先駆者的な銘柄で、人気が高く、入手もしやすいもの。純粋にこれまで飲んできたコーラとは違うおいしさを味わえると思います。バランスのいい味わいで、誰にでも薦めやすいですね」

「魔法のシロップ」Mサイズ(250ml) 2,750円
株式会社GRAND GIFT(東京)
https://iyoshicola.com/
●象徴的な素材:コーラナッツ、ライム、砂糖、バニラ、クローブ
■美ら(ちゅら)コーラ
多良間島の黒糖100%、シークワーサー、太陽の恵みのハイビスカス、ピリッとスパイシーな島とうがらし、海塩など、沖縄の魅力ある素材を活かしたコーラシロップ。人工甘味料・着色料・保存料・合成香料は不使用。
「沖縄の特産物を存分に活かしています。コクのある黒糖のパンチ、シークワーサーの爽やかな酸味のバランスがよく、海塩や島とうがらしが味を引き締めます。ラベルに南国ムードが漂っていて、これからの季節にぴったりです」

「美らコーラ(ORIGINAL)」(200ml) 1,820円
美らコーラ(沖縄)
●象徴的な素材:黒糖、シークワーサー、ハイビスカス、クローブ
■按田餃子 自家製コーラの素
代々木上原に店舗を構える水餃子店「按田餃子」が手掛けるコーラシロップ。2012年から存在していた稀有な銘柄。店主の按田優子さんがペルーで出会った植物や注目している素材を加えて、より納得のいく配合でリボーン。
「クラフトコーラ史上のレジェンド。さすが、素材を生かす料理人だけあって、スパイス感が立っていて美味。10年ぶりのアップデートで、按田さんが南米で出会ったコパイバやキャッツクローなど珍しい素材が加わりました。ジンのような清涼感!」

自家製コーラの素(240ml)2本セット 3,600円
按田餃子(東京)
http://andagyoza.shop-pro.jp/
●象徴的な素材:オレンジ、オールスパイス、バニラ、クローブ、キャッツクロー、ラベンダー、コパイバ
百花繚乱のクラフトコーラ。鯉淵さんはこの先の動向をこう読んでいる。
「ブーム的な流れは収まり、これからはある程度淘汰されていくと思います。実力のある銘柄が残っていくこれからがおもしろいと思います。深度を増して、本気のお茶割りやお酒割りの相性を探ったり、料理やスイーツに使うことが日常になる可能性も十分にありますね」
さてその行方はいかに?クラフトコーラで喉を潤しながら、その行方を見守ろうではないか。
(2023年6月27日掲載)
取材・文/沼 由美子 撮影/松田大成

お話を聞いたのは●鯉淵正行さん
こいぶち・まさゆき●クラフトコーラ行商・マイスター。いつか実店舗を開くことを見据えた実験的活動体「CRAFT COLA hour」を主宰。クラフトコーラカルチャーの公式発信基地というべきメディア「CRAFT COLA WAVE」の編集長を務める。クラフトコーラが発祥した2018年当時から愛し続ける、ジャンルの生き証人。
CRAFT COLA hour
【HP】https://craftcolahour.com/
【ONLINE STORE】https://craftcolaour.official.ec/
CRAFT COLA WAVE
https://craftcolawave.com/