ライフデザイン

「大切なのは視力だけじゃない!」伝説の眼鏡屋さんが教えてくれた、たいせつな眼の話

スマホの画面を長時間見ている現代人の眼は疲労が溜まりがち。「眼の見え方を改善すると、体の不調が改善します」と話すのは、千葉県佐倉市にある「眼鏡のとよふく」の豊福映吉さん。「眼鏡で人生が変わった!」という声が絶えない、伝説の眼鏡屋さんの店主だ。人生100年時代、自分の眼と長く上手に付き合う方法を聞いた。

見え方を改善すると、体の不調が改善する!

はじめまして、私は「眼鏡のとよふく」の店主、豊福映吉と申します。突然ですが、みなさんは健康に気をつけていますか?日ごろから食事や運動、睡眠時間を気にかけて、健康的な生活に努める方はたくさんいることでしょう。

では「眼」は気にかけていますか?

体に取り入れるすべての情報のなかで、80%以上を占めると言われるのが視覚情報、すなわち眼です。それだけ大切な器官なのに健康生活で眼を最初にイメージする方はどれほどいるでしょうか。せっかく健康に気をつけていても、視力の数字(視力至上主義)だけを指針として眼鏡を作ることで、実は健康を損なっているという方が多いのです。

そのため、良い視力を出すためだけにレンズを合わせるのではなくて、眼の使い方がその人の体にどう影響するかを観察しながら、眼鏡を作ることが必要だと考えています。見え方を改善すると、頭痛やめまい、肩こり、腰痛、慢性疲労、自律神経失調症など、多くの体の悩みを改善することはあまり知られていません。

「眼鏡のとよふく」四代目の豊福映吉さん。大学では基礎医学研究に励み、眼鏡屋の道に進んだ。

あなたは、両眼を使えていますか?

それほど眼と体は密接な関係があります。その一つの例が、眼と脳です。脳には右脳と左脳があります。どちらにも役割があり、本来はバランスよく使い分けるのが理想です。

ところが、お客さんの眼を検査していると現代病というのでしょうか、スマホや液晶を見る時間が長いため、言語の理解を司る左脳寄りの方がすごく多いのです。それが眼に表れて、左脳寄りの方は右眼だけで見る片眼視になります。ちなみに右脳寄りの方は左眼の片眼視です。検査をすると、どちらの眼を優勢に使っているかわかりますし、どの程度使っているかもわかります。

たとえば正面で1本の指を見たとします。これを見ているのは左脳寄りの方は無自覚で右眼だけで視認していて、極端に言うと左眼の映像はシャットアウトしている人もいます。こうした片眼視の人を左右のバランスの良い両眼視へ導くことが私の仕事のひとつになります。

ところで、人間はなぜ両眼で見るかわかりますか?答えは距離です。眼と眼の間があいていることで視認したものの距離が測れるのです。さらに両眼で見ることによって奥行きを感じることができ、立体感を得ることができます。奥行きを感じることはとても重要で、車の運転をはじめスポーツ、家事などあらゆる場面で必要な感覚です。つまり、両眼視であることでより生活がしやすくなるのです。

先ほどお話しした片眼視の人が多い理由も、スマホや液晶といった平面を見る時間が長く、距離感や奥行きを感じる能力が衰えてしまっているのが主な原因です。

バリエーション豊な眼鏡フレーム。作り手や販売担当の人が込めた思いや人柄に共感したものを揃えている。

眼鏡は、体の負担を軽くする道具

「眼鏡は視力合わせの道具」という認識は私たちにはありません。また、ストレスの多い現代において、眼鏡はどんな人にも必要と考えています。裸眼の人でも朝から晩まで眼鏡をかけるようおすすめしています。なぜなら、眼鏡は体の負担を軽くする道具と捉えているからです。視力矯正の補助というより、体の負担軽減を第一に、眼の動きや見え方を保護するという考え方ですね。

もちろん視力も大切ですが、奥行きを把握する「視覚」との総合バランスが大切です。「視力」の数字に執着して矯正するだけでは、視覚のバランスを崩して正確な距離感を掴めなくなる可能性さえあります。

私たちの眼鏡作りは、ヒアリングから始まります。まず眼についての問題意識をお伺いします。お客様が、自分の眼に対してどのような認識をされているのかをお伺いします。次に視力検査や両眼視検査と続いて、さまざまな検査を行います。そのなかで瞳の動きを確認するのも大切な検査です。ほとんど知られていないことですが、眼がスムーズに動いていない人は、全体の7~8割いると私は推測しています。点を追うようにぎこちない動きで、滑らかに瞳が動かないのです。これは、なかなか自覚できません。

眼鏡作りの前に行う検査では、眼の動きだけでニコちゃんマークを追うなど、ユニークな検査が多い。所要時間は1~2時間ほど。検査する人の眼とじっくり向き合う。
眼の検査を終えた後は、眼鏡作り。約1~2週間ほどの時間を要する。

ぴったりの眼鏡が見つかれば、人生が好転する!

なぜ、このようになっているのか。それは点で追うような動きで日常生活が過ごせてしまうことと、不自由を感じないためにいびつな動きに慣れてしまい、違和感を持たなくなってしまうのです。もちろん無自覚でも体に負担はかかります。

また、ヒアリングでは「デスクワークのときに専用の眼鏡を使っていますか」と必ずお伺いしています。続けて「デスクワークのときに遠くがよく見える用の眼鏡を使っていたら、眼に負担がかかっていますよ」とお伝えして、デスク用と普段使いの2本の眼鏡を使い分けることをおすすめしています。

ここまでの話で、最近眼について気になることがある、と感じた方は、ぜひ新しい眼鏡作りを検討してみてください。おすすめは、ご自宅の近くで、「眼鏡作成技能士」の国家資格を持つお店を探すこと。そこで「視力優先ではなく、眼に負担をかけない眼鏡が欲しい」と伝えてみてください。

あなたの眼にぴったりな眼鏡が見つかれば、体の不調は少なくなり、心は軽くなり、人生が少なからず好転するはずです。

お話を聞いたのは●豊福映吉さん

とよふく・えいきち/千葉の地で、90年以上に渡り眼鏡作りに向き合っている「眼鏡のとよふく」四代目。学生時代は、筑波大学にて基礎医学研究に励んでいたが、紆余曲折あり家業である「眼鏡のとよふく」を継ぐことを志す。現在は佐倉市にて店を構え、国内外から多くの客を受け入れている。眼鏡作りに必要な検査は1~2時間ほど用するため、一定数以上の客を診ることが難しく「精度の高い検査ができる店が、もっと国内に増えてほしい」と願っている。
https://www.toyofukuoptic.co.jp