ライフデザイン

心身のバランスがととのう!香りのある暮らし

「アロマテラピー」という言葉は知っていても、詳しくは説明できないという人も多いのではないだろうか。「アロマ」は「香り」、「テラピー」は「治療、療法」などの意味を持ち、「アロマテラピー」は主に植物から採取された精油(エッセンシャルオイル)の香りで心身の不調を改善する芳香療法のこと。「香りは嗅ぐだけで心身のバランスをとってくれます」と語るのは、アロマ調香デザイナー®️の齋藤智子さん。アロマの魅力を知り尽くした齋藤さんの案内のもと、アロマの楽しみ方、生活の中に気軽に取り入れるコツなどを学んでいこう。

「いい香りを嗅ぐと気分がよくなる」には、科学的な裏付けがある

香りを嗅ぐと、その香りが持つ芳香成分が鼻の奥にある嗅細胞を刺激します。その刺激が電気信号となり、人間の情動をつかさどるといわれる脳の大脳辺縁系へと伝達されます。ここまでわずか0.2秒。これは人間の持つ五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の中で最も早いスピードです。

そこからさらに、交感神経と副交感神経を調節し自律神経を整える視床下部、ホルモンの分泌を促す下垂体へと伝わります。それにより、リラックスしたり、集中力を高めたりするなど、その時々の心と体が求める効果を促し、自然と心身のバランスをとってくれるのです。

香りで心を解放し、気持ちもアップ

アロマテラピーには混じり気のない天然成分100%の精油を使用します。交感神経を優位にし、集中力をアップさせたいときによく使われるのはレモンやローズマリー、ペパーミントなどです。これらは脳を活性化するといわれています。プレゼンなど緊張する場面の前に、不安を解消する効果のあるベルガモットを嗅いで気持ちを落ち着かせるという人もいるようです。

一方、リラックス効果をもたらすのは、ラベンダーやオレンジスイート、サンダルウッド、フランキンセンスなどです。これらの香りを嗅ぐと副交感神経が優位になり気持ちがゆったりし、体はおやすみモードへと入っていきます。

リモートワーク中、オンとオフの切り替えがうまくできず、ずるずると仕事をしてしまうという人もいたのではないでしょうか。そんなときにもアロマは力を発揮します。仕事を始めるときは気持ちをオンにする香りを嗅ぎ、終えるときはリラックスを誘う香りで気持ちをゆるめる、これでスムーズに気持ちの切り替えができるのです。

さまざまな香りを調香(ブレンド)する齋藤智子さん。

初めての人はここから!齋藤さんのおすすめアロマ

アロマはたくさんありすぎて何から始めればいいかよくわからないという人のために、初心者でも気軽につかいこなせるアロマをご紹介します。

・オレンジスイート

甘みがある柑橘系の香り。気持ちを明るく元気にしてくれる。また安眠作用も。

・レモン

酸味を感じるフレッシュで爽やかな香り。抗菌作用や集中力を高める働きがある。

・ベルガモット

グリーンを感じる柑橘の香り。不安な気持ちをサポートしてくれる男女人気の香り。

・ペパーミント

清涼感と甘みのある爽やかな香り。頭をクリアにし、集中力アップに役立つ。

・ローズマリー

フレッシュで爽やかな香り。頭脳明晰化があり集中力アップに効果を発揮。

・ユーカリ

透明感のあるクリアで鋭くスッキリした香り。花粉症をやわらげる効果がある。ただし、猫はユーカリの香りが苦手なので、猫のいる場合は使用を控える。

・サンダルウッド

お香などで日本人には馴染み深いエキゾチックでウッディな香り。心を落ち着けたいときに。

・フランキンセンス

透明感があるほんのりスパイシーさも感じる深い香り。落ち着きたいとき、瞑想したいときなどに最適。

・ラベンダー

甘みを感じられる爽やかなフローラルな香り。緊張やストレスを和らげ気持ちを穏やかにする効果が。

・ヒノキ

日本人に馴染み深いキリリとした木の香り。落ち着きたい、安定したいときにおすすめ。

・ユズ

フレッシさと甘みがある日本人には馴染みのある香り。体の表面温度を上げる働きや、不安や緊張をときほぐす効果がある。

調香で自分だけのオンリーワンアロマを作ろう

お好みのアロマを1種類だけ使っていただいても効果は十分得られますが、2、3種類混ぜることで、よりご自身の好きな香りをつくることができます。それが「調香(ブレンド)」です。精油は混ぜてはいけない、配合が難しい、といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、混ぜることで、香りに深みが出てさらにいい香りができ上がります。

やり方はとても簡単。ガラス製の小皿など、手頃な容器にお好きなアロマを2、3種類ブレンドし、いい香り、と感じたら成功です。例えば、集中したい、やる気スイッチを入れたいなら、レモン、ローズマリー、ユーカリ、ヒノキなどをブレンドするのがおすすめです。逆に、ゆったりしたいときは、オレンジスイート、サンダルウッド、フランキンセンス、ベルガモットなどをブレンドしてみてください。この香りがあれば元気になれる、リラックスできると思える自分だけのオンリーワンの香りがあると安心できますよね。アロマにはそういう効果もあるのです。

1滴のアロマが生活に癒しと幸せをもたらす

好きな香りができたら、ぜひ生活の中に取り入れてほしいのですが、アロマディフューザーやアロマポットを揃えるのが億劫で……という人もいるかもしれませんね。でも、ティッシュ1枚あれば十分です。そこに数滴たらすだけで香りは2〜3時間もちます。同じ香りをずっと嗅いでいると鼻がその香りに慣れてしまいますので、もし香りが薄れてきたと感じたら、精油を追加するのではなく、一度空気を入れ替えたり、いったん部屋を出て戻ってきたりしてみてください。そうすれば、また香りを感じることができます。

朝はやる気をアップさせる香り、夜は気持ちをゆるめる香りと使い分け生活のリズムを整えたり、部屋ごとに香りを変えたりすれば、気持ちの切り替えに効果的です。また、季節に合わせたアロマを用いて、お部屋の中に香りで四季を取り入れる。インテリアのひとつとして香りを楽しんでいただきたいと思います。

古くなったアロマを最後まで使い切るには

精油は直射日光に当てないようにして、できるだけ1年で使い切るようにしましょう。柑橘類のアロマは半年が目安です。古くなると酸化して香りが少々変わってしまいますが、そのまま捨ててしまうのはもったいないですよね。

古くなった精油でも、お手洗いに滴下したり、キッチンで洗い物をしたあとにペパーミントやユーカリを1滴垂らすと香りと同時に抗菌作用も得られます。

お話を聞いたのは●齋藤智子さん

さいとう・ともこ/アロマ調香デザイナー®️
TS Aromatique Inc.代表取締役
一般社団法人プラスアロマ協会代表理事

京都で10代続く家に生まれ、白檀の香りに魅かれて調香の世界へ。20年間で創作した香りは6,000種以上。国内外で企業やブランドのアロマ空間演出を手がけるほか、美術館の創香などアート分野の企画、天然精油を使った化粧品などのプロダクト開発依頼も多い。
最新刊『暮らしの図鑑 香りの作法』(翔泳社)が4月13日に発売予定。
https://saitotomoko.com/