
お話を伺った人●塚本佳子さん
つかもと・よしこ/東京・東長崎で金土日に営業する「北欧雑貨の店 Fika」を営む、フリーランスの編集者・ライター。7坪の小さな店舗では、ヴィンテージから新しいものまで、フィーカにまつわる食器類や雑貨をセレクトする。
お茶の時間で、会話とメリハリが生まれる
スウェーデンには、「フィーカ(Fika)」と呼ばれるお茶の時間がある。甘いお菓子をとりながらコーヒーを飲む時間だが、塚本さんによると単なる小休憩のためのコーヒーブレイクではないそうだ。
「スウェーデンの人たちにとって、フィーカはコミュニケーションの場として活用される重要な習慣です。家族や友人といった親しい間柄だけでなく、学校や会社、PTAの集まりなど、さまざまなシチュエーションで『スカ ヴィ フィーカ?(フィーカしませんか?)』と誘い合い、一日に何度もフィーカを楽しみます」
国際コーヒー機関・ICOが発表した2019年の一人当たりのコーヒー消費量によると、スウェーデンは7.33kg。日本は3.48kgなので、倍以上だ。「『フィーカ』は幼児が最初に口にする言葉の上位にランクインしていますし、『フィーカは国民の権利』と主張する人が少なくないほど、スウェーデンの人たちはフィーカを大事にしているんです」
企業でも福利厚生でフィーカがあるのは普通のこと。職場にはコーヒーを無料で飲めるフィーカルームが当たり前にあり、午前と午後のフィーカタイムになると社員が集まってくるという。
「日本のオフィスでは、個々に休憩をとったり、仕事が一区切りついてから休憩をとるといった方も多いと思いますが、スウェーデンのフィーカは一斉にとります。全員が仕事を一旦中断するものの、フィーカが終わったらさっと切り替えて仕事に戻るので、仕事にもメリハリが生まれます」
同じ時間を共有することで仲間や取引先ともすぐに打ち解け、明確な休憩時間を取ることでリラックス効果も高まり、オンとオフの切り替えがしやすくなる。日本の家庭でもフィーカを上手に取り入れれば、家族の団欒だけでなく、在宅勤務の際にも活かせそうだ。



デミタスカップでゆっくり味わう人が増えている
では、家庭でフィーカを行うなら、どんな工夫をすると良いだろう。
「フィーカに決まった道具はなく、決まり事もないので気負う必要はありません。ただ、スウェーデンをはじめ北欧の人たちは冬が長く家で過ごす時間が多いので、家の中を心地よい空間にすることに長けています」
コーヒーカップやお菓子を入れる器を一つのブランドで揃えたり、テーブルクロスを敷いたり、いろいろな柄のペーパーナプキンをストックしたり。季節のお花やキャンドルを置くなど、ちょっとしたことでテーブルが華やぐという。
「お菓子を入れるのに、お皿だけでなく籠もよく使います。日本の曲げわっぱのような、白樺やもみの木で編んだ籠にペーパーナプキンを敷いて、その上にお菓子を載せます。取り分け用には小皿やペーパーナプキンを使うこともありますね」
コーヒーを入れるカップひとつとっても、北欧ブランドはデミタスカップ、コーヒーカップ、マグカップなど、同じデザイナーの作品でサイズや形が違うものが販売されることも多いため、同じデザイナーのお皿とセットで揃えると統一感が出るそうだ。
塚本さんの店では、今までマグカップを買い求める人が多かったが、昨年からデミタスカップの問い合わせが増えた。
「熱いうちに飲み切れるサイズの人気が出てきた背景には、家庭でコーヒーをゆっくり味わう方が増えたせいではないでしょうか」

20分で作れる!スウェーデンの定番菓子のレシピ
フィーカのお菓子は、数種類並べてそれぞれが好きなものを手に取ることが多い。エッペルカーカ(りんごのスポンジケーキ)、ミューク・ペッパルカーカ(ソフトジンジャーケーキ)、カネールブッラル(シナモンロール)、ハッロングロットル(ラズベリージャムのクッキー)など、フィーカではデコレーションの凝った生ケーキではなく、クッキーや焼いただけのスポンジケーキなどを食べるそうだ。お菓子は購入もできるが、男女問わず手作りして常備しておくのも一般的だという。
「フィーカのお菓子はざっくり材料を測ってもできるシンプルで簡単なレシピが多いので、子どもたちも作りますし、週末にたくさん作って冷凍している家庭も少なくありません」
共働きで食事は冷凍食品といった家庭も多いというスウェーデンだが、フィーカのお菓子作りだけは別で、長年、聖書の次に売れているお菓子作りの本があるというエピソードからも、いかにスウェーデンの人にとってフィーカが特別なものかがわかる。
最後に塚本さんから、家庭で作る定番のお菓子「ショクラードスニッタル」の作り方を教わった。「準備に約10分、焼く時間に10分と短時間でできるレシピなので、私は仕事の合間に作っています」
週末はぜひ家族でお試しを。
文=ホシカワミナコ 写真=花井智子
ショクラードスニッタル
室温バター 50g
きび砂糖 40g
薄力粉 60g
ココアパウダー 大さじ1.5
塩 少々
重曹 小さじ1/2
パールシュガー 適量
<作り方>
- ボウルに室温バターときび砂糖を入れて、泡立て器でしっかり混ぜる。
- 1にふるった薄力粉とココアパウダー、塩、重曹を加えてへらで混ぜる。
- 2の生地を二等分にする(やわらかくて扱いにくい場合は、一度冷蔵庫で寝かせる)。
- 3をクッキングペーパーの上で直径3センチ程度の棒状に伸ばしたら、表面を押さえて平らにする。
- 4にパールシュガーをトッピングする。
- 170度のオーブンで10分焼く(外側は硬く、内側はやわらかいくらいに。焼き過ぎに注意)
- 熱いうちに包丁で食べやすい大きさに斜めにカットする(焼きたてはかなりやわらかいので注意)
- 冷まして完成(大量に作って冷凍しても良い。食べる時は自然解凍する)
店舗情報●北欧雑貨の店 Fika(フィーカ)
東京都豊島区長崎4-15-16
金:14時~19時、土日13時~18時 ※臨時休業有り
電話 03-6909-5466
HP https://7tsubofika.com/
Mailは上記HPのお問い合わせフォームから