ニッポン、心と心をつなぐ旅

道央から道東へ――大自然の案内人に導かれ「本当の豊かな暮らし」を知る、心と心をつなぐ旅

今回、三菱地所レジデンスクラブが提案するのは、とかち帯広空港から北海道に入り、フリーフライトの気球に乗って空を遊覧し、その後、道東の屈斜路湖畔からカヌーで釧路川源流をめぐり、たんちょう釧路空港から帰るというアクティビティ満載のルート。十勝平野や阿寒摩周国立公園という雄大な自然が残るエリアをめぐり、パックツアーでは体験できない、ちょっとディープな旅を。そこには大自然への愛ゆえ北海道に移り住んだ頼もしい案内人たちが待っている。
(2021年10月取材)。

北海道の大空を風に乗って巡る
おとぎ話のような気球の旅

帯広エリアに泊まったら、翌朝は早起きして気球に乗ることもできる。鹿追町(しかおいちょう)を拠点に熱気球運行会社Hot air(ほっとえあ)を運営する小田切光(おたぎり・ひかる)さんは、風まかせに空を飛ぶ“フリーフライト”のパイロット。個人やグループでの貸し切りフライトを申し込めば、気球をロープにつないで上下するだけではない、空中遊覧の本来の楽しさを味わせてくれる。
 
安全のため風速毎秒3メートル以下の日のみの運行で、実施率は60%ほど。運良く天気に恵まれたら、集合場所である「道の駅うりまく」に行き、離陸地点で巨大なバルーンをふくらませていく準備段階から参加して、熱気球のバスケットに乗り込む。飛行するのは地上30メートルから最高で500メートルまで。上空からの眺めはまさに絶景だ。360度の大パノラマで、西には日高山脈が連なり、北には大雪山系の峰々が見え、そして眼下には3,600平方kmの面積を誇る十勝平野がどこまでも広がる。

風を読み、火力を調整して気球を上下させる。小田切さんいわく「この作業が、気球パイロットの腕の見せどころ。」乗客の安全を確保したうえで、美しい景色を満喫してもらうことが使命であるという。気球が着地した場所で、小田切さん特製のお茶とお菓子でティータイムを楽しむ。のどかな北海道の平地を眺めながら噛みしめる、贅沢なひとときだ。

ベストシーズンは秋から冬。夏の大地は畑の耕作が最盛期で大地はグリーン一色に染まる。収穫の秋には畑のパッチワークが見られ、空気も澄んで見通しが良くなる。そして、冬は平野に雪が積もった白銀の世界に。「葉を落とした木は黒く、空は真っ青で、コントラストが強くてきれいですよ」と小田切さん。上空からハクチョウの群れやキタキツネが見られることも。高い飛行技術を持つ小田切さんだから、川の近くまで降下したり、樹木すれすれの高さを飛んだりすることもできる。

「気球は横移動をコントロールすることはできません。浮力を調整して上がり下がりし、どの高さにどちら方向の風が吹いているかを読みながら、着陸地点に向けて移動します。風まかせで自然に身を委ねるしかないときもあるし、不自由ではあるけれど、それが風を切って飛ぶ飛行機とは違う気球の面白さですね」

小田切さんは茨城県出身。東京の大学で気球サークルに入り、その魅力に取りつかれた。いったん就職してから「気球を真剣にやってみたい」と改めて思い、27歳で十勝地方へ。自分の気球を手に入れ海外のコンペティションなどで世界チャンピオンを目指した後、この十勝に戻って熱気球運行のサービスを始めた。

「そもそも僕は他人にはできないことを仕事にしようと思って北海道に来たわけです。この十勝で気球を飛ばしお客さんを楽しませることにかけては、自分が世界チャンピオンだと思っていますから」

ここを訪れる人に自分がかつて気球に出会ったときと同じ感動を味わってほしいと願う小田切さん。風に乗って“自然の一部になる”という体験は、人生を変えてしまうようなインパクトがある。

ガイドがお届けするここでしか体験できない
屈斜路川の自然にふれ、魅了されるカヌーツアー

道央で過ごした後は、釧路方面へと車を進め、阿寒摩周国立公園へ。日本最大のカルデラ湖・屈斜路湖を目指す。釧路湿原をくねくねと蛇行しながら貫く釧路川はここから始まっている。釧路湿原でのカヌーツアーは有名だが、近年、釧路川源流をめぐるツアーも注目を集めている。湖畔に事務所を構える屈斜路ecoツアーズは、カヌーガイドの吉田聡さんが運営。吉田さんと奥さん、2匹のかわいらしい愛犬が参加者を温かく出迎えてくれる。

そして、屈斜路湖からカナディアンカヌーを2槽連結したツインカヌーに乗り、川の流れに沿って源流に入れば、風が止み静寂が身を包む。川岸は手つかずの原生林が残る野鳥の宝庫。珍しいヤマセミや人気のシマエナガが姿を現す。透明度の高い水の中ではヤマメやイワナなど、川魚が泳いでいるのが見える。

ツアーのハイライトは、水面がキラキラと輝き、周囲の木々を反射して映す「鏡の間」。ここにはカヌーでしか来ることができない。川底までクリアに見え、魚たちの群れやモスグリーンの川藻、川底から湧き水が出てくる清流ならではの光景も見られる。

カヌーを漕ぎながら、吉田さんは屈斜路川の自然を解説してくれる。植物をはじめ、鳥の鳴き声や川の中の魚影にいち早く気付き、参加者にもみられるように案内をしてくれる。水中は美しく透き通り、網ですくえば生き物が確認できる。吉田さんの解説を聞いたら、再び川へリリース。渓流下りには、ガイド犬のアキとユキも同乗。一層、旅をにぎやかに盛り上げてくれる。

なんといっても、このツアーの最大の魅力は吉田さんのガイドだからこそ体験できる「自然とのふれあい」だ。少し川を下ってはカヌーを止め、植物や生き物の解説をしてくれる。ときには「ザリガニを探してごらん」とタモ網を手渡されることもある。子どもだけでなく、大人が相手であっても同様に“川遊び”を体験させるのだ。「カヌーを漕ぐことを目当てに参加してくれる人もいるんですけど、僕のツアーで自然に触れあっていくうちにみんな漕ぐことを忘れるんですよ(笑)。最後のほうになると、『あの鳥はなんですか?』『この魚ってなんて名前ですか?』と、この美しい自然に心を奪われていくんです。とてもうれしいですね」と吉田さんは笑顔で話す。
 
子どもの頃から川や自然が好きだった吉田さんは12年前、関西から縁もゆかりもなかったこの地に移住してカヌーガイドになった。今では誰よりもこの源流の自然に詳しくなり、鳥の声を聞き鳥笛を鳴らして呼び寄せたり、網を取り出し川エビやハゼなどの水中生物を捕まえて見せてくれたりする。
 
「毎日この川に来ているけど、一度たりとも同じ景色はない。ある日突然氷柱ができていたり、キツネの通ったことで草木の分け目ができていたり……こんなに面白い釧路川の自然をたくさんの人に味わってほしいんです」と吉田さん。
 
カヌーツアーを終えた後は、釧路湿原の中を流れて釧路市内へ入っていく釧路川をたどり南下するのもいい。屈斜路湖から生まれた川は154kmの距離をかけて水を運び、最終的に有名な幣舞橋の下を通って広い太平洋へと流れ込んでいく。そんな壮大な水のサイクルに想いを馳せる旅。「自分にとっての豊かな暮らしとは何か」を改めて考えられる機会が待っている。

(撮影=本田匡、文=小田慶子)

1)Hot air (ほっとえあ)

北海道河東郡鹿追町鹿追北4-3
TEL 0156-66-3535
開催期間:8~3月(4~7月は原則運休)
電話受付時間/9:00~17:00
定休日/不定休
アクセス/とかち帯広空港から車で約1時間
ホームページ https://www.hotair-h.com/

料金:貸し切りフライト3名(合計体重200kg以内)まで54,000円/
4名まで(合計体重300kg以内)68,000円/
5名まで(合計体重350kg以内)80,000円
予約の受付開始は2ヶ月前の月の1日から

2)屈斜路ecoツアーズ

北海道川上郡弟子屈町字屈斜路199-1
TEL 015-483-3987
ショートカヌーツアー:1人5,000円(17歳以下は半額)
ホームページ http://kussharo-eco.com/

※価格はすべて税込み ※2021年10月取材
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