街選びのコツ

買ったときよりも高くなるマンションの選び方、売り方

コロナ禍でも価値が高まり、注目を集める中古マンション。「これから売り時がくる」と住宅ジャーナリスト・山下和之さんは話す。しかしあらゆる物件が高く売れるわけではない。具体的な立地条件や物件など資産価値が高まる物件の選び方、さらには資産価値を保ちながら効率的に売る方法とは。

リセールバリューが高い「エリアと立地」は?

近年では驚くほどの高値で物件が売却されています。不動産専門データ会社「東京カンテイ」が毎年発表している調査によると、2020年の「中古マンションのリセールバリュー」の首都圏平均は100%を超えています。これは10年前に販売されたマンションが現在、仲介市場で当時の分譲価格の何%で取引されているかを調べたものです。

一戸建てと異なり、マンションは個人の努力で資産価値を高めるには限界があります。基本的には建物や立地で評価されるものです。だからこそ買うときには、将来資産価値が上がりそうな物件を買うことが極めて重要。選ぶ際にまずポイントとなるのは“立地”です。

高額にはなりますが、千代田区、港区の都心や山手線内の物件は資産価値が下がることはあまりありません。もう少し価格を落としたエリアであれば、東京の北は「大宮」、西は「吉祥寺、三鷹」、南は「川崎、横浜」、東は「市川、船橋」です。このあたりはリセールバリューで100%を維持できそうなエリアと考えていいでしょう。

同じ場所の中で、価値を左右するのは“最寄り駅からの徒歩時間”です。できれば徒歩時間は6〜7分、かかって10分程度。2〜3年前の調査結果ですが、最もリセールバリューが高いのは徒歩3分以内の物件でした。徒歩3分ではおよそ103%と100%を超えていますが、10分になると93%程度まで落ちます。また買い物など周辺環境も重要です。これは数値化しにくいので実際に歩いて確認してください。

選ぶ際に確認すべき「戸数規模、階数、間取り」

マンションの戸数規模、階数も価格に影響する大切なポイントです。総戸数50戸未満では90%程度に対し、500戸以上は130%以上。同じく、4階建て以下は90%未満ですが30階建て以上になると130%以上と、規模が大きく、最高階数が高いほどリセールバリューは高くなります。理由のひとつは、共有施設や管理が充実していること。その分管理費などの負担も重くなりますが、将来的な資産価値を上げるために払う意味はあるでしょう。

超高層マンションは値段も高くなります。そこで私がおすすめするのは“超高層マンションの低層階”です。低層階であれば、周辺の中高層マンションとさほど変わらない値段で買える物件もあり、上層階の部屋と同じく資産価値は上がります。共有施設やラウンジバーなど、超高層マンションのメリットも十分に享受することができるのです。

私も数年前まで超高層に住んでいましたが、眺望は数日で飽きます。毎日、外の景色を眺めて楽しむことはありません。低層階でも十分にメリットは活用できます。また、個性的な間取りよりも汎用性の高いタイプ、特に3LDKがおすすめです。人気があるので、売る際にも有利になると思います。

資産価値を維持するために重要な「管理」

買う前に確認してほしいのが“マンションの管理面”です。資産価値を維持するには管理が欠かせません。必ずしも大手の管理会社が入っているわけではなく、ずさんな会社だと管理不全に陥ることもあります。その点、大手不動産の物件であれば系列会社がしっかり管理してくれることが多いので安心です。管理会社に対する顧客満足度調査も公表されていますので、そのような点にも注意しながら選んでいただきたいと思います。

管理が行き届いているかをチェックするには、具体的な事例を見るのがベストです。基本的には建物の外観が清潔に保たれているか。可能であれば、エントランスやエレベーターが清掃・整備されているかに加え、ゴミ置き場や駐車場、駐輪所がしっかり整理整頓されているかを見てください。私なら、住人に話しかけて、住み心地やマンション内のコミュニケーションの様子を聞いてみます。新築マンションやセキュリティによって見ることができない物件であれば、同じ会社が管理している既存マンションを参考にしてください。

高く売るにはタイミングも重要

現在、中古マンションは非常に人気があり、売るにはいい時期です。思っている以上の値段に売れる時期だと思いますので、考えている方は一度査定に出してみてください。最近は無料で複数社に依頼できる一括査定サービスもあります。ただし注意してほしいのは、高く売れるとわかっても、必ずしも買い手がつくわけではないこと。また、次に買いたい物件はそれ以上に高いかもしれません。買い替えの場合は、“売り物件の査定”と“買い物件の価格確定”の両方を同時に行えば、資金計画も破綻せず進めやすいでしょう。

高く売るにはタイミングも重要です。理想としては“築20年まで”に売るのがベスト。築15〜20年から資産価値は急激に下がる傾向にあります。ずっと住み続けるのではなく、いずれ買い替えることを前提に選ぶのであれば、20年以内をめどに、買い替えのステップを考えてください。これが“長いタームでの売り方”です。

一方“短いターム”で考えた場合、最も高く売れやすいのは2〜3月です。築年数にもよりますが、売出しから売却までには平均100日かかると考えてください。前年の年末から仲介業者に査定を出して、実際に依頼する仲介業者の検討を。年明けから売却活動を始め、2、3月中に売り切ってしまうのが理想です。

高く売るために、個人でできること

近年はリフォーム物件も人気ですが、売却時に買い手がつきやすいかは別の問題です。例えば500万円かけてリフォームしたからといって、500万円高く売れるわけではありません。壁紙を変えるなど数十万〜100万円程度にとどめたほうが安心かもしれません。むしろ売る際には、内見前のハウスクリーニングのほうが効果的でしょう。特に女性が気にするのは、日常の汚れが染み込みやすい水回り、キッチンや浴室、トイレなどです。これらがきれいかどうかでイメージはかなり変わります。ハウスクリーニングによって価格が飛躍的に上がることはありませんが、スムーズに売却できる可能性は十分にあると思います。

一戸建てほどは多くありませんが、買ってからも資産価値を高めるためにできることはあります。できれば管理組合の理事や理事長となり、マンションをよくする活動を自ら行ってください。積極的に参加して改革していく。例えば管理組合の動きがよくなければ管理会社を変えることができるかもしれません。自分の住み心地を改善することが、結果的に資産価値を高めることにもつながるのです。

(2021/9/7掲載)



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お話を伺った人●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/