理想の住まいの選び方

教えて、間取り先生!後悔しないマンションの間取り4つの条件

間取りの選び方次第で暮らしやすさは大きく変わる。「間取り先生」として活躍する建築家の上田康允さんが、マンション購入後に後悔しない間取りを選ぶために注目すべきポイントを語る。

良い間取りの条件は「DNKS」の4つ

私は“良い間取りの条件”とは、「動線(D)」「日照(N)」「風通し(K)」「騒音(S)」の4つだと考えています。暮らしに直結する「DNKS」に配慮された住まいは、長く快適に住むことができるからです。逆に、これらの点を見落とすと、どこかの段階で暮らしに支障を感じてしまう可能性が高くなるでしょう。

たとえば、DNKSに配慮されていない住まいの場合、以下のようなデメリットが考えられます。

●動線(D)に配慮がない

玄関からリビング、リビングからトイレのように、よく行き来する部屋同士が離れていたり、たどり着くまでに何度も曲がる必要があり、暮らしているとストレスが溜まりやすい。


●日照(N)に配慮がない

自然光が入らないため、日中も暗く、洗濯物も乾きづらい。


●風通し(K)に配慮がない

家の中央に風が通らないため、じめじめしやすく、換気にも時間がかかる。


●騒音(S)に配慮がない

ストレスの原因となり、健康にも影響を及ぼす場合がある。


こうして考えてみると、日々の暮らしにおいて、いかに間取りが重要であるかがわかるでしょう。後悔しないマンションを見つけるために、ぜひDNKSを重視してほしいと思います。

内見でここを押さえよう!「DNKS」のチェックポイント

ここからは、実際にDNKSに注目したマンション選びのポイントについて、解説していきたいと思います。

【動線(D)のチェックポイント】

間取り図を見たときに、家の中での動きをシミュレーションしてみましょう。よく行き来する部屋はもちろん、「買い物から帰ったら、1回曲がるだけでキッチンに入って、片付けることができるな」「玄関から洗面台に行くには2回曲がらないといけないから面倒だな」といったように、日々の暮らしを想像しながら具体的に考えてみてください。内見時には実際に各部屋を行き来してみて、動線が本当にスムーズかチェックしましょう。


【日照(N)のチェックポイント】

南側に窓があれば直射日光が入りますし、北側でも反射光が入るのである程度明るくなります。角部屋であれば、2面に窓があるので日照には期待できるでしょう。基本的に、間取り図は北が上になるようにつくられているので、まずは窓の位置を確認しましょう。マンションが立っているなどして、実際には採光がないこともあり得るので、必ず内見時に日の当たり方を見るようにしてください。


【風通し(K)のチェックポイント】

風はまっすぐに進むので、対面の位置に窓があれば風が通ります。図面では窓の位置を見て、内見時は実際に窓を開けて、風の通り方を確認できるとベストです。ただ、現状では窓が対面に位置するマンションは少ないため、止むを得ない場合は優先度を下げて考えてもよいと思います。


【騒音(S)のチェックポイント】

外からの騒音については、内見時に必ず窓を開けて確認してください。窓を閉めていれば静かでも、開けたときに騒音が気になるようであれば、窓を開けて生活することができません。また、家の中でも騒音は発生します。お風呂や洗面所、キッチンなどの給水・排水の音です。水回りが生活スペースに隣接している場合は、実際に水やお湯を出してみて、どのくらい音が聞こえるのか、就寝時に気にならないかをチェックしてみてください。ちなみに、鉄骨造のマンションに比べて、鉄筋コンクリート造のマンションは壁が厚く、隣家や上階の音は入ってきづらいです。構造の特徴を把握した上で、内見時に生活音やドアの開閉音、足音などの聞こえ方も確認するとよいでしょう。

「騒音」は後から自分で対策できる

動線・日照・風通しの3つは不満があっても、購入した後で改善することはできません。しかし、騒音の場合は、気になったら自分で対策する方法があるので、その対策が実行できるかもチェックポイントの一つです。

例えば、外からの騒音は、既存の窓の内側にもう1枚窓を取り付けて、二重窓にすることで軽減することができます。ただし、それが可能なのはスライド式の引き違い窓の場合で、ハンドルの付いたすべり出し窓の場合は二重窓にはできません。

給水・排水の音を防ぎたい場合は、防音材を活用することで、ある程度防ぐことができます。水回りと寝室などが隣接している場合は、防音材を貼ることができる間取りになっているかも見ておけるとよいでしょう。

間取りを見るときは、広さやデザイン、金銭面などを重視してしまう人が多いです。しかし、不満やストレスにつながりやすいのは、日々の暮らしの部分。DNKSに注目することで、購入した後の暮らしがぐっと快適になるはずです。


(2023年11月21日掲載)

お話を聞いたのは●上田 康允さん

うえだ・やすまさ/建築家。ハウスメーカー・工務店を経て、建築家として独立。「上田康允デザインコラボ」建築設計事務所の代表として、全国各地で住宅や店舗の設計管理を手がける。「一般社団法人 日本間取り協会」代表理事も務めており、「間取り先生」の愛称で、メディア出演や講演活動を行っている。著書に『「間取り」にこだわれば「いい家」になる!』(ナツメ社)ほか。
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