理想の住まいの選び方

将来のトラブルに影響! マンションの「管理レベル」はどこでわかる?

マンションの購入を検討する際に気になるのが物件の管理状態だ。「マンションは管理を買え」というのはよく聞く話。なぜそこまで重要なのか、管理状態のチェックポイントなどを日本マンションサポート協会代表理事の川島崇浩さんに聞いた。

「管理組合」と「管理会社」の役割とは?

マンション管理に関わる組織には、「管理組合」と「管理会社」があります。

管理組合は、各住戸の所有者(区分所有者)による管理業務を行うための組織です。区分所有者は、住戸を取得すると同時に、その意思に関わらず組合員になります。区分所有者である限り管理組合から脱退することはできません。

管理業務には、例えば以下のようなことがあります。

  • 敷地および共用部分の保安、保全、保守、清掃、消毒、ゴミ処理
  • 長期修繕計画の作成、変更、管理
  • 修繕履歴情報の整理、管理
  • 共用部分に係る火災保険等に関する業務
  • 風紀、秩序および安全の維持に関する業務
  • 広報および連絡業務

管理業務の執行は、総会によって区分所有者の中から選任される理事で構成された理事会が行います。しかしながら、管理に対して素人であり、多くは本業も持つ理事たちが、先に述べたような業務を滞りなく遂行することは簡単ではありません。そこで、業務の一部またはすべてを管理組合から委託されて実施するのが、管理のプロである管理会社です。

管理不全の物件は、売却時に苦労することも!

管理がずさんだと、広範囲でトラブルが発生します。わかりやすいところでいえば、共用廊下やゴミ置き場といった共用部分が汚れたままになる、敷地内に雑草が生い茂る、枯れた樹木が放置される、各所に故障や破損が散見されるといった状態になります。また、注意喚起を徹底できていないために、共用廊下に自転車などの私物が放置されているといったルール違反が横行するマンションもあります。

運営面でいえば、修繕積立金を計画的に積み立てていないために不足し、必要な修繕工事ができなかったり、工事の際に一時金を支払うことになったりする可能性があります。

管理がずさんになってしまう要因としては、管理会社の気配りや提案が不足しているケースも少なくありませんが、何より理事会や個々の区分所有者が日頃から管理状態をチェックしていないことが挙げられます。

こうした管理不全の物件は、売却時にも影響が出ることがあります。中古マンションの購入を検討する人は、必ず管理状態も気にするため、しっかり管理されているマンションは、売り出しから比較的短期間で売却ができます。一方で管理が行き届いていない場合は、売却に時間がかかることが多くなります。それでも早く売りたければ、値引きをせざるを得ないでしょう。

購入前にチェックしておくべきポイント

購入前にできることをいくつかご紹介します。

●目に見える部分の管理状態を確認

購入を検討しているマンションを一回りして、清掃や植栽などの管理状態をチェックしてください。見えにくいところにも注意が必要です。屋上に雑草どころか雑木が生えてしまい、防水部材を傷めてしまうようなケースもありますので、よく確認しましょう。

●管理状態を他物件と比較

周辺にある、同年代で他の管理会社が管理するマンションと比較してみてください。そうすればある程度管理レベルがわかるはずです。また、簡単に複数の物件の管理状態を比較したいなら、2022年にスタートしたばかりで掲載されていないマンションもありますが「マンション管理適正評価サイト」や不動産ポータルサイトが提供するマンション管理評価サービスなどを活用するのも有効です。

●資料で運営状況を確認

さらに詳しく調べる場合、管理組合の総会資料や総会議事録、管理規約、長期修繕計画書などを確認するといった方法もあります。総会資料と議事録は最低でも過去3年分は確認する必要があります。チェックポイントは、管理費会計の赤字やトラブルを起こす入居者の有無などです。

長期修繕計画書については、資金計画に平米当たりの修繕単価が記載されているか、されている場合はその金額で足りるのかなどもチェックします。よくありがちなのが、およそ築35年以降に交換する各住戸の玄関とサッシの費用が入っていないのが一つの例です。大体の長期修繕計画が新築時に築30年までしか立てられていないので、漏れているのです。

とはいえ、資料の確認にはそれなりの知識が必要で、時間も手間もかかります。負担に感じる場合は、仲介を依頼している不動産会社にお願いしたり、不動産コンサルタントやマンション管理士などの専門家に相談するといいでしょう。


お話を聞いたのは●川島崇浩さん

かわしま・たかひろ/マンション管理士、管理組合コンサルタント。一般社団法人 日本マンションサポート協会代表理事。複数の大手マンション管理会社において分譲マンションの管理に携わった後、住宅系コンサルティングを経て、2017年にマンション管理の専門家を集めた組織「日本マンションサポート協会」に参画。叩き上げのスキルを武器に、現在、マンション管理士として組合運営から大規模修繕に至るまで、幅広く管理組合のコンサルティング業務を行う。
https://www.mansion-spt.com/