理想の住まいの選び方

元住宅情報誌・編集長が回答!エリアの見方、将来性…。

レジクラ会員の皆さまにお答えいただいた「住まいの探し方に関するアンケート」。
今回は、フリーコメントで寄せられたご質問の中から、マンションを検討する時に知っておきたい3つの内容について、“元住宅情報誌・編集長”からの回答をまとめています。お住まいを検討中の方は、ぜひ、参考にしてみませんか。
(アンケート実施期間:2018年10月16日~2018年10月23日 回答数:1,294件)

マンションを買うとき、エリアはどう見立てればいいの?

マンション購入検討者の方々からは、マーケットや住まいを選ぶ上での考え方のご質問が寄せられました。
例えば、「今後、中長期に見て市場価格が下がらないエリアを知りたい(30代男性)」「知らない土地での間違いのない物件選びはどう考えればよいか(50代男性)」「老後の住まいの検討にあたり、いろいろな考え方を知りたい(50代女性)」など。
ここでは、住まいを決める上で知っておきたい、エリア選びの考え方について聞いてみました。

長く住宅購入検討者の動向を見てきて、交通利便性を最重視する傾向は、世代を問わず年々高まってきていると感じています。その背景には人口動態の変化があります。具体的には、1980年代から継続して世帯人員は減少傾向、共働き世帯は増加傾向にあり、データの推移をみても、このトレンドが今後も続くと考えられます。

これらの世帯は、世帯全員が働き手であることも多く、毎日の通勤負担を軽減できるエリアや立地を好むのは必然といえるでしょう。したがって、将来的に圧倒的多数派となる可能性が高い「通勤者中心の世帯」にとって好ましい条件のエリアや立地の住宅は評価も高く、住宅の市場価値が維持しやすくなるといえます。

企業や商業が集積する街に短時間で出やすい都心部や路線、その駅近立地などは、いま以上に人気を得やすいでしょう。もちろん、リモートワークなど、毎日は通勤しない働き方を選択できる未来がくれば、その限りではありませんが、交通利便性が高いエリアの方が多様なニーズに合致しやすいことに違いはありません。資産性を重視するなら交通利便性を第一に考えてエリアを選んだ方がいいでしょう。

マンションの住み心地や将来性を見極めるには何を見ておくといいの?

いざ、購入!となると、住宅ローンのほかに毎月支払う、管理費や修繕積立金も気になるところです。
「マンションの管理や修繕費計画について知りたい(50代女性)」「長年での住み心地。管理や修繕に対して困っていないかなど(20代女性)」「メンテナンスへの満足度について聞いてみたい(50代女性)」など、入居後の住まいの維持・管理についての質問があり、長く住み続ける住まいを検討する際に、はずせないポイントだといえるでしょう。
今回は、特に違いが見えにくい、管理費の金額の差とは何かについて回答いただきました。

管理費の設定金額が高い、低いといわれますが、その違いは、管理の質に表れます。敷地内の清掃や植栽の管理、エレベーターや空調などの機械設備の点検・保守、管理員やコンシェルジュの勤務日数や時間帯などは、頻度や内容を充実させれば当然コストが増えて管理費に反映されます。しかし、その分、日常の便利さ、快適さは高まります。また、管理が充実したマンションは、相対的に見栄えが美しくなり、住み心地もよいため、地域の評判を得やすく、ひいては資産価値の維持にもつながります。

ザ・パークハウス 市谷甲良町(分譲済)

たとえば同地域内の類似条件のマンションで、管理費に月々2,000円の差があったとして、20年間で48万円の差となります。しかし管理費が高いマンションのほうが地域の人気が高ければ、将来の売却金額で容易に逆転しうる金額差にすぎません。
したがって、マンション管理については、管理費の金額よりも、管理の内容や充実度を見極めることが、より大切になるといっていいでしょう。管理の質が高ければ、自身が満足度高く住み続けられますし、将来売却を検討する場合も有利に事を進められるはずです。

マイホームの買い替え。売却が先か、購入が先か?

ライフスタイルの変化や住まいの老朽化などを理由に、住まいの買い替えを検討している場合、はじめての住宅購入とは異なるお悩みがあるようです。
「住み替えの注意点、失敗談(50代男性)」「老後にマンションに住み替えを考えているが、注意しておくことは?(50代男性)」「新規で購入した場合、先に所有している物件の対応(売却、賃貸)について(40代女性)」など。
ここでは、買い替えで所有する不動産を売却する場合に気をつけておきたいことについて話してもらいました。

買い替えの理想は、「購入」と「売却」を同時並行で進めて旧居の引渡と新居の入居の時期をそろえることです。この際、新居の購入を優先して進める「買い先行」と自宅の売却を優先して進める「売り先行」の2つの方法があります。
買い先行の場合、新居選びをじっくりと検討することができる反面、購入が決まると旧居の売却に期限(新居の入居まで)を意識するため、売値を強気に設定しにくくなります。さらに、期限までに売却できないと旧居の住宅ローンが残っている場合は二重ローンが発生するリスクもあります。ただ、契約から数カ月以上先に入居となる新築マンションを選べば、売却期間を十分にとることができ、売り急ぎによる不利は小さくなります。

一方、売り先行の場合は、売却額が確定して新居購入に回せる資金が明確になってから購入物件を選べるため、資金計画を立てやすいというメリットがあります。ただし、旧居の引渡までに入居できる新居を選ばないと、一時的に賃貸住宅などに仮住まいする必要があり、引っ越しの手間やコストが二重にかかってしまいます。
買い替え時の売却とは、こちらの希望金額で買ってくれる人が丁度良いタイミングで現れてくれるか次第なので、自分の意思だけでコントロールできないのが難しいところです。そうした点では、相手次第の不確実さがある「売り」を先行させたほうが、不安とリスクが少なく買い替えを進めることができるでしょう。

  • 本記事の内容は2019年1月掲載時の情報となります。情報が更新される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

今回お答えいただいた専門家


山下伸介氏

京都大学工学部卒。2005年より「スーモ新築マンション」(リクルート)の編集長を10年半務める。現在のマーケットトレンドから、住宅選びの後押しをするアドバイスなど住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師として活動中。一般財団法人住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー運営委員(2005~2014年)。

※厚生労働省「厚生労働白書」、内閣府「男女共同参画白書」、総務省「労働力調査特別調査」(2001年以前)及び総務省「労働力調査(詳細集計)」(2002年以降)