開催日
2022年3月14日(終了)

「脳科学と禅」人生問答&坐禅体験~中野信子さん(脳科学者)と細川晋輔さん(住職)のトークライブ~

気鋭の脳科学者・中野信子さんと、龍雲寺の住職・細川晋輔さんが、脳科学と禅の観点から、心が軽くなる生き方のヒントを語り合うトークライブを東京・世田谷区の龍雲寺を舞台にオンラインで開催しました。たくさんのご応募、ありがとうございました!

日時 2022年3月14日(月)18:30~20:00/3月27日(日)18:30~20:00(再配信)
場所 オンライン開催(Zoom)


オンラインで坐禅を体験!脳波計に普段と違う現象が!?

会報誌「レジデンスクラブマガジン」Vol. 13の特集記事「脳科学と禅」と連動したイベントを開催しました。記事にご登場いただいた脳科学者・中野信子さんと、東京・世田谷区の龍雲寺の住職・細川晋輔さんが、「心が軽くなる夜会」をテーマに、脳科学と禅の観点から語り合うトークイベントをオンライン開催しました。

まず、細川さんのご指導の下、中野さんとご参加者の皆様に坐禅を体験いただきました。中野さんは持参した脳波計で坐禅の効果を測定することを試みました。すると、普段とは違った脳派が測定され、これには中野さんもビックリ! 

「坐禅をしながら脳波を測るのは初めてだったのですが、正直、こんなに違うと思わなかったので驚きました。通常、私たちの脳はいろんな危険を察知する必要があるので、注意散漫になっている状態なのですが、普通は見られない周波数帯域の高い波が見られました。ガンマ波というあまり出ない脳派が見られました。たった5分の坐禅でも効果があるんですね」(中野さん)

リラックスすると脳内でアルファ波が出ることが知られていますが、ガンマ波とは深い瞑想状態に入ったときに現れる帯域だそうです。

左が坐禅前の中野さんを脳波計で測った画像。右が坐禅後の画像。オレンジ色の部分がガンマ波を表している(画像提供=中野信子さん)

「普通は見られない周波数帯域の高い波が見られたのですが、ある意味で無防備、世界とつながっていても危なくないと脳が認識している状態といえます」(中野さん) 「私も、坐禅は最終的には『世界とつながる』ということをイメージしていると思います。坐禅には2500年の歴史があり、それが良いものと言われ続けてきたので、私たちは何の疑いもなく行っているんですが、改めて中野先生にそのようにおっしゃっていただけると、うれしいですね」(細川さん)

 「科学の知見よりも、宗教の方が歴史が長いですし、科学の方がずっと後輩なので、ようやく追いついてきた状態なのかと思いますけれども、双方の知見が合致するのは面白いですね」(中野さん)

脳科学と禅の知見から、心が軽くなる生き方を語り合いました

坐禅を体験いただいた後には、心が軽くなる生き方のヒントを、脳科学と禅の知見から、中野さんと細川住職が語り合りあいました。禅と脳科学という斬新なコラボレーションは、参加者様から大変好評でした。

「中野先生の話はとても分かりやすく、ライブで聴けたり悩みを相談できることは大変貴重でした。また住職さんという一見相反するような形での対談も企画として面白かったです」(52歳・女性)

「日常生活内で、何となく感覚的に理解したり捉えたりしていることが、『科学』という論理的な分析と、『禅』の見方からの柔らかい表現での解説で、右脳と左脳の両面で理解できました」(62歳・女性)

参加者様の質問に、細川住職にご回答いただきました

今回、事前質問や当日のイベント中に、非常にたくさんのご質問を頂戴しましたが、時間の都合上、イベント中にすべてをご紹介することが叶いませんでした。しかしながら、細川住職のご厚意で、とくに多かったご質問について内容別にご回答いただきましたので、ここにご紹介させていただきます。

(1)仕事上の悩みについて
職場の人に、つい厳しいことを言ってしまって、後悔する人や、難しい仕事にチャレンジしない若手にどのように言葉をかければ頑張ってもらえるか悩んでいる人など、仕事上のコミュニケーションに悩んでいる方がいらっしゃいました。他人との付き合い方について、禅ではどうように捉えているのかなど、アドバイスをいただけますでしょうか。

 
【細川住職】
禅の世界でも後輩への対応、言葉のかけ方など、とても難しいものがあると私も痛感しております。修行中も、どうしたらやる気をもって取り組んでくれるものかと、思い通りにならないことに憤りすら感じていました。
しかし、よくよく考えてみると、私たちの思い通りになることなど、世の中にどのくらいあるでしょうか。まずは、思い通りになることなど一つもないと受け止めたうえで、そして永遠の目標に永遠に努力していくという姿勢が必要なのではないでしょうか。
 
(2)老後の不安について
交友関係があまりない人や、独身の人、健康に不安を抱える人など、老後を心配されている方が見受けられました。人生の後半を心穏やかに過ごすためのヒントをいただけますでしょうか。

 
【細川住職】
すべての人々にとって平等であるのは、生老病死という四つの苦しみといわれています。それは、生まれたからには、老いて、病になって、必ず死んでしまうということです。
この大きな苦しみのうえでは、表面的な悩みは問題になりません。生きつつあることは、死につつあることが、私たちに与えられた真理であるのです。今日一日生きるということは、間違いなく死に近づいているということ。このことを悲観的に考えるのではなく、だからこそ目の前の一日を丁寧に生きていくという前向きな心で生きていくことが大切なのです。
 
(3)手放すことについて
様々なことを手放して、リセットして新しい気持ちで人生を歩みたいと思う一方で、これまで積み上げてきたものを失う気がするので、手放すことを躊躇してしまうと思っている人もいました。そのような人はまず、どのようなことから始めたらよいでしょうか。

 
【細川住職】
これまで大事に積み上げてきた知識や経験を手放すことは、とても勇気がいることです。なかなかできることではありません。禅の「手放す」という教えは、意識的につかみ取って手放すということではないと考えています。日常の中で、足をとめてよくよく目をこらしてみたら、新しい気づきがあり、気がついたら手放していたというイメージでしょうか。
また手放したものはどこかに飛んでいってしまうものではありません。少しだけ手から離し、また今の自分にあうかたちで握りなおせばいいのです。目の前のことと丁寧に向き合ってみる、これが手放す第一歩です。
 
(4)自分の性格の悩みについて
自分で自分自身を癒したり、認めたりすることが苦手だという方がいらっしゃいました。上手な気持ちの切り替え方があれば、お教えいただけますでしょうか。

 
【細川住職】
自分を癒やしたり、認めるためには、まず自分自身が何者であるかを知ることが肝要です。そしてこのことは、決して容易なことではありません。人生をかけて追求すべき大問題です。
それでも、千里の道も一歩からで、あきらめていても何もはじまりません。気持ちの切り替え方としては、一日に一度は静かに立ち止まって、自分自身と向き合う時間が必要です。その時間は読書でも、散歩でも、坐禅でもかまいません。その手段をもっているか、もっていないかが大事であると思うのです。
 
(5)一歩踏み出す勇気について
新しいことに挑戦したい、新しい人生に進みたいが、その一歩がなかなか踏み出せないという人も見受けられました。気持ちのつくり方や心の余裕のつくり方について、よい方法はありますでしょうか。

 
【細川住職】
「百尺竿頭に一歩を進む」という禅の言葉があります。とても高い竹竿のてっぺんから、さらに一歩を踏み出すという意味です。自分にとって居心地のいい場所はきっとあります。そこから新しい世界へとチャレンジすることは、なかなかできることではありません。
たとえ頂上から落ちてしまっても、上から下りてきただけと思えばいいのです。そして、自分が学んだことは、自分のためだけに役立てるのではなく、社会に役立ててこそ初めて意味をなすと考えてみると、一歩を踏み出す勇気につながるのではないでしょうか。