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“高感度な”ビジネスパーソンに大人気! 塊根植物の魅力とは?

無骨な形をした根っこが特徴的な塊根植物に、魅了される人が増えている。「コロナ禍のステイホーム期間にハマってしまった方が多い」と話すのは、都内最大級の規模を誇る園芸店「プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店」店長の佐藤健太さん。その魅力と初心者向けのアドバイスを聞いた。

人気の秘密は、独特のフォルムとちょうどいいサイズ感

塊根植物は、根っこや幹の部分が肥大化しているのが特徴的な植物です。マダガスカル島や南米などが原産地で、日射しが強く乾燥した過酷な環境下で生き残るために、根っこや幹、茎の部分に水を蓄えられるように独自進化しています。

肥大の仕方は種類や育て方によって変わるため、個体差が出やすいんです。この点が人気の理由だと思います。ファッションにこだわりのある方や、クリエイティブなお仕事をされている方が「造形美」に惚れて、個性豊かなオブジェのような感覚で購入されるケースが多いですね。

もう1つ、大きくなりすぎないという点もハマる人が多い理由だと思います。テーブルに乗るサイズ感のまま長く育てられるため、個体差を楽しみながらいくつもコレクションする方が増えています。個人的には、時計やスニーカーを集める感覚に近いのだろうと考えています。

同じ種類でも、自分の手のかけ方で形が変わっていくというのは、ファン心をくすぐる部分がありますよね。そういう意味で盆栽にとても近いかもしれません。盆栽のように枝を剪定して、形をつくっていく楽しみもありますし、丁寧に育てれば一生涯の付き合いになるくらい長く生きます。

日本で手に入る塊根植物の特徴は?

種類にもよりますが、現在日本で流通している塊根植物は、状態の違いで大きく3つに分かれます。

①現地球(げんちきゅう)株

原産地で長い年月をかけて、自然が作った野生の株。輸入後、日本の風土になじませて、発根させてからの出荷や、 「ベアルート株」で出荷されます。ほどほどの大きさになっている株は、この現地球株だと考えていいと思います。

現地球株の良い点は、原産地で自然に育っているので、野生みがあり、かっこいい形のものが多いこと。その分、価格は高めになります。

②ベアルート株

原産地で掘り起こされ、土を取って根っこが切られた状態で輸入されたもので、その状態で販売されます。発根済みの株よりも価格が下がりますが、自分で根を出す「発根管理」をする必要があるため、初心者の場合にはここで失敗して枯らしてしまうリスクもあります。

③実生(みしょう)

原産地から種を輸入して、日本の産地で発芽させて育てられたものです。日本で育つので、環境になじんでいるというメリットはありますが、一般に、現地球株と比較して、大きく育っている状態の物が少なく、生育期間の手間がかかっている分、価格も高めになります。

また、塊根植物には成長期と休眠期があります。それぞれに入るタイミングの違いで、大きく「夏型」と「冬型」の2つの種類に分かれています。これは気温というよりは、原産地の乾期と雨季に合わせたタイミングです。休眠期に入ると、ほとんどの種類は葉を落としますが、例外もあります。

●夏型

日本の春から夏にかけて活動し、秋冬になると休眠するタイプ。塊根植物の人気種の多くが夏型に属しています。

●冬型

日本の秋から冬にかけて活動し、春夏に休眠するタイプ。10月頃に店頭に並び始めます。

初心者におすすめの塊根植物

初心者の場合、どの種類にせよ、発根済みの株を購入することをおすすめします。技術がないうちは、自分で根っこを出そうとすると枯らしてしまうことも多く、状態のいい株で慣れていくのがいいと思います。そのうえで、自分の感性に合う種類を見つけるのがいいでしょう。

①迷ったらまずコレ!「パキポディウム・グラキリス」(夏型)

塊根植物の代表格。「個体差が出やすい」ことで、非常に人気が高い種類です。ぽってりとした塊根部から二股、三股に枝が伸びるなど、さまざまな形を楽しめます。

②“観葉植物感”のある「ボンバックス」(夏型)

比較的生育が旺盛で、大きめの葉をつける種類です。観葉植物を育てる感覚に近いので、塊根植物の初心者の方にもおすすめです。剪定の仕方次第で形が大きく変わってきます。

③珍しいものが欲しい人向け「ケラリア・ピグマエア」(冬型)

塊根植物の中でも成長がすごく遅いものです。ぷちぷちとした小さな葉がびっしりと育ち、休眠期でも落葉しません。サイズが大きければ大きいほど価格が上がる種類です。

放置はダメ! 育てる際の注意点

草花のように毎日水をやる必要がないため、一見すると手入れが楽だと思われがちですが、原産地との環境の違いを考慮した手入れや観察が必要となります。

●住環境を整える

塊根植物は多湿にとても弱く、蒸れが原因で傷んだり、腐ったりしてしまいます。室内で管理したいという方が多いのですが、日本では梅雨の時期はどうしても蒸し、夏場は思っている以上に高温多湿になるので、注意が必要です。まずは、住環境をできるだけ原産地に近づけること。日当たりが悪いのであれば、育成用のLEDライトを使用する。風通しが悪いのであれば、サーキュレーターを導入するなど、植物に優しい環境を作るようにしましょう。

●細やかな温度管理をする

風通しのいいベランダであれば放置しておいていいわけではありません。基本的には暑い地域原産のものが多いので、冬場に出しっぱなしというのは、そもそもNGです。夏型種であれば、暖かくなってきたら外に出して管理することもできますが、そういう時も急に室内から屋外の直射日光の元に出されるとびっくりしてしまうので、例えば最初の1週間は外の木陰気味のところに置いて、翌週に少し明るいところへ移動して、最終的に直射日光が当たるところへ移動するような配慮が必要になります。

●適切な水やりをする

水は頻繁にやる必要はありません。種類や生育環境によっても頻度が違うので一概には言えませんが、目安として土の表面がしっかり乾いて、そこから数日経ったらたっぷりやるようなイメージです。よくある失敗は、水のやりすぎです。特に休眠期は葉も落ちて、植物の状態がわかりづらいので、水をやならくていいのにやってしまうというケースが多いです。毎日観察しながら、植物の特性を信じて待つというのがポイントになります。

生き物ですから、手をかけた分、素直に育ちます。塊根植物は、長い付き合いができるポテンシャルを持っているので、ぜひ「一生モノ」を手に入れるような気持ちで始めてみてはいかがでしょうか。

●取材協力:
プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店
プロトリーフ SELECTIONS

3フロアからなる都内最大級の園芸店。季節の草花が中心フロアは「育てる」、小型の観葉植物を扱うフロアは「飾る」、そして塊根植物を含めた多肉植物を扱うフロアは「集める」をテーマに、幅広い植物を扱う。ワークショップなども定期的に開催。

住所:東京都世田谷区瀬田2-32-14 玉川高島屋S・C
   ガーデンアイランド2F、1F、B2F
電話:03-5716-8787(1F、2F)
   03-6867-8787(B2F)
URL:https://www.protoleaf.com/

お話を聞いたのは●佐藤健太 さん

さとう・けんた/プロトリーフ ガーデンアイランド玉川店 店長/株式会社プロトリーフ 小売部 Garden 次長。
東京都立園芸高等学校を卒業後、2008年に株式会社プロトリーフに入社。小売部 Garden課、本部商品開発課を経て、2015年より現職。多肉植物好き。