ビアジャーナリストが惚れた!今夏に飲みたい注目のクラフトビール

日本の食文化に浸透しているビールの世界が、近年、クラフトビール の登場で大きな変革を迎えようとしている。イラストレーターとしても活躍し、日本ビアジャーナリスト協会代表でもある藤原ヒロユキさんに、クラフトビールの魅力と、今年注目のクラフトビールについて伺った。

人気復活のきっかけは、東日本大震災

クラフトビールとは、もともと1960年代中頃アメリカ西海岸で生まれたもので、小規模醸造所で製造されたビールであることが多い。大規模醸造所が造る大量生産されるビールに対して、アメリカらしく数々の創作的で個性豊かなビール「アメリカンクラフトビール」が生まれたのだ。
 
日本でも1994年の酒税法改正で小規模醸造所でもビール製造が可能となり、当時は「地ビール」として広まっていった。その地域らしさを出そうという意識もあり、個性を重視した味わいのものが多く造られた。しかし、地ビールブームは2000年ごろには下火となった。
 
「地ビールの多くはお土産ビールとしての要素が強かったため、長続きしなかったんだと思います。そして2011年以降にクラフトビールと名前を変えて再び人気を集めるようになったのです」
 
では、何がクラフトビール人気を復活させたのだろうか。
 
「2011年の東日本大震災を機に、自分自身の生き方や価値観を見つめ直すようになり、コロナ禍でさらにその傾向が強まりました。SNSの浸透により、少数派の趣味であっても共有できる仲間の存在に気づくようになったのも大きいです。ブームに乗るマスな価値観より、自分らしい価値観を大切にすることを心地よく感じるようになったと考えられます。こうした背景とクラフトビールの持つ個性と構造性が合致したのだと思います」
 
そもそもビールには様々な醸造方法があるが、日本で流通しているビールの多くが、ラガービール(下面発酵)のピルスナー。「これがビールの味だ」と思い込んでいる日本人は多かった。その概念に多種多様な味わいのクラフトビールが風穴を開ける形となったのだ。

さまざま地域の風味を五感で味わう

藤原さん自らが生産する与謝野ホップ。与謝野ホップを使用したビールは国際的なビール大会で金賞を受賞するなど、目標としている「ジャパニーズスタイル」のクラフトビールの地位確立へ向け着々と歩みを進めている。

クラフトビールの魅力は、色、香り、味わい(甘味、苦味、酸味など)、アルコール度数などの幅の広さ。例えば苦味が苦手という人には、苦味を抑えたクラフトビールがある。アルコール度数も様々で、低いものもあれば、高いものもある。

香りや味だけでなく、発泡する音や、唇や喉にあたる触感、さらには商品パッケージのデザインも楽しむことができる。ここまで五感で味わえるアルコール飲料は他にないだろう。

前述のアメリカンクラフトビールが世界に衝撃を与えたのは、ヨーロッパのコピーではなく、「アメリカンスタイル」と呼ばれる新しいカテゴリーを生み出したから。その根幹はアメリカの風土で生産したホップの香りや苦味にあり、その土地特有の味わいを楽しめる。

日本らしいビールや日本発祥のビールを広めるため、自らも国産ホップの生産を進める藤原さんによると、国内でホップの生産をしている地域はあるが、たとえ同じ品種で、同じ日本国内であっても、地域によって風味など微妙に違いがあるという。

五感それぞれで自分の好みを突き詰め、自分にあったものを探せる。さらに新しい世界を知り、そこにトライしていくワクワク感がクラフトビール にはあるわけだ。それぞれの土地によって異なる味わいの差を感じるのも魅力だろう。

家庭でもっとクラフトビールを美味しく飲むコツ

自宅でクラフトビールを飲むと、現地で飲むより味が劣ると感じたことはないだろうか。実は大手ビール会社のビールとクラフトビールでは、取り扱い方が違うと藤原さんは指摘する。
 
「常温保存ができるように製造されているクラフトビールはまだまだ少ないのです。基本、ビールは20℃以上になると著しく劣化が進むと考えてください。飲めなくなるわけではありませんが、味は落ちてしまう可能性があります。せっかくなら、本来の味を楽しまないともったいないので、一番美味しい状態で飲んで欲しいですね」
 
冷蔵保存をするにしても、冷えすぎに注意したい。ビールによっては(高アルコールや濃色系などは特に)8〜13℃ぐらいにして飲んだほうが香りや味わいが開く。飲む際、缶やビールから直接に飲むのではなく、必ずグラスに注ぐことを勧める。
 
「開栓や注ぐ時の音や泡が弾ける音、泡の細かさ、色合いや透明感、香り、味わい、泡の口当たりや炭酸が喉を通る刺激など五感すべてで楽しんだ方が、より美味しく感じます」

藤原ヒロユキさんオススメ!この夏に飲みたい国産クラフトビール5選

■『KIRISHIMA BEER PILSNER(ピルスナー)』

ビアスタイル:ピルスナー
アルコール度数:5.0%
希望小売価格:493円(330ml)
霧島酒造株式会社(宮崎)
https://www.kirishima.co.jp/brand/beer/
 
「これまでの日本のビールが好きという人にオススメです。王道ともいうべきジャーマンスタイルのピルスナーは、醸造の難度が高いので、あまり小規模の醸造所では造りません。それにあえて挑戦し、選び抜かれた素材と技術、機材によって圧倒的な細密さを実現させています。馴染みのあるビールのワンランク上の旨味を感じることができます。守備範囲の広いビールなので、ほとんどの食事に合いますが、こってり系よりすっきり系の前菜などと相性がいいでしょう。また風呂上りの一杯にも最適です」

■『常陸野ネストビール セゾン ドゥ ジャポン』

ビアスタイル:セゾンビール
アルコール度数:5.0%
希望小売価格:418円(330ml)
木内酒造株式会社(茨城)
https://kodawari.cc/
 
「ドイツと並ぶビール大国ベルギーのセゾンスタイルをベースに、日本らしいクラフトビールにしようと、日本の食材である米麹、そしてアクセントに柚子を用いて醸造したものです。香りがしっかりしているので、少しクセがあると感じる人もいるかもしれませんが、これまでにない新鮮さと共に米麹の甘味や柚子の香りが醸し出す和の雰囲気を感じられると思います。米麹を使っているため発酵食品との相性がよくチーズに最適です。また和食全般が醤油、味噌といった発酵食品で味付けをしているので、和食との相性も絶妙です」
 
※こちらの商品は原料に「麹」を用いているため、酒税区分上「発泡酒(麦芽使用率85%)」となっております

■『ハーヴェスト・ムーン シュバルツ』

ビアスタイル:シュバルツ
アルコール度数:5.0%
希望小売価格:440円(330ml)
株式会社イクスピアリ(千葉)
https://www.ikspiari.com/harvestmoon/
 
「舞浜のイクスピアリにある醸造所で造られた黒ビール のクラフトビールです。黒ビールはちょっと苦手で……という人にこそ飲んでほしい、苦味と甘味のバランスが取れた飲みやすい一杯です。ローストした麦を使う事で香ばしさとスムーズな喉越しを実現しています。ローストした香ばしさがあるので、食事でもバーベキューのような焼き料理、煮込み料理などコゲがアクセントになる料理とよく合います。また珈琲やチョコレートに通じる香ばしさがあるので、生クリームを使ったスイーツなどお菓子ともマッチするんです」

■『平和クラフト ホワイトエール』

ビアスタイル:ホワイトエール
アルコール度数:5.0%
希望小売価格:396円(330ml)
平和酒造株式会社
https://www.heiwashuzou.co.jp/wordpress/
 
「若きブリューマスター(ビール醸造責任者)による新進気鋭の醸造所である平和クラフトが造るホワイトエールは、ビールの苦さが得意でない人にオススメです。苦味が抑えられており、オレンジピールの香りと酵母が醸し出すヨーグルトのような酸味、コリアンダーのスパイシーさが、ふわりと感じられて心地よく飲めると思います。いろいろな料理と合うビールですが、柑橘系の香りと馴染みのいいドレッシングを使ったサラダなどと相性がいいです。スパイシーな料理全般ともよく合います」

■『秋田あくらビール なまはげIPA』

ビアスタイル:IPA
アルコール度数:6.0%
希望小売価格:550円(330ml)
秋田あくらビール
https://www.aqula.co.jp/wp/
 
「フルーティな爽やかさの中に、華やかな秋田県横手産ホップの苦味が広がり、パンチがあって、飲みごたえも十分。まさにビールの新しい世界に興味がある人に打ってつけです。『日本のビールがいまひとつ退屈だ』『物足りない』と感じている方の期待に応えられるはずです。これはぐびぐびと飲むより、ワインのように、ゆっくり味わって飲むのに向いています。力強い味わいなので、料理も牛肉などストロングスタイルのものがいいでしょう」

「新しいビールの世界を広げ、宝探しのように自分好みの1杯を巡ることがクラフトビール の楽しみ方」という藤原さん。1杯のクラフトビール を起点に自分がどんな好みなのかを再認識して欲しい。そして新しい銘柄を試しながら、自分にベストなクラフトビールと出会う冒険の旅に出てはいかがだろうか。
(2022年7月19日掲載)

お話を聞いたのは●藤原ヒロユキさん

ふじわら・ひろゆき●ビアジャーナリスト/ビール評論家/イラストレーター
中学教員を経てフリーのイラストレーターに。(一社)日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ海外の国際ビアコンテストの審査員を務める。著書に『知識ゼロからのビール入門』(幻冬舎)、『ビールはゆっくり飲みなさい』(日経出版社)など多数。2015年より京都府与謝野町で発足したホップ栽培プロジェクトのアドバイザーに就任。全国的にホップ栽培が盛んになる兆しを醸成する中、日本産ホップを推進する活動を精力的に実行している。