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江戸時代のご先祖に出会える!?「家系図」の調べ方

近年、テレビ番組の影響などで静かなブームとなっている「家系図」の調査。家系図作成専門の行政書士、渡辺宗貴さん(上写真)によると、依頼は年々増加しており、現在はなんと月に300件以上の相談があるという。冠婚葬祭で親族が集まった際、「うちのご先祖様は……」などと、家系の話題になることはよくあるが、果たして自分の家の歴史について、どこまで正確に知っているだろう。「戸籍を辿り江戸時代までの家系を遡るのは、まったく知識のない状態からでも十分できます」と語る渡辺さんに、家系図づくりの魅力と、自分でできる「家系図」の調べ方を伺った。

戸籍に隠された情報を読み解き、推理し、ルーツにたどり着く

渡辺さんが調べ上げた家系図。母方は6代前まで判明した。

渡辺さんと家系図との出会いは、2004年。行政書士の資格を取得し、その業務内容として家系図をつくる仕事があると知ったことがきっかけだった。

「ふと考えてみると、私は祖父の名前も満足に知りませんでした。そこでひとまず、自分の家系の調査から始めてみようと思い立ち、戸籍をたどっていきました。私は北海道札幌市出身で、私の戸籍謄本も札幌市役所にありましたが、父母はもともと釧路市の生まれで、札幌市役所に問い合わせて戸籍謄本を郵送してもらうなど、事務的な作業が必要でした。さらに古い戸籍は手書きで、漢字だらけの文体を読み解くだけで一苦労。記入者の文字に癖があったりもして、書道辞典や旧字辞典を片手に悪戦苦闘しました」

それでも渡辺さんが家系調査にのめり込んでいったのは、事実が明らかになっていく快感があったからだという。他にもさまざまな情報を集めて調査した結果、渡辺さんはお約200年の時を遡り、6代前の先祖までたどり着いて、自らのルーツが父方は秋田県男鹿市の旧脇本村、母方は青森県南津軽郡の旧飯柳村にあると突き止めた。

「戸籍に隠された情報を読み解き、その内容から次の一手を考える……。自分が主人公の推理小説に入り込んだような感覚で、とても楽しかったです。調査がひと段落して、20もの家がずらりと並んだ家系図を前に、この中の一人でも欠けていたなら自分という存在がなかったのだと思うと感慨深いものがありました」

戸籍の保管期限は150年!破棄されればご先祖が永久にわからなくなる!?

渡辺さんの体験談の通り、まず家系調査の基本となるのが、地域の役所で保管されている戸籍謄本の調査だ。

「自分の本籍が置かれている役所には、世帯主とその家族が載っている戸籍謄本があります。その戸籍を、父の代、祖父の代、曾祖父の代……と取得していき、たどっていきます。なお、戸籍を取れるのは原則として、本人とその配偶者及び、祖父母・父母・子・孫などの直系親族のみに限られます。その地域に長く住んできた一族の場合、地元の役所ですべての戸籍がそろうケースもありますが、反対に移動が多い一族は、本籍が点々と変わり、たどりづらいかもしれません。役所が遠方の場合には、郵送で送ってもらうこともできますが、郵便局で定額小為替を買い、返信用封筒を用意するなどの準備が必要です。役所の戸籍住民課などの窓口に問い合わせると、詳しい手続きを教えてくれます」

役所で手続きさえすれば、誰でも戸籍を集めることができる。こうした戸籍調査で、どこまで昔の先祖がわかるのか。

日本に戸籍制度ができたのは1872年のことであり、現在取得できる最も古い戸籍は1886年前後。そこに記された先祖の名から、150年から200年(平均4、5世代)前の先祖まで判明することが多いという。

一つ注意しなければならないのは、戸籍には保管期限があり、時間が経てば経つほど調査が困難になっていくことだ。

「現在の保管期限は150年と定められており、明治期の戸籍が1日ごとに破棄されている状況です。急がないと先祖が永久にわからなくなる可能性があります。もし家系調査に興味を持ったなら、今すぐ家系図づくりをするかどうかはさておき、現段階で取得できる最古の戸籍だけは、取り寄せておくことをおすすめします」

ご先祖の眠る土地を訪れたとき、不思議な出来事が。

江戸時代よりもさらに時代を遡り、調査をする場合には、戸籍調査で判明した江戸時代のご先祖の名や住んでいた土地が、さらなる調査の糸口となる。たとえば住んでいた土地が城下町や武家地であれば、ご先祖は武士かもしれず、農村地でも明らかに名が農民のものでないなら、神職や医師といった可能性が出てくる。

その推論に基づいて、苗字や土地に関連した情報を集めていくことになる。

「土地については、たとえば入手した最古の戸籍の本籍地を、現在の地名に変換してグーグルマップで調べ、そこに同姓の苗字がどの程度いるかを調べます。もし同姓が集まっているなら、あるいはそこに先祖の歴史を知る人が残っているかもしれません。また、その土地の寺が一族の菩提寺である可能性もあり、寺で保管している過去帳をみると、江戸初期まで遡れることがあります。その他に、『姓氏家系大辞典』など、名字の由来が載った資料を調べたり、電話帳を使って先祖の名字が密集した土地を見つけたりと、多角的に調査していくことで、家族のさらなる歴史を明らかにしていきます」
調査のクライマックスともいえるのが、これまで知らなかった親族が住んでいた土地を見つけ、その場所にあるご先祖のお墓と対面して手を合わせる時だ。

「自分の中で何か区切りがついた感じで、ここまでたどり着けてよかったという思いと、ご先祖への感謝があふれてきます」

そうしてご先祖の眠る土地を訪れたとき、偶然とは思えないような不思議なことがよく起きるという。

「話を聞こうとたまたま入った同じ苗字の商店の店主の顔が自分と瓜二つで、『この人が親族だ』と確信したり、何気なく見つけた石碑にご先祖の名が刻まれていたり……。まるで磁力に引き寄せられるように、ご先祖のもとへと導かれる人がよくいるのです。家系調査を通じ、ご先祖とのつながりを体感することで、家族の絆の強さ、大切さがよくわかり、共に生きる日々をきっと心穏やかに過ごせるようになります。“思い立ったが吉日”です。記録が残っているうちに、ぜひ挑戦してみてください」

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お話を聞いたのは●渡辺 宗貴さん (行政書士/家系図作成代行センター株式会社代表)

北海道釧路市生まれ。行政書士としての独立当初に家系図作成の業務を知り、自らの戸籍をたどり家系図を作成。煩雑な手続きや専門知識の必要性を実感し、2004年から専門業務として扱うようになる。これまで1,500人以上、5,000家系以上の家系図作成を実施。現在、業務の傍らホームページやテレビ、雑誌など、さまざまな媒体で家系図の魅力を伝えている。ホームページでは小冊子『家系図作成をする前に知っておきたい7つのポイント』を無料配布中。著書に『わたしの家系図物語(ヒストリエ)』(時事通信社)。
https://e-kakeizu.com/