理想の空間づくり

「部屋に入ってすぐキッチン、ここの印象ですべてが決まる」
驚き!海外のリノベーション事情/ハワイ編

リフォーム市場でますます存在感を強めるリノベーション。終の棲家として住み心地を追求するのか、値上がりを期待して万人受けを期待するのか。中古マンションが不動産マーケットの中心となっているハワイのリノベーション最新事情を現地からリポートします。ホノルルで不動産会社「オーシャンズリアルエステート」を経営するエバン天方さんに話を聞きました。(ライター/相馬 佳)

新築を建てる土地が希少なハワイはリノベーション天国

オアフ島の古いコンドミニアムは30万~40万ドルから

1年中気候が良く、美しい自然と豊かな文化を誇るハワイ。その中心であるオアフ島のホノルルには、移住や別荘購入を希望する人々がアメリカ本土やアジア諸国から殺到し、住宅価格は過去20年ほど上がり続けています。

しかし、島であることから土地が限られており、一戸建て物件は中古でも100万ドルを超えることがほとんど。好適地にはもう新築物件を建てるスペースがほとんどないこともあり、中古マンション(アメリカでは「コンドミニアム」と呼ばれる)のリノベーションが人気です。

オアフ島の2ベッドルームのコンドミニアムは30万~40万ドル台から購入できますが、この価格帯では一般的に1970年代から80年代に建設された建物が多く、中には内装が当時からほとんど変わっていないレトロなものもあります。このような内装が古いコンドミニアムのユニットを市場価格よりも安く購入し、大幅なリノベーションを行って住んだり、他のバイヤーに転売したりすることは日常茶飯事です。

ホームセンターが充実!自分でリノベーションする人も多い

70年~80年代に建てられた中堅価格の建物は通常コンパクトな作り。日本のような広い「玄関」はなく、入り口のドアを開けるとすぐにキッチンやリビングルーム、という間取りが一般的。日本と同様にハワイでは靴を脱ぐ習慣があり、ハワイに住む日本人にとって「どこに靴を置くか」は悩みの種。

「ハワイは大型ホームセンターが身近にあり、建築資材やツールを簡単に入手できることから、DIY(ドゥ・イット・ユアセルフ、日曜大工)が非常にやりやすいんです。購入した部屋を自分でリノベーションする人も多いですね」と、日本とハワイで数々のリノベーション工事を手がけた天方さんは言います。

アメリカは自由を重んじる国民性が強く、資産価値を気にするあまり、自分の好きなようにリノベーションするのを控える、という考えはあまりないそうです。

「もちろん投資用のコンドミニアムであれば、リノベーションにお金をかけすぎず、デザインを一般的に好まれるテイストにして、なるべく万人にアピールするよう心がけますが、長く住むために購入した自宅であれば、自分や家族がいかに気持ちよく便利に暮らせるか、というポイントを重視するのが一般的です。これは個人的意見ですが、自宅は人生の大半を過ごす場所ですから、思いきり自分流にリノベーションするのも“あり”だと思います」(天方さん、以下同)

白ベースにアート!壁で楽しむのが、アメリカ文化

ハワイのキッチン&リビングは、人が集まるためのスペース。特にマンションでは完全なオープンスペースになっているか、壁はなくカウンターで仕切られ、料理をしながら家族とコミュニケーションをとれる間取りが人気。

業者に依頼してリノベーションする場合、「日本よりもハワイのほうが大雑把なことが多い」と天方さんは言います。

「日本ではリノベーションを行う業者にきれいな図面を作ってもらい、腕のいい職人がミリ単位で丁寧に仕上げるのが普通だと思います。ハワイではコストを節約するために、オーナーが配管工事やタイル工事、電気工事などそれぞれの業者を直接雇ってイメージを伝え、業者は図面も用意せずに工事をする場合も多いのです。その結果、隙間やタイルの小さいズレなど、細かい仕上げには目を瞑らざるを得ないことも多々あります」

自分の好きな色に変えるのもハワイ流の特徴。

「アメリカは塗装文化なので手軽に色を変えてプチリフォームをしたりします。特にハワイでは白をベースに彩りのある絵やアクセントウォールで映える色を足すケースを多く見ます」

キッチンの印象で価値が決まる!資産価値を高める方法

ハワイだけでなく、アメリカでは初めて購入したマイホームを「終の棲家」と考える人は少なく、収入の増加や家族構成の変化と共に数年ごとにグレードアップさせていくことが一般的です。

「トレンドを取り入れてきれいにリノベーションされている部屋は、そうでない部屋よりも、確実に早く、より高値で成約する確率がアップします。ターンキー(リノベーションをせずにすぐ入居できる)部屋に住みたいという需要は多いですから」

なるべく資産価値を上げるためには、トレンドのツボを押さえたリノベーションが必要になります。典型的なハワイのコンドミニアムの間取りでは、玄関のドアを開けるとすぐ目の前にキッチンとリビングルームがある場合が多く、ここで家の印象が決まると言っても過言ではありません。

「オープンスタイルのキッチンやアイランドキッチンが人気です。アメリカ人はキッチンカウンターに石を使うのが好きなのですが、以前は花崗岩(Travertine)という茶系で模様も派手なものが人気でしたが、天然のため防水加工をしなくてはならないため、最近は模様も白系でシンプルなクオーツなどの人工大理石が主流になっています」

キッチン BEFORE

70~80年代に建設されたコンドミニアムは、安価なキャビネットやカウンター、レンジ、冷蔵庫が設置されている場合がほとんど。天方さんがリノベーションを行ったこのユニットも例に漏れず、古いままだった。

キッチン AFTER

古いキャビネット、カウンター、床をすべて取り払い、高級感のあるキャビネットと明るい色のクオーツカウンターを設置。カウンター面積を広げ、椅子を置いて食事できるようにした。玄関から続く床には、明るいベージュのセラミックタイルを選択。

バスルーム BEFORE

洗面台、トイレ、そしてシャワーまたはシャワー付きバスタブが並んでいるのがハワイのコンドミニアムの典型的バスルーム。キッチンと同じ青の床タイルと黄色のカウンタートップ、バスタブ内のベージュのタイルは建築時のまま。

バスルーム AFTER

キッチンと同じダークな木製キャビネットにクオーツのカウンターを設置。トイレとバスタブもすっきりしたデザインのものに交換し、ステンレススチール製のシャワーに。都会的で洗練された印象になっただけでなく、目地が少ないことで掃除も簡単になった。

部屋数を減らす間取り変更をしないのがアメリカ流

アメリカ人は家庭内でもプライバシーを重要視するため、親と子どもが同じ部屋で眠ることはあまりない。「子ども部屋はリビングの近くに」という発想はなく、通常は大きい寝室が親用、小さい寝室が子供用に振り分けられる。

間取りも日本とは生活習慣の違いがあります。日本では最近、子供の個室を作らない傾向があったり、3LDKから2LDKに変えるなど、間取りを減らすリノベーションのニーズがあります。

「アメリカでは子供が生まれたらすぐ個室で寝かせる文化があり、子供部屋は絶対必要なので、間取りを減らす行為は逆に資産価値低下につながります。そういう意味では、あまり間取り変更は見ません。またホノルル独自の問題を言えば、土地、建築費が高騰しているので、新築を中心に物件価格を抑えるために専有面積が減少傾向にあり、サンフランシスコやNYのマイクロアパートメントのトレンドを取り入れつつあります。間取り変更がない分、塗装や床材交換(カーペットからフローリングに)、または家電を入れ替える(以前は白や黒が人気でしたが、ステンレススチールという銀系が人気)ことも多いです」

また、涼しい風が吹くハワイでも温暖化の影響があるとか。

「元来、貿易風を家の中に取り込むジャロジー窓が主流で、通常、風のある日はこれを開けておくだけで涼しいです。しかし近年は風のない日も増えてきて、ハワイでも30度を越す暑い日や熱帯夜に悩まされる日が増えており、エアコンを設置する家が増えています」



お話を伺った人/写真提供●エバン天方さん
神奈川県出身。アメリカの大学とオーストラリアの大学院を卒業後、IBM、外資系証券会社システム部勤務を経て、日本で不動産投資事業を開始。2012年にハワイに移住して不動産エージェントとして勤務後、独立して2016年「Live Love Hawaii Realty」を設立。2020年「Oceans Real Estate」に社名変更。趣味はサーフィン、ゴルフ、スノーボード。

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