理想の住まいの選び方

ベテラン住宅ジャーナリストが力説! 眺望だけではない、タワマンの魅力

首都圏・地方を問わず供給が続いているタワーマンション。身近な存在となりつつあるタワマンの魅力とその価値、物件選びのポイントを、不動産ジャーナリストの山下和之さんが解説します。

タワマンに住むメリットとは?

タワーマンションの増加は1990年代に始まり、2000年代に入って増加傾向に拍車がかかって、現在では全国で年間に20~30棟がコンスタントに供給されています。2000年代初めの超高層マンション人気は絶大で、完成前の成約率が90%以上という加熱状態が続きましたが、リーマンショックで一時下落。今では首都圏を中心にタワーマンションの希少性も失われつつあるので、当初の熱狂的な人気も一段落しています。

とはいえ、タワーマンションが持つ価値やメリットが失われたわけではありません。

【メリット①】アクセスがよい

特に首都圏の場合、タワーマンションが建設可能な広い敷地を確保できるのは駅前の再開発事業が中心となるため、駅近・駅前物件が多く、中には駅と直結する物件もあります。またタワマンは必然的に大規模マンションとなるため、下層階にショッピング施設や公共施設が入る場合が多く、マンションの敷地から出ることなく様々な用事を済ませることも可能です。

【メリット②】共用施設が充実

大規模物件は共用施設が充実しており、キッズルームやホテル並みのゲストルームを始め、リモートワークの普及を受けてコワーキングスペースを設置するマンションも増えています。また多くのタワマンでは最上階にラウンジを設けており、低層階を購入した居住者でも自由に利用することができます。

【メリット③】高層建築ならではの設備・環境

エントランス・エレベーターホール・自宅玄関と、何重にもわたるセキュリティを確保できるのもタワマンならではの利点です。また高層階になればなるほど害虫の侵入が少なくなるという意外なメリットもあります。

タワマン購入に向いている層は?

タワマンは一般的に低層マンションに比べて資産価値が下がりにくく、換金性の高い物件です。中古マンションは築年数や立地条件によって価格が大きく左右されますが、タワマンの場合は基本的に価格が下がりにくい傾向にあります。

これは坪単価が一千万円を超えるような高層階のプレミアム住戸に限ったことではなく、比較的坪単価の安い低層階のコンパクトタイプであっても同様です。購入するときの坪単価は上層階の方がはるかに高いのですが、売却の際には低層階でも高層階なみの相場がつくケースが多く見られます。

マンションの資産価値上昇を重視するのであれば、若いうちにタワマンの低層階を購入しておき、子供の誕生や親との同居など、家族構成に変化が起きたときに高値で売却して広い物件に買い替えるという方法も有効です。

夫婦共働きで高所得のパワーカップルがタワマンを購入するのであれば、物件の資産価値が落ちにくいこともあり、比較的ローンが組みやすいという利点もあります。

また生活範囲が狭くなりがちな高齢層にとっても、交通のアクセスの良さ・施設面の充実というタワマンの特性は魅力的です。リタイア後、一戸建てや郊外のマンションから駅近のタワマンへ住み替えるのも選択肢のひとつではないでしょうか。

今後、注目されるエリアは?

タワマンといえば、一時期は東京の晴海や豊洲などが注目されていましたが、湾岸エリアは開発が一段落しつつあります。今後特に注目されるのは東京近郊、特に大宮や川口、浦和といった埼玉エリアです。浦和や大宮は「住みたい街ランキング」でも常にベストテン圏内に入る人気の街。価格的にも川崎や横浜を擁する神奈川エリアに迫りつつあるので、資産価値を重視しつつファミリータイプのマンションを求めるのであれば、埼玉エリアのタワマンは最適でしょう。

また地方でもタワマン人気は高まりつつあり、札幌エリアでは2030年に予定される新幹線の延長を見すえて開発に拍車がかかっています。北海道ならではの雄大な眺望を楽しめるということで、セカンドハウス利用や投資用マンションとして購入されるケースも多くなっています。

福岡はアジアの玄関口として安定した人気を保ち続けているエリアで、地下鉄の延伸により地域交通の利便性が向上したことも追い風となってタワマンが増えつつあります。資産形成や投資という点から考慮した場合、いずれも有望なエリアと言えるでしょう。

一方、タワマンを購入するうえで注意したいのは、ランニングコストが高いという点です。共用施設や管理体制が充実しているだけに、管理費は一般のマンションと比較して高額になりがち。超高層という建物の特性上、修繕積立金も高額となるため、長期的に考えて無理のない購入計画を立てることが肝要です。

もはや珍しい存在ではなくなったタワーマンションですが、今でも“タワマンに住む”ことは一種のステータス。その利便性と資産価値に着目しつつ、憧れのタワマン購入を検討してみてはいかがでしょうか。

お話を伺ったのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

やました・かずゆき/1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/