理想の住まいの選び方

ベテランの住宅ジャーナリストが推す!最新トレンドの「SDGsマンション」のメリット

持続可能な開発目標を意味する「SDGs」(Sustainable Development Goals)が注目される昨今、環境に配慮した「SDGsマンション」の開発が業界の主流となりつつあります。「SDGsマンション」の現状を不動産ジャーナリストの山下和之さんが解説します。

地球に優しいだけじゃないメリットがある!

「SDGsマンション」といっても明確な定義があるわけではありません。17項目あるSDGsの目標のうち、「安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」「気候変動およびその影響を軽減する」というふたつの項目に合致するマンション≒SDGsマンションと考えて差し支えないでしょう。

最近「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」と呼ばれる新築マンションが増加しつつあります。ZEHとは「Net Zero Energy House」の略で、住宅の省エネ性能を上げることで光熱費などのエネルギー消費を減らし、太陽光など再生可能エネルギーも組み合わせて、年間の一次エネルギー消費量の収支をプラスマイナスゼロにすることを目指すものです。

国では2030年のCO2削減目標達成のため新築一戸建てのZEH化を推進してきましたが、数年前から集合住宅にも基準を設け、CO2排出量の削減を図っています。

このようなSDGsに配慮したマンションを選ぶことは地球環境に優しいだけでなく、次のようなメリットがあります。

1.家計に優しい

購入時の価格は若干高めとなるものの、再生可能エネルギーや全館空調の導入、窓の複層ガラスや断熱性の高い建材の使用により冷暖房の効率が上がり、長期的にはランニングコストの削減につながります。

また、住宅ローン減税が多くなるというメリットもあります。国の定めるZEH基準を満たした優良な物件の場合、住宅ローン残高が5,000万円以上で0.7%の減税となりますので、年間最大で35万円の税金が返ってくる計算になります。

2.人に優しい

冬になるとヒートショックを起こして亡くなる方が急増しますが、これは日本の古い戸建て住宅の設備に問題があるためと考えられます。例えば、お茶の間は暖かいけれども、廊下の気温はお茶の間に比べて大幅に低く、お風呂場の脱衣所には暖房設備すらない。そのような環境で体が冷え切った状態から、いきなり熱いお湯に入ることで心臓麻痺を起こすというケースが多く見られます。

ZEHマンションのような高断熱・高気密の住まいは部屋や建物全体を温めるので、人(健康)に優しい物件と言えるでしょう。

このように、家計にも人にも、そして地球環境にも優しいマンションというのは購入後の評価額が下がりにくいため、資産価値の面でも有利となります。

木造マンションには大いに将来性がある!

SDGsマンションを「環境に配慮した建材」という面から考えた場合、いま最も注目されているのは木造マンションです。内装だけでなく骨組みにもできるだけ木材を使おうという試みで、地震が少なく木材資源が豊富なカナダなどでは10階を超える木造マンションや公共施設が建設されています。

残念ながら地震の多い日本の場合は建築基準法による規制があるため、木造マンションと言っても鉄筋と木材を組み合わせたハイブリッド建築となりますが、5~6階建て程度の木造マンションは今後増えていくことでしょう。

従来のマンションの建材は石材やコンクリートが中心であるため、どうしても冷たい雰囲気を拭い切れませんが、内装にふんだんに木材を使ったマンションは安心感と暖かさが感じられます。コストの面では多少割高になるものの、木造マンションには大いに将来性があると考えられます。

また、生態系の保護や回復もSDGsの重要な要素です。近年はデベロッパーがマンション開発当初からこの点に配慮し、単に植栽を増やすだけでなく、もともとその土地に自生していた木を植えることで従来の生態系を守り、鳥や昆虫が戻って来やすい環境を作るという取り組みも増えています。

イニシャルコストこそ高くなりがちなSDGsマンションですが、ランニングコストの安さや生活の質的向上が望めるという点では大きなメリットがあります。なによりも地球環境に配慮しているというプライドを持って暮らすことができるという点が、満足度の高い住まい選びにつながるのではないでしょうか。

(2023年3月14日掲載)

お話を伺ったのは●山下和之さん(住宅ジャーナリスト)

1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入成功させる完全ガイド』(講談社ムック)などの著書がある。
http://yoiie1.sblo.jp/