ニッポン、心と心をつなぐ旅

「毎日食べたい」チーズ嫌いの人もとりこになる——酪農王国・十勝の工房で生まれたミルク感あふれるチーズ

北海道中川郡幕別町にある「チーズ工房NEEDS」では、ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト、Japan Cheese Awardなど名だたるコンテストで高い評価を受けるチーズを作り続けています。「いつものテーブルにチーズを」という想いを追求する工場長・磯部公児(いそべ・こうじ)さんのチーズづくりの真髄とは――。

※取材はオンラインにて行い、撮影は現地在住カメラマンによって行いました。
コラム掲載日 2021年10月26日

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「毎日食卓に並べてほしい」老若男女に愛されるチーズを目指して

―― 「チーズ工房NEEDS」では、どんなチーズを作っているのでしょう?

磯部さん うちのチーズ工房にはキャッチフレーズがあります。それは「いつものテーブルにチーズを」。チーズというと「イタリアンやフレンチ」そして「ワインのおつまみ」のようにシチュエーションに合わせて食べるイメージがあり、毎日食卓に出すものと考える人は少ないと感じています。NEEDSのチーズはそうでなく、「朝気づけばテーブルに上がっている」「毎日おやつとして食べている」「あらゆる料理のおいしさを引き立てる」といった、オールマイティなチーズを目指しています。

―― “みんなに愛されるチーズ”ということですね。原材料の生乳も特別なものなのでしょうか?

磯部さん NEEDSは新田牧場という100年以上の歴史を持つ牧場に隣接しており、この新田牧場の生乳を主原料に日々チーズ作りに励んでいます。

――NEEDSでは色んなチーズを製造されてますが、一番人気はどの商品ですか?

磯部さん 看板商品の「大地のほっぺ」ですね。「ほっぺ」というように食感がもちもちで弾力があります。“ミルクでつくるおもち”をイメージしています。見た目が似ているので「カマンベールチーズみたいなものですか?」とよく聞かれますが、このチーズは白カビは使用しておらず、香りや口どけもまったく違います。ミルクの味を強く感じられつつも、ほのかな塩味と酸味がある。クセが強すぎないので毎日飽きずに食べられるし、「チーズは嫌いだけど、これは好き」という声もよくいただいています。

――おいしそうですね。オススメの食べ方はありますか?

磯部さん 「大地のほっぺ」を初めて食べるという人には、1/8サイズでケーキ型に切り分けて、そのまま食べていただきたいです。濃厚なミルクの香りと甘みを感じられるはずです。もっちりとした弾力を楽しんでもらいたいので、薄くスライスするよりは、大きめのカットをおすすめします。何度か召し上がったことがある人は、ぜひ一度、1個まるごと使ってチーズフォンデュにしてみてください。味がさらにマイルドになり、より濃厚なミルク感を楽しめると思います。私もよく、自宅でこのような食べ方をしています。

――一度味わってみたいです。ほかに磯部さんのイチ押しのチーズはありますか?

磯部さん 私が個人的にもものすごく好きなチーズが、「槲(かしわ)」という商品です。これはパルミジャーノレッジャーノやコンテのように、ハード系と呼ばれるチーズです。食べるとナッツのような香りが鼻を抜け、それでいてミルキー。コク深い余韻を楽しんでいただけます。赤ワイン好きの人に、ぜひおすすめしたいチーズです。

(上)十勝・幕別町に広がる大自然のなかに建つ「チーズ工房NEEDS」。青々とした空がどこまでも広がっていく景色に、都会では感じられない解放感を覚える。 (下)販売所では常時10種類ほどのチーズを用意している。つくりたてのチーズが買えるほか、オンラインショップでは販売していない商品も並ぶ。

想いを追求し、唯一無二の製造方法にたどりついた

――NEEDSのチーズが「ミルク感が強い」と言われる秘密はあるのでしょうか?

磯部さん うちの工房が牧場と隣接しているため、本当にフレッシュな状態の生乳を主原料にしているのが大きいと思います。工房からの距離はたった数百メートル。2日おきにタンクローリーでこちらへ運んできてもらうのですが、1分かからないくらいの距離なので、非常にフレッシュな状態で届くのです。新田牧場の牛も、この十勝の恵まれた牧草を食べて育っている。その牛から取れるミルクがおいしくないわけがないですね。

――チーズづくりには最高の環境ですね。製造工程においても、なにか特別なことをされているのですか?

磯部さん 特殊なことを行っているわけではないのですが、「大地のほっぺ」は唯一無二のつくり方をしています。先ほどお伝えしたように、見た目はカマンベールチーズのようだけど白カビを使っていません。10日間ほど熟成させる工程をはさむので、フレッシュチーズとも違う。製造方法においては、ほかのどのチーズにも当てはまらないんです。これもすべて「毎日の食卓にチーズを」を追求した結果です。

乳酸菌に酵母を加えてつくったカード(生乳を固めて水分を抜いた状態)を型に流し込み、「大地のほっぺ」をつくる。「『いつものテーブルにチーズを』と目指すからには、生産体制もしっかり整えている」と磯部さん。東京のサラリーマン時代のノウハウがここでも活きている。

チーズを通して、酪農王国・十勝を感じてほしい

――NEEDSのチーズをつくるにあたり、どのような想いを込めているのでしょうか。

磯部さん 昔にくらべて、徐々に日本にもチーズ文化は広がり、なじみのある食材になっててきていると感じています。しかし、それでもヨーロッパと比べると1人当たりの消費量はわずか1/10程度。だから、もっと食卓に並ぶ機会を増やしていきたい。チーズはいろんな種類があるので、もっとチーズの“面白さ”を日本中の人に感じてもらいたいんです。うちもフロマージュブランというチーズを作るなど、新しい挑戦もどんどん続けていますし、ピザ、グラタンなどチーズを使ったメニューもたくさん扱うように挑戦を続けています。

――ぜひ、NEEDSのつくっている数々のチーズを実際に見て、食べてみたいです。

磯部さん オンラインショップも運営していますが、やはり現地に一度足を運んでもらいたいなと思っています。槲の群生林と牧草地に囲まれた工房は、都会の方からすると、ちょっとした異空間というか、非日常感を味わえる場所になっています。とかち帯広空港からわずか20分なので、気軽に立ち寄ってもらえたらうれしいです。

(上)夏季限定のソフトクリーム。磯部さんイチ押しのチーズ「槲」をその場で削ってトッピングすることも可能。「このトッピングをきっかけに『槲』を購入する人もいます。チーズの塩気がバニラの甘みを際立たせて絶品です」と磯部さん。 (下)工房の前にそびえ立つ、樹齢200年以上の槲の樹。「槲」の由来になった。大空に向かって枝を広げる姿に思わず圧倒される。

――現地でチーズを選ぶという楽しみ方もありますね。

磯部さん うちのチーズは、まさに北海道の大自然で作られた味。土地の空気だったり、時には冬の厳しさなど、風土っていうのがやっぱり商品の中に出てくると思っています。チーズを通して、この十勝や幕別町という土地を感じてください。
 
―― 一度、お取り寄せをしてチーズを試してみたくなりました。そして近い将来、現地でもぜひチーズを味わってみたいです。本日はありがとうございました!

(撮影=本田匡、文=半澤則吉)

チーズ工房 NEEDS

北海道中川郡幕別町新和162-111
0155-57-2511
営業時間/10:00~17:00
定休日/日曜日(12月から2月は冬季休業)
アクセス/とかち帯広空港から車で約20分

https://needs-kashiyuni.com

※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。
詳しくは店舗にご確認ください。
※今回、特別に許可を得て撮影を行いました。