理想の住まいの選び方

2023年のマンション市場はどうなる!?住宅評論家・櫻井幸雄さんが読む!

高騰している新築&中古のマンションの相場はどうなっていくのか?賢く購入するためのポイントは?2023年に注目したいポイントを、住宅評論家の櫻井幸雄さんが解説する。

2023年のマンション価格は、横ばいかわずかに上昇

高騰し続けている印象がある新築マンション価格だが、櫻井さんは「一概には言えない」という。

「実は2022年の新築マンション相場の上昇率は、2022年3月あたりから止まっていました。しかし、特に人気の高い都心部(山手線の内側)がその前に急激に上がって、そのまま高止まりしているので高騰していると言われ続けているのです。この状況は2023年も続くと思います。なぜなら、供給量が増える見込みがないからです。2000年代の新築マンション販売戸数は6~8万戸で推移していました。それが開発用地の不足などから、ここ数年は3万戸前後となっています。来年も開発用地が増える見込みはないので、相場は横ばい、あるいはわずかに上がるはずです」

中古マンションの相場も、全国的に高止まりの状態という。

「コロナ禍によって人々の収入が減り、投げ売りされるという予想も広がりましたが、実際はさまざまな支援策などがあって、そうはなりませんでした。しかし、中古相場は新築よりもローン条件が厳しかったり、より多くの頭金が必要だったりで、景気に敏感に反応します。そのため、来年景気がある程度上向かなければ、下がっていくこともあり得ます」

新築・中古、賢く購入するポイントは?

来年も高止まりが予想されるマンション市場。「新築マンションは最寄り駅の路線に注目してください」と櫻井さんはアドバイスする。

「リモートワークの普及に伴い、通勤・通学ラッシュで有名な路線の混雑率が軒並み半減しました。もともと混雑率が高いということは、それだけ利便性も高い路線ということです。混雑率が減少したということで、2022年はその周辺の新築マンションの人気が高まりました。具体的には、東京メトロ東西線、JR埼京線、東急田園都市線沿線などです。しかし、2023年は再び通勤する人が増えて、これらの路線の混雑率はアップするでしょう」

賢く購入するなら、利便性が高く、かつ今後も比較的、混雑率が低い路線が狙い目となる。

「首都圏でいえば小田急線です。この路線は、東北沢駅から和泉多摩川駅までの区間が、上下各1本ずつの複線から各2本ずつの複々線になったので、混雑率が緩和されました(2019年3月に完了)。このような路線であれば、通勤ラッシュが戻ってきても安心です」

一方、中古マンションについては、昨今のリノベーションブームに注意を促す。

「リノベーションブームで、従来は敬遠されがちだった築30年以上の物件でも飛びつく人がかなりいました。しかし、いくら内装をリノベーションしても、躯体自体の耐久性は向上しません。ですから、築古物件は慎重に選んだほうがいいと思います。実際に25年ローンで購入した5年後に、管理組合から建て替えの話が出てきた例もあります。とはいえ、一般の人が中古マンションの寿命を調べるのは難しいでしょう。もっともわかりやすい目安は、デベロッパーの信頼度だと思います。それなりに名の知れた会社が開発した物件ならば、設計や部材がしっかりしている可能性が高いので、築古物件でも比較的安心できます」

2023年はコンパクトなマンションが増加

櫻井さんは、2023年ならではの新築マンション市場動向のひとつに、比較的狭めのマンションが増加すると読む。

「2023年の新築マンション市場は、開発用地の不足がさらに加速するでしょう。そのため、人気のある都心部、または地方都市の駅近では、一戸当たりの面積が狭い物件が増えていくかもしれません。都心部でいえば、5,000万円台の55㎡前後の2LDKや、4,000万円台の40㎡前後の1LDKです。従来はこれらよりも広い7,000万円台の70㎡前後の3LDK、つまりファミリー向けが人気でしたが、昨今は単身者やDINKS世帯が増えているので十分にニーズはあるのです。中古でも同じことがいえます」

狭いマンションは、子どもが生まれたら住み続けられないのでは、という疑問があるが、櫻井さんは「都心部や駅近物件であれば流動性が高く、比較的容易に住み替えが可能なため、利便性にだけ気をつければこれらの物件は“買い”」と断言する。

「新築について、2023年は3LDK以上のファミリー向けでもコンパクトなタイプが増えるかもしれません。例えば、3LDKで60㎡といった物件です」

こうした物件は、間取りを慎重に吟味する必要がある。

「気をつけたいのは収納スペース。必要な物がすべて入るのか確認したいところです。また、夫婦の寝室も4畳半以下だと圧迫感を覚えるはずです。実際に住んでいる状況を想像して不便を感じないか、十分に検証しましょう」


お話を伺ったのは●櫻井幸雄さん

さくらい・ゆきお/住宅評論家。人生相談家。1954年生まれ。2000年から住宅評論家としての活動をスタート。年間200物件以上の取材を行う現場主義で、首都圏だけでなく、近畿圏、中部圏、福岡、札幌など全国主要都市部の住宅事情に精通する。住宅評論の第一人者として、新聞、テレビ、雑誌など幅広いメディアで活躍している。Yahoo!ニュース「個人」オーサー。
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